STELLAR CRADLE #1

繋いだ手のぬくもり

― パパへ ―
イヨリ視点 / 家族愛・親子愛 / ノスタルジー / 【真】全文掲載

エンジュシティの商店街は、秋の昼下がりに柔らかい光を浴びている。

瓦屋根の軒先に揺れる暖簾。石畳の上に落ちる銀杏の影。和菓子屋の前に並ぶ栗きんとんの見本。八百屋のおばさんが、店先で柿の皮を剥いている。空気に溶けた金木犀の香りが、深く吸い込むたびに肺の奥まで沁みてくる。

その商店街を、私は小さな手を引いて歩いている。

「まーま。あっち」

チヒロが右手で前方を指差した。左手は私の手のひらの中にある。小さな指が五本、私の人差し指と中指をぎゅっと握っている。一歳半のチヒロの手は、まだ赤ちゃんの名残を留めていて、指の付け根に笑窪のような窪みがあり、爪は透明で薄く、少し力を入れると折れてしまいそうなほど柔い。

「あっちに何があるの?」

「わんわ」

「わんわん? ……ああ、あそこのウインディね」

商店街の角に、消防団の詰め所がある。そこの番犬——正確には番ポケモンであるウインディが、入り口で丸くなって日向ぼっこをしている。チヒロはこのウインディに会うのが好きだ。大きくて、温かくて、毛がふわふわしていて、チヒロが近寄ると尻尾を振って舐めてくれる。

「行ってみようか」

「うん!」

チヒロが私の手を引っ張った。小さな足が、不安定な足取りで石畳を蹴る。まだ歩き始めて半年ほどだから、時々つまずく。そのたびに、繋いだ手がぐっと引っ張られて、私は反射的にチヒロの身体を支える。

転ばないように。怪我をしないように。

手を繋ぐという行為が、これほどの緊張感と責任を伴うものだとは、知らなかった。

ウインディの前にしゃがんだチヒロが、おそるおそる手を伸ばして、大きな鼻先に触った。ウインディが低く唸って——威嚇ではなく、喉を鳴らすような甘い唸りで——チヒロの手のひらを舐めた。

「あはっ」

チヒロが笑った。歯が六本だけ生えた口を大きく開けて、目を三日月にして笑った。その笑い方は、マツバさんに似ている。目が細くなるところと、声を上げて笑うところ。でも、笑わない時の顔は——

私に似ている、と人は言う。

目元。口元。表情の作り方。黙っている時の、少し考え込んでいるような顔。桐生先生は「お母さんそっくりの目元」と言った。マツバさんは「イヨリちゃんが小さくなったみたい」と言った。商店街のおかみさんは「奥さんの生き写しねぇ」と言った。

私に似ている。

その言葉を聞くたびに、胸の奥がきゅっと締まる。嬉しいのか、苦しいのか、自分でも分からない複雑な感情が、喉の奥に引っかかる。

なぜなら——私は、パパに似ていたから。

星埜イゴウ。私のパパ。ミナモシティで整体院を営んでいた、無口で不器用で、家族への愛情だけは海より深かった人。

チヒロが私に似ているということは——チヒロは、あの人にも似ているということだ。

ウインディに別れを告げて、商店街の続きを歩いた。チヒロの手は再び私の手の中にある。小さな手。温かい手。生きている温度の手。

歩きながら、私は記憶の底に沈んでいた風景を思い出していた。

ミナモシティ。ホウエン地方の港町。私が十二歳まで暮らした街。

浜辺を歩いている。砂浜に、大きな足跡と小さな足跡が並んでいる。大きいほうがパパの足跡で、小さいほうが私の足跡。波が来るたびに、足跡は静かに消えていく。でも消えても消えても、私たちは歩き続けるから、新しい足跡がまた砂に刻まれていく。

パパは無口な人だった。

「今日は天気がいいねぇ」とか、「この花はきれいだねぇ」とか、そういう何気ない会話をする人ではなかった。黙って隣を歩いて、黙って手を繋いで、時々こちらをちらりと見て、それだけだった。

でも、その手は温かかった。

大きくて、少しだけ荒れていて——整体師の手だから、指先にたこがあって、掌は厚くて、でもその厚みの中に、どうしようもない優しさが詰まっていた。

あの手に引かれて歩く浜辺は、世界で一番安全な場所だった。

波が来るたびに怖くなかった。風が強くても怖くなかった。知らない犬が吠えても怖くなかった。パパの手を握っていれば、何も怖くなかった。

パパは、その時、何を思っていたのだろう。

五歳の娘の手を引いて、ミナモシティの浜辺を歩きながら。波打ち際で足を濡らして笑う私を見ながら。何を考えていたのだろう。

「ままー。だっこ」

チヒロが両手を上に伸ばした。疲れたらしい。一歳半の足には、商店街は長い道のりだ。

しゃがんで、チヒロを抱き上げた。左腕で支えて、右手でお尻を固定する。アステア・システムが左脚を補助しているから、片手抱っこでも何とか歩ける。十一キロになったチヒロの重みが、肩と腰と左脚の義足にかかる。

重い。でも、この重さが嬉しい。

チヒロが私の首に腕を回した。小さな顔が、私の肩口に埋まる。温かい息が首筋にかかる。ラベンダーのベビーシャンプーの匂い。生きている匂い。

歩きながら、また思い出す。

パパに抱っこされた記憶がある。浜辺を歩いた帰り道、私が「疲れた」と言うと、パパは何も言わずにしゃがんで、私を抱き上げた。パパの肩は広くて、しがみつくと顔の横にパパの耳が見えた。日に焼けた耳。そこに口を近づけて「パパ」と呼ぶと、パパは小さく「うん」とだけ言った。

それだけだった。それだけが、パパの返事だった。

「うん」

でもその「うん」には、世界中の言葉を集めたより多くのものが詰まっていた。今なら分かる。パパは、言葉が足りない人だったのではなく、言葉の代わりに行動で語る人だったのだ。

手を繋ぐこと。抱き上げること。隣を歩くこと。朝ごはんのゆで卵を気づかれないように私の皿に移すこと。夜中に起きて、布団を直してくれること。

全部、言葉のない愛だった。

そして私は――パパの性格をそのまま受け継いでしまった。

マツバさんは、よく言う。「イヨリちゃんは、大事なことほど言葉にしない」と。好きだと言えない。助けてと言えない。痛いと言えない。嬉しいと言えない。全部を飲み込んで、行動だけで返そうとする。それが私だ。

それは、パパ譲りなのだ。

商店街を抜けて、エンジュの東側にある小さな公園に来た。

銀杏の木が三本立っていて、足元に黄色い葉が積もっている。チヒロを降ろすと、すぐに葉っぱの山に向かって走り出した。両手で銀杏の葉を掬い上げて、頭の上に撒いて、散っていく葉を追いかけて笑っている。

ベンチに腰を下ろして、チヒロを見守った。

銀杏の葉が舞う中で、チヒロが走り回っている。転ぶ。起き上がる。また走る。また転ぶ。泣かない。起き上がって、また走る。

丈夫な子だ。生まれた時は二千九百二十グラムしかなくて、骨盤を通り抜けるのに三時間半もかかった子が、今は一人で走り回っている。

その後ろ姿を見ながら、私はパパのことを考えていた。

パパは、こういう時、何を感じていたのだろう。

ミナモシティの浜辺で、波打ち際を走り回る私を見ながら。あるいは、公園のブランコを一人で漕ぐ私を見ながら。家の縁側から、庭でポケモンと遊ぶ私を見ながら。

あの寡黙な人は、何を思っていたのだろう。

今、私が感じているこの感情——チヒロが無事に走り回っているだけで胸がいっぱいになるこの感覚。転んだ瞬間に心臓が止まりそうになって、起き上がった瞬間に安堵で膝が緩むこの感覚。何もしていないのに、ただ見ているだけで、涙が出そうになるこの感覚。

パパも、同じだったのだろうか。

きっと、同じだったのだ。

あの無口な人は、何も言わなかっただけで、全部感じていたのだ。娘の手を引く指先に、娘を抱き上げる腕に、娘を見守る視線に、全部込めていたのだ。

言葉にできなくても。表現が下手でも。ぶっきらぼうに「うん」としか言えなくても。

あの人の愛は、本物だった。

チヒロが銀杏の葉を一枚、私のところに持ってきた。

「まま。はっぱ」

「ありがとう。きれいだね」

受け取った銀杏の葉は、完璧な扇形で、端が少しだけ茶色くなりかけていた。秋の終わりの葉。もうすぐ全部散ってしまう。

チヒロが私の膝に登ってきた。ベンチの上で、膝の上に乗って、私の顔を覗き込んでくる。

「まま, ないてる?」

「……泣いてないよ」

「め, きらきら」

「それは……目から汗が」

一歳半の子どもに「目から汗」は通用しない。チヒロは不思議そうな顔で私の頬に手を伸ばして、指先で涙の跡に触れた。

「いたい?」

「ううん. 痛くないよ. 嬉しいの」

「うれしい?」

「うん. チヒロがいてくれて, 嬉しいの」

チヒロは, 意味を完全には理解していないだろう。でも, 私が泣いているけれど悲しくないということは, 何となく感じ取ったらしい。小さな手で私の頬を両側からぎゅっと潰した。

「えがお!」

「……ぷっ」

頬を潰されて, 変な顔になった。チヒロが「あはっ」と笑った。つられて私も笑った。銀杏の葉がひらりと落ちてきて, チヒロの頭の上に乗った。

笑いながら, 思った。

パパ。

あなたが私の手を引いてくれた日々を、私は今、チヒロに返しています。

あなたが無言で教えてくれたこと――手を繋ぐことの意味、隣を歩くことの温かさ、黙って見守ることの愛――を、私は今、下手くそなりに、チヒロに伝えようとしています。

私は、パパの子どもでよかった。

あなたに似てしまったことを、昔は少し恨んだこともあったけれど――無口で、不器用で、大事なことほど言葉にできない性格を――今は感謝しています。だって、言葉にできない分、手のぬくもりで伝えることを、あなたが教えてくれたから。

公園からの帰り道、チヒロは再び私の手を握って歩いた。

石畳を、小さな足と少し引きずる左足が並んで歩く。二つの足音。不揃いなリズム。でも、少しずつ合ってくる。チヒロが私の歩幅に合わせようとして、私もチヒロの速度に合わせようとして、二人の歩調が交差しながら、やがて一つのテンポにまとまっていく。

あの日の浜辺も、こうだったのかもしれない。

パパの大きな足が私の小さな歩幅に合わせて。波打ち際を、ゆっくり、ゆっくり歩いて。パパにとっては普段の半分くらいの速度だったはずだ。でも、遅いとは一度も言わなかった。急かしたことも一度もなかった。ただ、私のペースに合わせて歩くだけ。

今日もパパは何も言わないのだろう。言わなかっただろう。言う必要がなかったのだ。

子どもの歩調に合わせて歩く。それ自体が、もう、愛の言葉なのだから。

商店街の入り口で、和菓子屋のおかみさんがチヒロに声をかけた。

「あら, チヒロちゃん! 大きくなったねぇ! お母さんとお買い物?」

「うんっ」

「偉いわねぇ. ちゃんと手を繋いで歩けるのねぇ」

おかみさんがチヒロに飴玉を一つくれた。チヒロが「あいあと」と言った。「ありがとう」がまだ上手に言えない。でも、頭だけはちゃんと下げた。誰に教わったのか——教えた覚えはない。マツバさんかもしれない。おじいちゃんのリュウキを見て覚えたのかもしれない。

……いや、違う。

パパがそうだったのだ。

星埜イゴウという人間は、「ありがとう」を口にするのが苦手で、でもその代わりに必ず深く頭を下げる人だった。言葉より先に身体が動く人だった。チヒロは、私を通して、会ったこともない祖父の所作を受け継いでいるのかもしれない。

遺伝子というものの不思議さに、また胸が締まった。

自宅に着いた。

玄関を開けると、中からマツバさんが出てきた。今日は午前中でジムの仕事が終わり、先に帰宅していたらしい。

「おかえり」

「ただいまです」

「チヒロ、楽しかった?」

「わんわ! はっぱ!」

チヒロがマツバさんに向かって両手を広げた。マツバさんが軽々と抱き上げて、「ウインディに会ったの? 葉っぱで遊んだの?」と聞いている。チヒロがうんうんと頷いて、ポケットから潰れた銀杏の葉を取り出してマツバさんに見せた。

「きれいだね。大事にとっておこう」

マツバさんが丁寧にその葉を受け取っている姿を見ながら、私は靴を脱いだ。左足の装具を外す。アステアが「本日の歩行数、四千二百歩ロト。お疲れ様ロト」と報告した。

居間に入ると、こたつが用意されていた。テーブルの上に、温かいほうじ茶が二つと、チヒロ用の小さなマグカップにぬるい麦茶が入っている。マツバさんが先に帰って、私たちのために用意してくれていたのだ。

こたつに入って、ほうじ茶を手に取った。温かい。

チヒロはマツバさんの膝の上で、飴玉を舐めている。金色の髪の父親と、黒い髪の息子。チヒロの目元は私に似ていて、でも笑うとマツバさんで、黙っているとイゴウ。三つの遺伝子が、この小さな一歳半の身体の中でモザイクのように組み合わさっている。

「マツバさん」

「ん?」

「……今日、パパのことを思い出しました」

マツバさんの手が止まった。チヒロの髪を撫でていた手が、一瞬だけ止まって、そして静かに動きを再開した。

「イゴウさん?」

「はい. チヒロの手を引いて歩いていたら……パパに手を引かれて浜辺を歩いた日のことを、思い出して」

マツバさんは何も言わなかった。言わないでいてくれた。この人は、私が話し終わるまで待つことができる人だ。

「パパは……何を思っていたのかなって. 私の手を握りながら. あの無口な人は、何を考えていたのかなって」

声が、少しだけ揺れた。

「……今日、分かった気がします. たぶん、今の私と同じことを思っていたんだと思います」

マツバさんが、こたつの下で私の足に自分の足を触れさせた。冷えた私の足を、温めるように。

「何を思ってたの」

「……何も考えてなかったなんだと思います. ただ, この手を離さないようにしようって. それだけ」

涙が落ちた。こたつの上に、一滴。

「パパは、何も言わない人でした. 『大好きだよ』とも『愛してるよ』とも言わなかった. でも, 手は温かかった. いつも. ずっと. あの手の温かさが……パパの『大好き』だったんだと思います」

チヒロが、マツバさんの膝の上から私のほうを見た。母親が泣いていることに気づいたらしい。また小さな手を伸ばして、私の頬を両側からぎゅっと潰した。

「えがお! ままー, えがお!」

笑った. 泣きながら, 笑った. この子は本当に——本当に, 優しい子だ。

マツバさんが、静かに言った。

「イゴウさんは, 今のイヨリちゃんを見たら, きっと安心するだろうね」

「……そうでしょうか」

「うん. 自分と同じように, 子どもの手を握って歩いてる. 自分と同じように, 言葉にする前に行動で愛を伝えてる. ——イゴウさんの愛は, ちゃんとイヨリちゃんの中に生きてるよ」

その言葉を聞いた瞬間、堪えていたものが全部溢れた。

泣いた。

声を殺さずに、泣いた. チヒロの前で. マツバさんの前で. 抑えきれないほどの涙が溢れて, 嗚咽が喉から漏れて, こたつの上に涙の跡が点々と落ちた。

チヒロが驚いて、マツバさんの膝を降りて、よちよちと私の方にやってきた。そして、私の膝の上によじ登って、小さな両腕を私の首に回した。

「まま. ぎゅー」

抱きしめられた. 一歳半の子どもに、抱きしめられた。

その腕の力は弱くて, 温かくて, 柔らかくて. パパとは全然違う. 身体の大きさも, 手の硬さも, 何もかも違う。

でも, 温もりだけは——同じだった。

手から手へ. パパから娘へ、娘から息子へ. 言葉にされなかった愛情が、ぬくもりという形で、世代を超えて受け継がれていく。

パパ。

あなたの手の温かさを、私は忘れません。

そしてその温かさを、チヒロに渡します. チヒロがいつか誰かの手を引いて歩く日が来たら、あなたの温もりが、そこにもきっとあるはずです。

三代分の愛が、この小さな手のひらの中に、ちゃんと生きています。

泣き止んだ後、三人でこたつに入って、和菓子屋のおかみさんからもらった栗まんじゅうを分け合って食べた。

チヒロは栗まんじゅうの餡子を指で掬って口に入れて、「あまい!」と笑った。口の周りが餡子だらけだ。マツバさんが濡れタオルで拭いてやると、チヒロは嫌がって首を振ったけれど、拭き終わると何事もなかったかのように次の一口をたかった。

何気ない光景。

でも、この何気なさこそが、パパが守ろうとしていたものなのだと、今は分かる。

大げさな言葉ではなく。劇的な事件ではなく。ただ、こたつの中で一緒にお菓子を食べる。手を繋いで商店街を歩く. 公園の葉っぱを拾う. 日向ぼっこをするウインディを一緒に見る。

それだけの日常を, 守りたかったのだ. あの人は。

そして私も、守りたいと思う。

チヒロの小さな手が餡子で汚れた指を私のパジャマで拭こうとして、マツバさんに止められている. 「パパのにしなさい」と言われて、マツバさんの着物の袖で拭いている. マツバさんが苦笑している。

この風景を. この声を. この温かさを。

守りたい。

パパが, ミナモシティの浜辺で, 言葉にできないまま守り続けてくれた日々のように。

夜。チヒロを寝かしつけた後、布団の中でマツバさんに聞いた。

「マツバさん. 千里眼で……死者を見ることはできますか」

マツバさんがしばらく黙った. それから、静かに言った。

「……見えないよ. 成仏した魂は、千里眼でも見えない. イゴウさんは——ちゃんと、成仏しているから」

「そうですか」

「でも」

マツバさんが、布団の中で私の手を取った. 左手を. 不自由な方の手を. パパに似た、無口な手を。

「見えなくても、いると思うよ. 成仏しているから、こちらには干渉できない. でも、きっと——どこかで、見てる. イヨリちゃんがチヒロの手を引いて歩いている姿を, 見てる」

目を閉じた。

瞼の裏に、ミナモシティの浜辺が広がった。

波の音. 潮の匂い. 裸足で踏む砂の感触. そして、パパの大きな手のひらの温度。

繋いだ手を、もう握り返してはもらえない. でも、その手の温かさは、私の中に残っている. 私の手を通して、チヒロの手に伝わっている。

——パパ。

私、お母さんになったよ。

あなたみたいに上手にはできないけれど. あなたみたいに黙ってはいられなくて、たまに泣いちゃうけれど. でも、手は離しません. あなたが、一度も離さなかったように。

隣のベビーベッドから、チヒロの小さな寝息が聞こえる。

マツバさんの手が、私の手を握っている。

パパの手と、夫の手と、息子の手。

三つの温もりが、私の人生を繋いでいる。