ECHOES OF ECRUTEAK

星と花の小夜曲

― マツバ × イヨリ ―
STARRING MATSUBA & IYORI

月夜に堕ちる、純情の牙【後編】

玄関の鍵が閉まった瞬間、イヨリが振り返った。

悪魔の角のカチューシャがかすかに揺れ、ハート型の尻尾が腰の後ろでゆらりと持ち上がった。黒のミニワンピースの胸元のハートカットから覗く白い谷間が、玄関の薄暗い照明に浮かんでいる。網タイツに包まれた脚が、つま先立ちになった。

「Trick or Treat、マツバさん」

イヨリの声が、いつもとは違う響きを帯びていた。ステージの上で「ちょっと悪い子」の演技をしていた時の、あの甘くて低い声の名残。子どもたちの前では抑えていた、本当の「イタズラ」の声。唇に人差し指を当てた「しーっ」のポーズ。その指先が、唇から離れ、マツバの胸元に伸びた。

「今夜は、悪魔のわたしがマツバさんにイタズラします」

イヨリの指先が、マツバの黒いタートルネックの首元に触れた。爪の先で、喉仏をちょんと突く。それがイヨリの精一杯の「サキュバスのイタズラ」だった。

マツバは、微笑んだ。

静かな微笑みだった。穏やかで、優しくて、しかしその奥に獣の目が光っていた。

「サキュバスが人間にイタズラするのは、セオリー通りだね」

「はいっ、だから今夜は――」

「でもね、イヨリ」

マツバの右手が、イヨリの手首を掴んだ。タートルネックに伸びていたイヨリの指が止まった。掴む力は優しかったが、逃がす気配は一切なかった。

「サキュバスが人間に勝てるのは、相手が普通の人間の場合だけだよ。ゴーストタイプのジムリーダーは、悪魔の扱いに慣れてるんだ」

引き寄せられた。一瞬で距離が消え、イヨリの身体がマツバの胸に引き込まれた。悪魔の翼がマツバの腕に押しつぶされ、尻尾がマツバの脚と自分の脚の間に挟まれた。

「え、あ、ちょっ、マツバさ――」

「Treat。僕は両方選んだよね」

マツバの唇が、イヨリの耳たぶに触れた。温かい吐息が耳の中に流し込まれ、イヨリの全身がびくりと震えた。

「今夜のTrickは僕がする。Treatも僕がする。サキュバスは大人しく捕まっていて」

「ひゃっ……♡」

イヨリの「サキュバスの攻勢」は、開始三十秒で完全に瓦解した。

寝室に運ばれた。

マツバに抱き上げられ、悪魔の衣装のまま布団の上に横たえられた。十月の夜は涼しく、窓から流れ込む秋風が肌を撫でていく。ハロウィンの満月がカーテンの隙間から差し込み、黒いミニワンピースに包まれたイヨリの身体を銀色に照らしていた。

マツバは、イヨリの上に覆いかぶさった。が、すぐには触れなかった。

代わりに、見下ろした。

「悪魔の格好は、よく似合ってるよ」

「あ、ありがとうございます……♡」

「五百人の前でこの衣装を着たでしょう。五十人のカメラマンに撮られたでしょう」

「は、はい……」

「知ってるかな。あのカメラマンの三十四パーセントが、ここを狙ってた」

マツバの指が、ハート型の胸元カットの縁をなぞった。イヨリの谷間のすぐ上、黒い布地と白い肌の境界線を、爪の先で辿っていく。

「ひ……っ♡」

「二十四パーセントが、ここ」

指が下りて、網タイツで包まれた太腿の外側を撫でた。網目の菱形の隙間に爪の先を差し入れ、中の肌をちょんとつついた。

「やっ♡! あみめ、の、すきまっ♡」

「十八パーセントが、ここ」

手が回って、イヨリの腰の後ろ、悪魔の尻尾の付け根を掴んだ。尻尾のワイヤーがイヨリのお尻のラインに沿って固定されているその部分を、指先で弾いた。

「ひゃんっ♡♡ しっぽっ♡」

「全部、僕の目で数えたよ。千里眼で、一台残らず」

マツバの声が、甘く、低く、しかし温かかった。怒りではない。脅しでもない。「僕はこんなに見ていた」という、極限の愛情の裏返し。

「でも今夜からは、このカットの中身も、この網の下の肌も、この尻尾の根元も、見ていいのは僕だけだ」

「……マツバさんだけ、です♡」

「わかってる。でもサキュバスにはお仕置きが必要だ」

「お、おしおきっ……♡♡」

マツバの指が、チョーカーに触れた。

細い黒の革バンドがイヨリの白い首に巻かれている。シンプルなデザインだが、イヨリの首の細さを際立たせ、その下の鎖骨のラインに視線を導く絶妙なアクセサリー。

「これは残す」

「え?」

「角も、翼も、尻尾も外す。でもチョーカーだけは残す。僕が捕まえた悪魔の首輪だから」

イヨリの顔が、ジャック・オ・ランタンのように真っ赤に染まった。

マツバの手が、まず角のカチューシャを外した。黒い角が髪から離れ、サイドテーブルに置かれた。次に、背中に固定された悪魔の翼のハーネスを解いた。イヨリを起こし、背中のバックルを一つずつ外していく。小さな翼がベッドの脇に落ちた。最後に、尻尾。腰のワイヤーの留め金を外すと、ハート型の先端を持つ黒い尻尾が、するりとイヨリの身体から離れた。

角なし、翼なし、尻尾なし。残ったのは黒いミニワンピースと網タイツとチョーカーだけ。悪魔の装飾を剥がされたイヨリは、まるで魔力を失ったサキュバスのように、無防備に布団の上に横たわっている。

「……はずかしい、です……♡」

「サキュバスが恥ずかしがってどうするの」

マツバの唇が、チョーカーの上を滑った。革の細い帯の縁に沿って、首筋にキスの線を描いていく。チョーカーの下の肌に唇が潜り込み、そこに一つ目のキスマークを落とした。

「んっ♡ 首っ……♡」

「首輪の内側に、印をつけた。これで本当に僕の悪魔だ」

マツバの手がミニワンピースの裾を掴んだ。太腿の中ほどで揺れていた黒い布地を、ゆっくりと持ち上げていく。網タイツに包まれた太腿が露出し、その上の黒いショーツの縁が見えた。さらに持ち上げると、腰が、お腹が、胸が順に現れ、ワンピースが頭の上を通って脱がされた。

残ったのは、黒いブラジャーと黒いショーツと、黒い網タイツと、黒いチョーカー。黒い下着に包まれた白い身体が月明かりに照らされ、網タイツの菱形が肌を幾何学模様に切り分けている。

「網タイツは……まだ脱がさないよ」

「え……っ♡」

「この網越しに触る方が、面白いから」

マツバの手が、網タイツの上から太腿を撫で始めた。網目の凹凸が掌に当たり、同時にその隙間からイヨリの肌が直接触れる。触れたり途切れたり、触覚が断続的に伝わる不規則さが、イヨリの神経を過敏にしていく。

「やぁっ♡♡ あみめ越し……へんな感じ……♡♡」

「どこがいちばん感じる? ここ?」

内腿の柔らかい部分を、網越しに指先でくすぐった。

「ひぁっ♡♡♡ そこっ……くすぐった……ぃ♡♡」

「ここは?」

太腿の付け根、ショーツの縁ぎりぎりを、網目一つ分だけずらしながら撫でた。

「だめっ♡♡ そこはっ……近いっ♡♡♡」

「近い? 何に?」

「い、意地悪ですっ……♡♡」

「サキュバスにはイタズラで返すものだよ」

マツバの指が、ショーツの上からイヨリの秘部に触れた。黒い布地の上から、花弁の割れ目のラインを指先でなぞった。すでに布地が湿り始めていた。

「もう濡れてるね。サキュバスのくせに、こんなに早く」

「マツバさんがっ……いじわるするからっ……♡♡」

「悪魔に優しくする人間はいないよ」

ブラジャーのホックを外した。黒い布地がイヨリの胸から剥がれ、白い乳房が月明かりに晒された。チョーカーをつけたまま、胸を露出したイヨリの姿は、魔力を失ったサキュバスの無防備さそのものだった。

マツバの唇が、右の乳首に触れた。

「あっ♡♡」

「イタズラ、一つ目」

舌先で乳首を弾いた。硬くなった突起を唇で挟み、軽く歯を立てた。嚙むのではなく、歯の存在を感じさせるだけの圧力。その微かな痛みが快感に変わり、イヨリの背中が跳ねた。

「ひゃんっ♡♡ 歯っ……歯が当たってっ……♡♡」

「悪魔には、牙で応えないと。ゴーストの使い手だからね」

左の乳首も同じように。歯の先端をほんのわずかに当てながら、舌で転がす。両方の乳首が歯と舌で同時に攻められる感覚に、イヨリの身体がくねくねと身悶えした。右手がイヨリの左の乳房を揉みながら、口は右の乳房を味わい尽くしている。

「あぁっ♡♡ りょうほう……同時にっ……♡♡ んんっ♡♡♡」

マツバの空いた左手が、網タイツの上からイヨリのお腹を下って、ショーツの縁に達した。指先がショーツの中に滑り込んだ。

「イタズラ、二つ目」

指がイヨリの花弁に直接触れた。濡れた粘膜を中指がゆっくりと割り、クリトリスの包皮を親指で押し上げた。

「あぁああっ♡♡♡ だめっ♡♡ おっぱいと一緒にっ♡♡♡」

胸と秘部を同時に攻められて、イヨリの快感がまたたく間に急上昇した。マツバの舌が乳首を舐め上げる律動と、指がクリトリスを撫でる律動が同期し、二箇所から同時に送り込まれる快感の波がイヨリの身体の中で共鳴した。

「どっちから先にイく? 上? 下?」

「い、意地悪っ……♡♡ そんなの……わかんないっ♡♡♡」

「じゃあ、同時に」

乳首を歯で挟む力がほんの少し増し、同時にクリトリスを親指と中指で直接挟んで転がした。

「あぁあああっ♡♡♡♡ イクっ♡♡ イっちゃうっ♡♡♡♡」

イヨリの身体が大きく弾けた。全身が痙攣し、膣口から愛液が溢れて網タイツの太腿を伝った。しかしそれだけでは終わらなかった。絶頂の波が引く前に、マツバの指がまだ動いている。痙攣する身体の上で、クリトリスへの刺激が止まらない。

「ま、待っ♡♡♡ まだっ……イったばかりっ♡♡♡」

「サキュバスは一回で満足しないだろう? もう少しイタズラさせて」

マツバの指が、絶頂直後の過敏なクリトリスを撫で続けた。軽い力だったが、敏感になりきった神経にはそれだけで十分すぎた。

「やぁっ♡♡♡ だめっ♡♡ 敏感すぎっ♡♡♡ またっ……またイっちゃっ♡♡♡♡」

二度目の絶頂。一度目からわずか十数秒。イヨリの腰がびくんびくんと跳ね、太腿の間から愛液がさらに溢れた。今度は量が多く、網タイツの網目を潜り抜けて、シーツにまで染みが広がった。

「おっ……♡♡ お、おしっこじゃないっ♡♡♡ ちがうのっ♡♡♡」

「わかってるよ。潮吹きだね。初めてじゃない?」

「はじめ、てっ♡♡♡ こんなの……はじめてっ♡♡♡♡」

マツバの目が、獣のように光った。

「もっと出る?」

「むりっ♡♡♡ もう、むりぃっ♡♡♡♡」

「サキュバスが無理って言うのは、反則だよ」

網タイツのクロッチ部分を、マツバの指がびりっと破いた。

「あっ♡♡ やぶっ……破れちゃっ♡♡」

「買い直すよ。今は邪魔だ」

網タイツの股間部分だけが破られ、そこからイヨリの秘部が直接露出した。ショーツはとっくに横にずらされており、濡れきった花弁が月明かりにてらてらと光っている。網タイツはまだ脚全体を覆ったまま。その中央だけが破れている光景は、背徳的で甘かった。

マツバの男根が、破れた網の隙間からイヨリの入り口に触れた。

「入れるよ。悪魔を捕まえた男が、中に入る」

「は、ぃっ♡♡ 来てくださいっ♡♡♡」

腰を沈めた。二度の絶頂と潮吹きで十分に濡れた膣が、マツバを抵抗なく飲み込んだ。奥まで、一気に。子宮口の手前に先端がこつりと当たった瞬間、イヨリの身体が三度目の痙攣の予兆を見せた。

「っっ♡♡♡ 奥っ……奥まで一息でっ♡♡♡♡」

「二回イった後だから、中がすごく敏感になってるね。わかるよ、千里眼で」

「千里眼、使わないでぇっ♡♡♡」

「使わないと、どこが一番気持ちいいかわからない。悪魔のお仕置きは正確じゃないと」

マツバが動き始めた。五度目の律動は、これまでの中で最も意地悪だった。千里眼が読み取ったイヨリの膣内の感度マップに従い、いちばん感じるポイントを擦る直前で止め、少しずれた場所を突く。わざと外す。焦らす。そしてイヨリが「そこじゃなくて」と身体をくねらせた瞬間に、正確にそこを突く。

「あっ♡♡ ちがっ……そこじゃ……あっ♡♡♡ そこぉっ♡♡♡♡」

「ここ?」

「そこですっ♡♡♡♡ そこっ♡♡ もっとっ♡♡♡♡」

「サキュバスがおねだりするの?」

「おねだりしますっ♡♡♡ もっとっ……もっとそこっ♡♡♡♡」

マツバの腰の律動が、正確にそのポイントを何度も何度も突き上げた。わざと外して焦らした分の快感が一気に解放され、イヨリの全身が痙攣した。

「あぁああっ♡♡♡♡ イクッ♡♡♡ またイクっ♡♡♡♡ だめっ♡♡ 止まらないっ♡♡♡♡」

三度目の絶頂。同時に、膣口から透明な液体が噴き出した。潮吹き。マツバの腹部と太腿を濡らし、破れた網タイツの縁に沿って飛び散った。

「でた……♡♡♡ また出ちゃったっ♡♡♡♡ はずかしぃっ♡♡♡」

「恥ずかしがるサキュバスは初めて見た」

マツバは止まらなかった。三度目の絶頂の余韻の中、まだ腰を動かし続けている。過敏になりきった膣壁を、わざとゆっくり、一ミリずつ擦るように動く。絶頂直後の速い律動よりも、この遅い律動の方がはるかに強い刺激となってイヨリの神経を焼いた。

「やぁっ♡♡♡ ゆっくりのほうっ♡♡ やばぃっ♡♡♡♡ おかしくなるっ♡♡♡♡♡」

「おかしくなっていいよ。悪魔だから」

マツバの右手がイヨリの左手を探った。五度目の恋人繋ぎ。意地悪な律動は変わらないのに、繋がれた手だけが優しかった。指と指が絡み、掌と掌が密着し、その温もりだけがイヨリの意識を引き留めていた。

「マツバさっ♡♡♡ 好きっ♡♡ 好きですっ♡♡♡♡ いたずらされてもっ♡♡ いじわるされてもっ♡♡♡♡ すきぃっ♡♡♡♡♡」

「僕もだよ。サキュバスでも、うさぎでも、妖精でも、織姫でも。全部好き」

マツバの腰が加速した。意地悪をやめた。焦らしをやめた。五度分の愛情をすべて込めて、まっすぐに、正確に、イヨリの最も感じる場所を突き上げ続けた。

「あっあっ♡♡♡ きもちぃっ♡♡♡ もうっ♡♡ イっちゃうっ♡♡♡ マツバさんと一緒にっ♡♡♡♡」

「一緒に。ハロウィンの夜に」

最後の一突き。最奥まで。イヨリの全身が震え、マツバの男根を受け入れるように膣壁が締め上げた。

「イヨリ……っ!」

「マツバさんっ♡♡♡♡♡ イクっ♡♡♡ いっしょにっ♡♡♡♡♡」

マツバは果てた。精液がイヨリの最奥に注がれ、どくどくと脈打った。イヨリも四度目の絶頂を迎え、膣壁が万力のように締め上げ、同時にまた潮が吹いた。マツバの腹とイヨリのお腹の間で愛液と精液と潮が混ざり合い、破れた網タイツの網目に絡みついた。

「あぁああっ♡♡♡♡♡ あつぃっ♡♡♡ 中にっ♡♡♡ また出ちゃったっ♡♡♡♡ 上からも下からもっ♡♡♡♡♡」

イヨリの全身が痙攣し続け、マツバは射精の余韻に震えながら、繋いだ右手でイヨリの指を撫で、左手でイヨリの涙を拭い、チョーカーの上に唇を落とした。

「……捕まえた悪魔は、逃がさないよ」

「逃げませんっ♡♡♡ マツバさんのっ♡♡ マツバさんだけのっ♡♡♡ 悪魔ですっ♡♡♡♡」

その瞬間。イヨリの両脚がマツバの腰に巻きついた。破れた網タイツの脚が、マツバの裸の腰に絡みつく。

「…まだ。今夜はハロウィンだから……朝まで、イタズラしてほしいです♡」

マツバは、悪魔を逃がさなかった。

翌朝。

十一月一日。ハロウィンの翌日。空は秋晴れだった。金木犀の香りが窓から流れ込み、寝室に甘い匂いを満たしていた。

イヨリは、マツバの腕の中で目を覚ました。

全身がぐったりとしていた。腰から下の感覚が曖昧で、太腿の内側がひりひりとしている。網タイツは股間部分が破れたまま、まだ脚に絡みついていた。黒いチョーカーだけが首に残り、その下にキスマークが薄紫に滲んでいる。角も翼も尻尾も、サイドテーブルの上に整然と並べられていた。シーツには大きな染みが幾つも広がっている。

マツバの右手は、まだイヨリの左手を繋いでいた。

五度目の恋人繋ぎ。今回の持続時間は。

アステア・システムのモニターが静かに点灯した。

「データ集計完了ロト」

ロトムの声が、もはや恒例の六度目の朝を見届けている。

「昨夜のマツバとイヨリちゃんの行為回数は六回。イヨリちゃんの絶頂回数は推定十五回。潮吹き回数は推定七回。恋人繋ぎの継続時間は十時間五十二分。前回の七夕の記録を一時間五分更新したロト」

「ロトムっっっ!!」

「なお今回の特筆すべきデータとして、イヨリちゃんの潮吹き発生はシリーズ初ロト。マツバの刺激パターンを分析した結果、焦らし技法が潮吹き誘発に九十五パーセント寄与しているとの結論ロト」

「分析しないでっ!! 寄与率出さないでっ!!」

「ロトムの辞書に新たなラベルを追加したロト。ラベル名は『悪魔憑依型相互快楽行為』ロト。サブラベルとして『Trick and Treat』が登録されたロト」

「ラベルが毎回長くなってるっ!!」

イヨリの悲鳴に、マツバの肩がかすかに震えた。六度目の朝。六度目の寝たふり。六度目の微かな笑み。

「……マツバさん、もう起きてるのバレバレですよ」

「……」

マツバの親指が、繋いだ手のイヨリの手の甲を、ゆっくりと撫でた。

イヨリは、赤い顔のまま、チョーカーだけ残った首をマツバの胸に埋めた。

「……悪魔は、今日もここにいます」

マツバの寝たふりの唇が動いた。

「逃がすわけないだろう」

金木犀の香りが寝室を満たす中、繋がれた手が朝日に照らされていた。破れた網タイツはまだ脚に絡みつき、チョーカーは首に巻かれたまま。悪魔の残骸が散らばる寝室は、ハロウィンの夜の続きを静かに物語っていた。

「次のイベントの企画書が、もう届いてるロト。ジムの受付にあるロト。クリスマスのミニスカサンタコスプレロト」

マツバの寝たふりの目が、六度目のバチリを刻んだ。

― 後編 Fin. ―

あとがき(佐藤美咲の独白)

大親友。五度目の宝具解放、完遂したわ。今回のテーマは「イタズラ」よ。

サキュバスのくせに三十秒で攻勢が瓦解して、そこからずっとイタズラされっぱなしのイヨリ。もう何のためのサキュバス衣装なのよ。でもね、それがいいの。世界最弱のサキュバスが世界最強の独占欲に仕留められる構図、あたしの理想郷よ。

そしてね、今回ついに潮吹きが出たわ! ロトムが焦らし技法の寄与率を九十五パーセントと算出するの、もう何の研究論文よ。「Trick and Treat」がサブラベル登録されたの、もう辞書が同人用語辞典になってるわ!!

チョーカーだけ残すっていう美学。角と翼と尻尾を全部剥がされて、首輪だけが残る。「捕まえた悪魔の首輪」ってマツバが言った瞬間、あたし全身鳥肌立ったわ。所有の象徴。愛の証。最高に甘い拘束。

恋人繋ぎ十時間五十二分! ついに十時間超え!! ラストの「ミニスカサンタ」。冬のクリスマス編への伏線!! もうこのシリーズ、四季を一周してフルコンプよ!!!