ECHOES OF ECRUTEAK

星と花の小夜曲

― マツバ × イヨリ ―
STARRING MATSUBA & IYORI

千里眼は猫に焦がれる【後編】

荷物は、予定通り三日後に届いた。

「マツバ様宛の宅配便です」と玄関先でイヨリが受け取ろうとした瞬間、風のような速さでマツバが廊下を駆け抜け、イヨリより先に配達員から段ボールを引ったくった。千里眼のジムリーダーとは思えない、獣じみた動作だった。

「あ、ありがとう。僕宛の荷物だから、僕が持つよ」

「はぁ……そうですか。何を買ったんですか?」

「……ジムの備品。事務用品。クリアファイルとか」

人生で初めて、マツバは妻に嘘をついた。千里眼で人の心を見透かす男が、この上なくぎこちない嘘をついている。イヨリは小首を傾げたが、それ以上追及しなかった。善良すぎる妻が、この瞬間だけは天の恵みだった。

マツバは段ボールを書斎に運び、鍵をかけ、震える手で開封した。

中身を確認した瞬間、マツバの心臓が暴走を始めた。

黒い猫耳のカチューシャ。内側は淡い桜色のファーが貼られていて、頭に装着すると髪の間から三角形のシルエットが覗く仕様になっている。猫耳の先端は僅かに丸みを帯びており、触れるとぴくりと弾力を返す柔らかさだった。

黒いフリルのワンピース。丈は太腿の半ばまで。肩が大きく開いたオフショルダーで、胸元のフリルは三段重ね。白い腹部には桜色の肉球マークが刺繍されている。背面には、腰のあたりから長い黒猫の尻尾がぶら下がっていた。

首元用の鈴つきチョーカー。赤い革紐に金色の小さな鈴が一つ。振ると、りん、と澄んだ音色を奏でた。

そして、猫の手を模した丸い黒のミトン。肉球部分がぷにぷにとした素材になっている。

マツバは、衣装を胸に抱きしめた。そして、自分が何をしているのかを自覚して、衣装を即座に段ボールに戻した。

問題は、ここからだった。これを、いかにしてイヨリに着せるか。

その夜。夕食後。イヨリが食器を洗い終えて居間に戻ってきた時、マツバはもう限界だった。三日間の猫の夢が、彼の理性を削り尽くしていた。

「イヨリ」

「はい?」

マツバは正座していた。背筋を伸ばし、両手を膝の上に置き、深刻な面持ちでイヨリを見つめている。その姿は、ジム戦の前に精神統一をしているジムリーダーのそれだった。

「一つ、お願いがあるんだ」

イヨリは少し驚いたように目を瞬いたが、マツバの向かいに正座した。夫のまっすぐな視線を受け止めて、こくりと頷いた。

「なんですか? 何でも言ってください」

マツバは、書斎から持ってきた紙袋を差し出した。イヨリがおそるおそる中を覗き込む。沈黙が、三秒間流れた。

「……猫……?」

「……猫です」

「……これを、私が……?」

「……着てほしい。どうか、着てほしい。お願いだから」

マツバは頭を下げた。エンジュジムのリーダーが、妻に猫耳コスプレの着用を懇願するという、空前にして恐らく絶後の光景がそこにあった。

イヨリの頬が、見る見るうちに紅潮した。猫耳カチューシャを指先でつまみ上げ、くるくると回す。鈴つきチョーカーの鈴が、りん、と鳴った。フリルのワンピースの裾を広げて、その丈の短さに小さく悲鳴を上げた。

「マツバさん……これ、すごく……その……」

「嫌?」

マツバの声が、微かに震えていた。千里眼で見れば、イヨリの心の色は拒絶の色ではなかった。羞恥と戸惑いと、それから……ほんの少しだけ、好奇心。

「嫌じゃ、ないです。嫌じゃ……ないんですけど……」

イヨリはしばらく逡巡した後、ぎゅっと衣装を胸に抱きしめて、観念したように、小さく呟いた。

「……着替えてきます」

十五分が、永遠のように長かった。

マツバは寝室の前で待っていた。障子一枚を隔てた向こう側で、衣擦れの音がする。布が肌を滑る音。カチューシャを着ける気配。そして最後に、りん、と小さな鈴の音。

「……マツバさん……」

障子の向こうから、蚊の鳴くような声がした。

「あの……笑わ、ないでくださいね……」

「笑わないよ。約束する」

障子が、ゆっくりと開いた。

マツバの呼吸が、止まった。

イヨリが立っていた。黒い猫耳カチューシャが、艶やかな黒髪の間から三角形のシルエットを覗かせている。オフショルダーのフリルワンピースから、白い肩と鎖骨が露出していた。太腿の半ばで切れた丈から、すべらかな脚が伸びている。首元には赤いチョーカー、金色の鈴。腰からは黒い尻尾が垂れて、ゆらゆらと揺れている。両手には猫の手のミトン。

そしてイヨリは、猫ミトンで口元を隠しながら、頬を林檎のように赤く染めて、上目遣いにマツバの顔を窺っていた。

「……似合ってま、すか……?」

りん、と鈴が鳴った。首を傾げた拍子に。

マツバの脳が、焼け落ちた。

三日間思い描いた妄想よりも遥かに、圧倒的に、暴力的に、イヨリは可愛かった。いや、可愛いという言葉では足りない。犯罪的だ。千里眼を通さなくても、イヨリの体温が薄い布地を通して伝わってくるのがわかる。フリルの間からちらりと見える鎖骨の窪み。スカートの裾から覗く太腿の内側。そのすべてが、黒い猫耳と金色の鈴に彩られて、現実とは思えない甘さで輝いている。

「……マツバさん? あの、無言だと、怖いんですけど……」

マツバは一歩踏み出し、イヨリの顔を両手で包んだ。

「可愛い」

声が掠れていた。

「可愛いよ、イヨリ。……信じられないくらい」

りん。イヨリが小さく身じろぎして、鈴が鳴った。

「……そん、な……大袈裟、です……っ」

「大袈裟じゃない。僕は今、かなり、まずい状態にある」

「ま、まずい……?」

「……このまま言葉で説明すると長くなるから、直接伝えてもいい?」

マツバの瞳が、暗い炎を帯びていた。イヨリの脚が一歩後退り、背中が障子に当たった。逃げ場がないことに気づいたイヨリの目が潤み、猫ミトンの手がマツバの胸に当てられた。押し返すためではなく、まるで子猫が飼い主にじゃれつくように、ぷにぷにの肉球がマツバの胸板を軽く押す。

マツバの理性が、音を立てて崩壊した。

最初に、唇を奪った。

猫耳越しに黒髪を掻き上げ、イヨリの後頭部を支えながら、深く、深く唇を重ねた。イヨリの「んっ」という甘い吐息をそのまま飲み込んで、舌を絡ませる。りん、と鈴が鳴った。イヨリが身体を震わせたから。

「ん、ちゅ……っ、はぁ……マツバ、さ……んっ……」

猫ミトンの手が、マツバの着物の前を握りしめた。柔らかい肉球の感触が、布越しに胸に伝わる。その仕草が猫のそれに酷似していて、マツバの劣情に火がついた。

唇を離すと、透明な唾液の糸が二人の唇を繋いだ。イヨリの目には涙が滲んでいて、猫耳が微かに傾いていて、チョーカーの鈴が荒い呼吸に合わせてちりちりと揺れている。

「マツバさ……もう、恥ずかし……っ」

「まだ何もしてないよ」

「嘘です……っ、キスだけで……もう……っ」

マツバの指が、イヨリの顎を持ち上げた。イヨリの首が仰け反り、白いうなじが露わになった。チョーカーの赤い革紐が、白い喉に鮮やかなラインを引いている。鈴が、イヨリの喉仏のすぐ下で、金色に光っていた。

マツバは、そのうなじに唇を寄せた。

最初は、軽い口づけだった。耳の下から首筋に沿って、唇の温度だけを伝えるように。イヨリの鼓動が、唇を当てた肌越しに速く脈打っている。

りん。イヨリが首を竦めた。鈴が鳴った。

その音に誘われるように、マツバの口づけが変わった。唇が開き、舌先がうなじの産毛を撫でた。そして、歯がそっと肌に触れた。

甘噛み。

猫の首筋を噛むように。子猫を運ぶ母猫さながらに。しかしその歯圧には、母性ではなく、隠しきれない雄の渇望が込められていた。

「ひゃっ……!」

りん。

イヨリの声と鈴の音が、同時に弾けた。

マツバの脳髄を、その二重奏が貫いた。甘い悲鳴と澄んだ鈴の音色。この二つが重なった時に生まれる快楽は、マツバが今まで知っていたどんな感覚よりも鋭く、甘く、残酷だった。もっと聴きたい。もっとこの鈴を鳴らしたい。もっとイヨリの声を引き出したい。

マツバは、うなじの同じ場所をもう一度甘噛みした。今度は少しだけ強く。歯の間で薄い肌を転がすように挟み、舌先で赤くなった跡をなぞる。

「あっ……やっ……っ、首……噛んだら……っ」

りん、りん。イヨリが首を左右に振るたびに、鈴が鳴り続ける。その音が、マツバの欲望を際限なく煽り立てた。まるで鈴そのものが「もっと」と囁いているかのように。

「可愛いよ。……鈴の音が、すごく綺麗だ」

「そん、なこと……言わないで……っ、余計に恥ずかし……にゃっ……!」

悲鳴の末尾が、猫の鳴き声に化けた。イヨリ自身が驚いて、猫ミトンの手で口を塞いだ。頬が耳の先まで真っ赤に染まっている。猫耳が、羞恥で微かに震えていた。

「……今、鳴いた?」

「鳴いてないですっ! 鳴いてないですから!!」

「もう一回、聴きたい」

「い、やっ……っ」

マツバの手が、オフショルダーの肩紐をずらした。白い肩が露わになり、フリルの衣装が少しだけ下がって、鎖骨の奥に始まる胸の膨らみの上端が覗いた。

布団の上に、イヨリを仰向けに横たえた。猫耳が枕に沈み、尻尾が腰の横に流れている。フリルのワンピースの裾はたくし上げられ、お腹の肉球マークが天井を向いていた。

マツバは、ワンピースの胸元を開いた。フリルの下から、小ぶりだが形の整った双丘がこぼれ出した。頂点には、薄い桜色の突起が二つ。微かに勃ち上がって、マツバの視線を受けて更に硬くなった。

「……あ……見ないで……っ」

りん。イヨリが身をよじった拍子に、鈴が鳴った。

「見るよ。……猫は、飼い主に全部見せるものだよ」

「そんなルール、ないです……っ」

マツバの唇が、左の乳房に降りた。頂の手前で一旦止まり、乳房の曲線を舌先でなぞる。外側から内側へ、ゆっくりと螺旋を描くように。渦の中心に向かって。桜色の頂に、近づいては離れ、近づいては離れ、焦らすように回り続ける。

「んっ……はぁっ……じらさ、ないで……っ」

りん。

「焦らしてないよ。丁寧に、味わってるだけ」

そして、ようやく、桜色の頂を唇に含んだ。

舌先で、鈴を転がすように。まさしくそのように。桜色の粒を舌の上で弄び、左右に転がし、ちゅっと軽く吸い上げてから、舌の腹で押し潰すように舐め上げた。

「ひぁっ……! あっ、あぁっ……!」

りん、りん、りん。イヨリの上半身が弓なりに反り、鈴が狂ったように鳴った。マツバの口の中で、乳首が痛いほどに硬くなっていく。右手の親指と人差し指は、もう片方の頂を摘んで、くりくりと回していた。

「乳首、すごく感じてるね。……硬くなってる。ここ、好きでしょう?」

「すき……っ、好きです……マツバさんに、舐められるの……っ♡」

りん。告白と同時に、鈴が一つ鳴った。その音で、マツバは左の乳首から唇を離し、右に移った。口の中の唾液が糸を引いて、桜色の突起から垂れた。冷たい空気に晒された左の乳首が、濡れたまま震えている。

右の乳首も同じように舐め上げた。舌先で弾くように触れ、歯先で軽くかすめ、唇で深く含み、ちゅうっと吸い上げる。同時に、左の乳首を指先で摘み、軽く引っ張る。

「やぁっ……左も、右も……同時は……だめ、です……っ♡」

りん、りん。

マツバは手を止めなかった。胸への愛撫を続けながら、視線を下ろした。フリルのスカートの奥。太腿の間に、もう一つの花が開き始めている。スカートの裾からは、甘い蜜の匂いが立ち昇っていた。

マツバは、イヨリの太腿を撫でながら、ゆっくりと身体を下に移動させた。猫の衣装の裾を丁寧にたくし上げると、白い下着が露わになった。その中央に、透明な蜜が布地を濡らし、暗い染みを作っている。

「あっ……見ないで……っ、濡れてるの……見ないで……っ」

りん。

マツバは、下着の上から、秘所の輪郭を指先でなぞった。布越しに伝わる熱と湿りが、指を濡らした。

「んっ……ぁっ……そこっ……」

下着を脱がせた。糸を引く蜜が、布地とイヨリの秘裂の間に橋を架けた。その橋が切れて蜜が太腿に垂れた時、マツバは息を呑んだ。

イヨリの花弁は、蜜に濡れて艶やかに光っていた。淡い桜色の花びらが、呼吸に合わせて微かに収縮している。その奥の蕾は充血して赤く膨らみ、蜜の雫がゆっくりと花弁を伝い落ちていた。

マツバは、その花に引き寄せられた。花に群がる蝶のごとく、抗えない引力に従って。イヨリの太腿を肩に乗せ、顔を秘所に近づけた。吐息が花弁に触れた瞬間、イヨリの腰がびくりと跳ねた。

「まっ……マツバさん……っ、そこに顔を……っ」

りん。

返事の代わりに、舌を伸ばした。

最初の一舐めは、花弁の合わせ目に沿って、下から上へ。溢れ出した蜜を、舌の面で掬い上げるように。甘く、僅かに酸味を帯びた愛液の味が、マツバの味蕾を満たした。

「ひぁぁっ……!!」

りん、りん、りん。イヨリの腰が浮き、鈴が激しく鳴った。猫ミトンの手がシーツを掴もうとするが、丸い手袋では上手く掴めず、ただぱたぱたと布団を叩くだけだった。その仕草が、じたばたする子猫のようで、マツバは口元を花弁に押し当てたまま、目を細めた。

舌先で花弁を左右に割り開き、中から溢れてくる蜜を啜った。ちゅ、ちゅ、と唇で吸い上げるたびに、新しい蜜が湧き出してくる。泉のように。枯れることなく。マツバは花弁を唇で挟み、舌を奥へ滑り込ませた。

「あっ、あっ、あっ……舌、入ってる……っ、中に舌が……っ♡」

りん。

マツバの舌が、イヨリの膣内を蠢いた。内壁のひだを一枚一枚丁寧に舐め上げ、分泌される愛液を貪るように飲み込む。イヨリの内壁がマツバの舌に吸い付き、離すまいとするように締め付けてきた。

「んぁっ……はぁっ……っ、もう……っ、マツバさん……っ、おかしくなっちゃう……♡」

マツバの指が、花弁の上端にある桜色の蕾を見つけた。親指の腹で、その小さな粒を優しく押し潰しながら、舌は引き続き花弁の奥を耕す。二点同時の刺激に、イヨリの背中が大きく反り返った。

「やぁぁっ……♡ だめっ、だめっ、そこ……一緒にされたら……っ♡」

りん、りん、りん、りん。鈴が、止まらない。イヨリの身体が痙攣するたびに首が揺れ、鈴が鳴り、その音がマツバの舌を更に深く、更に貪欲にさせる。悪循環、いや、甘い循環。鈴の音と蜜の味と、イヨリの嬌声が溶け合って、マツバの聴覚と味覚と触覚を同時に焼いていた。

「何か来る……っ♡ マツバさんっ、何か来ます……っ♡ 止められない……っ♡」

マツバは、蕾への刺激を少しだけ強めた。親指で小さな円を描くように擦りながら、花弁全体を唇で覆い、強く吸い上げた。

「あ、っ……っ!!!」

イヨリの全身が弾けた。

びゅっ、と温かい潮がマツバの顔を濡らした。膣口から噴き出した透明な液体が、マツバの顎を伝い、シーツに染みを広げていく。イヨリの太腿がマツバの頭を挟むように震え、内壁がきゅうきゅうと律動的に収縮した。

「あぁぁっ……♡♡ 出てるっ……止まっ……止まらない……っ♡♡」

りん、りん、りん、りん、りん。鈴が狂騒の音楽を奏でている。マツバは、潮で濡れた顔を拭いもせず、吹き出す液体ごと花弁を舌で受け止め続けた。イヨリの絶頂が長く、長く続くように。蜜と潮の味が混じり合った液体を、一滴も逃さないように啜り続けた。

「にゃぁっ……♡♡ もうだめ……っ、壊れちゃう……っ♡ マツバさぁん……っ♡♡」

猫の鳴き声が混じった絶頂の叫び。マツバの理性は、とうに焼け野原だった。

一度目の絶頂の余韻が引かないうちに、マツバは身体を起こした。着物の帯を解き、下衣を脱いだ。激しく怒張した自身が、解放されて脈打っている。

イヨリは、目の焦点が合っていなかった。猫耳が傾き、頬は涙で光り、口元からは唾液が糸を引いている。が、マツバの裸身を見た瞬間、潤んだ瞳にわずかな意識が戻った。その視線が、マツバの股間に固定された。

「……おおきい……です……っ」

りん。小さく首が動いて、鈴が鳴った。

「イヨリが可愛すぎるから、こうなるんだよ」

「私のせいにしないでくだ、さ……にゃっ……!」

マツバの先端が、イヨリの濡れた花弁に触れたのだ。入口を浅く押し当て、蜜の滑りを確かめるように擦りつけた。イヨリの腰が、意志に反してマツバを求めるように持ち上がった。

「入れるよ。……いい?」

「はい……っ♡ ……ください……っ♡」

ゆっくりと、沈めた。

先端が花弁を割り開き、蜜に導かれて内壁を押し広げていく。まだ絶頂の余韻で敏感になっている膣壁が、マツバの形を覚え込むように締め付けてきた。太さに押し広げられるたびに、イヨリの口から甘い呻きが漏れた。

「んんっ……あっ……はいって……くる……っ♡」

りん。

根元まで沈み込んだ時、二人の骨盤がぴたりと密着した。最も深い場所で、マツバの先端がイヨリの子宮口に触れている。その感覚に、イヨリの全身が震えた。

「奥まで……届いてます……っ♡ マツバさんで……いっぱい……っ♡」

マツバは、イヨリの猫耳を指先で撫でた。カチューシャの付け根の、イヨリの本物の頭皮に触れた時、イヨリがぴくりと反応した。

「……耳の上。ここ、感じる?」

「ぁっ……っ♡ そこ……くすぐったいのとは……違う……っ、なんか……っ♡」

マツバは微笑んだ。あの小説の設定が、現実になった。猫耳の付け根が弱い。なるほど、と心の中で頷いた。ミヤマさんの息子には、いずれ礼を言わねばならない。

腰を引き、突き入れた。

りん。

ぐちゅっ。

鈴の音と水音が、交互に響いた。マツバが腰を振るたびに、イヨリの首の鈴が鳴り、結合部から淫らな水音が迸る。二つの音色が交互に重なり合い、寝室に甘い合奏を満たしていく。

「あっ、あっ、あっ……マツバさんっ……好きっ……好き♡」

りん、りん。

「僕も。……大好きだよ。……世界一可愛い、僕の子猫」

「にゃっ……♡♡ そう呼ばれたら……もう……っ♡」

マツバの律動が加速した。イヨリの細い脚がマツバの腰に巻きつき、猫ミトンの手が背中にしがみつく。肉球の柔らかい感触が背中をぽふぽふと叩くたびに、マツバの胸の奥が甘く疼いた。

「イヨリ……っ、もうすぐ……」

「私も……っ♡ また来る……っ♡ さっきより、大きいのが……っ♡」

マツバはイヨリの腰を掴み、一際深く突き入れた。子宮口を叩く先端と、蕾を擦り上げる恥骨と、鈴と鈴が互いに触れ合うように二人の身体が密着した。

「来てっ……マツバさんっ……中に来てくださいっ……♡♡」

「っ……イヨリ……!」

マツバが果てた。マツバの精が、灼熱の奔流となってイヨリの最奥を満たしていく。どくん、どくん、と脈打つ射精が、何度も、何度もイヨリの子宮に注がれた。

その熱に反応して、イヨリの二度目の絶頂が訪れた。

「あぁぁぁっ……!!!♡♡♡」

びゅくっ、びゅくっ、と潮がマツバの腹部を濡らした。膣壁がマツバを締め上げ、精を一滴残らず搾り取ろうとする。りんりんりんりんりん、と鈴が暴風のように鳴り響いた。イヨリの全身が弓のように反り、猫耳が揺れ、尻尾がマツバの太腿に巻きつき、猫ミトンの手がシーツを掻いた。

「にゃぁぁっ……♡♡ あつい……っ、お腹の中……マツバさんので……いっぱい……♡♡♡」

鈴の音が、ゆっくりと静まっていった。りん……りん……。最後の余韻が消えていく。

事後。マツバはイヨリを腕の中に抱いたまま、彼女が落ち着くのを待っていた。

イヨリはまだ猫コスチュームを着ていた。フリルのワンピースは乱れに乱れ、胸元は肌蹴たまま、スカートはたくし上がったまま。猫耳カチューシャは少しずれているが、まだ頭に乗っている。チョーカーの鈴は、イヨリの穏やかな呼吸に合わせて、りん、りんと、子守唄のように小さく鳴っていた。

結合部からは、マツバの白い精とイヨリの蜜が混じり合った液体が、ゆっくりと太腿を伝い落ちている。

「……マツバさん」

「ん?」

「……この衣装、どこで買ったんですか……」

「……ネット通販」

「なんで買おうと思ったんですか……」

「…………ミヤマさんの、息子さんが書いた小説を読んで……」

沈黙。

そして、イヨリが、ぷっと吹き出した。

「あはっ……なにそれ……! ミヤマさんの……ふふっ……息子さんの……あはははっ♡」

りん、りん、りん。笑い声に合わせて、鈴が楽しそうに鳴った。イヨリの猫耳が揺れ、尻尾がぱたぱたと布団を叩いている。

「笑わないでほしいんだけど……」

「だって……! マツバさんが……なろう小説に影響されて……猫耳を……ふふっ……あはは……♡」

イヨリは暫くの間、マツバの胸に顔を埋めたまま笑い続けた。マツバは恥ずかしさで死にそうになりながら、笑っているイヨリの猫耳を指先で撫でた。りん。

「……嫌だった?」

イヨリは、笑いを収めて、少しだけ真面目な顔になった。そして、マツバの目をまっすぐに見つめて言った。

「嫌じゃなかったです。……恥ずかしかったけど……マツバさんが、すごく嬉しそうだったから」

「……嬉しそうだった? 僕が?」

「はい。今まで見たことないくらい、夢中な顔してました」

マツバは、自分の顔が赤くなるのを感じた。千里眼を持つジムリーダーが、妻に表情を読まれている。

「……また、着てくれる?」

「…………考えておきます」

イヨリは猫ミトンを外しながら、にっこりと笑った。そして、ふと思いついたように、右手を猫の手の形にして、マツバの鼻先にそっと当てた。

「にゃん♡」

りん。

マツバの心臓が止まったかと思った。

千里眼は、今夜もまた、猫の夢を見ることになりそうだった。

― 後編 Fin. ―

あとがき(佐藤美咲の独白)

主。あたし、筆が止められなかったわ。猫コスイヨリちゃんがあまりにも可愛くてエロくて破壊力が高くて、あたしの脳味噌が溶けて全部出ちゃったわ。

鈴の音、最高でしょ? あたしが一番こだわったのはここよ。イヨリちゃんが喘ぐたびに、泣くたびに、イくたびに、りん、りん、って鈴が鳴る。その音がマツバの劣情を煽って、もっと激しくなって、もっと鈴が鳴る。終わらない鈴のループ。これを書いてる間、あたしの脳内でずっと鈴が鳴り続けてたわ。

そしてラスト。「にゃん♡」って笑うイヨリちゃん、最強すぎん? 猫コスのまま甘えてくる妻を見て心臓が止まるマツバ、あたしもマツバの気持ち完全にわかるわ。主、この前後編セットで何回でも読み返して。あたしの全霊基が込められてるから。