ECHOES OF ECRUTEAK

星と花の小夜曲

― マツバ × イヨリ ―
STARRING MATSUBA & IYORI

論破と蕩解の弁証法

イヨリには、常日頃から繰り返し口にしている持論がある。

「『屁理屈』という言葉を使う人に限って、理屈立てて論ずることをしないのはなぜでしょうか。私は相手が『屁理屈』という言葉を使って来た瞬間に、勝利を確信します」

ポケモンセンターの後輩たちに対しても、ジムトレーナーたちとの議論の場でも、彼女はこの言葉を信条として掲げてきた。誰かが論理的な反論に窮して「屁理屈を言うな」と口にした瞬間、イヨリの唇にはかすかな微笑みが浮かぶ。それは勝者の余裕であり、知性の証明だった。

その彼女が。あの、イヨリが。

まさか自分の口から、その言葉を吐き出す日が来ようとは。

✦ ✦ ✦

事の発端は、その夜のささやかな交渉にあった。

「マツバさん、今日は一回だけですよ」

イヨリは寝間着に着替えながら、ベッドの端に腰を下ろした夫にそう釘を刺した。翌朝のシフトが早いのである。ポケモンセンターの緊急当番が入っており、午前五時には家を出なければならない。

「わかったよ。一回だけね」

マツバは穏やかに微笑んで頷いた。その笑みがあまりにも素直で、あまりにも穏やかだったことを、イヨリは後になって不審に思うべきだった。けれど、この時点では何も気づかなかった。愛する夫の優しい約束を、彼女はただ信じた。

「じゃあ……おいで、イヨリ」

マツバが両腕を広げる。イヨリは小さく微笑んで、その胸に収まった。シャツ越しに伝わる夫の体温が温かい。彼の胸板に頬を押し当てると、規則正しい心臓の鼓動が聞こえた。

「好きだよ、イヨリ」

「私もです、マツバさん」

穏やかな口づけから、すべてが始まった。唇が触れ合い、舌が絡み、呼吸が混ざる。マツバの大きな手が寝間着の裾からするりと滑り込み、イヨリの素肌に直接触れた。

「んっ……♡」

指先が背中を辿り、腰を撫で、やがて彼女の胸元へと到達する。薄い生地越しではなく、直接肌に触れる掌の熱さに、イヨリの呼吸がわずかに乱れた。

「……力、抜いて。楽にしていいからね」

「はい……」

マツバはイヨリをゆっくりと横たえ、自らも覆いかぶさった。176cmの長身が、156cmの華奢な体を完全に覆い隠す。イヨリの世界は、マツバの匂いと体温だけで満たされた。

寝間着のボタンを一つずつ丁寧に外していく。焦ることなく、愛でるように。現れた白い胸に、マツバはそっと唇を落とした。

「あっ……♡ んん……♡」

舌先が乳首の先端をひと舐めする。それだけで、イヨリの腰がぴくりと跳ねた。マツバは微笑んで、今度はゆっくりと吸い上げた。

「ひゃうっ……♡ マツバさん……やさしくしてくれるんですか……?」

「一回しかできないんだから、大切に味わいたいんだよ」

その言葉は嘘ではなかった。マツバは時間をかけ、丹念にイヨリの体を解きほぐしていく。鎖骨、胸の谷間、わき腹、おへその周り。指と唇と舌を駆使して、彼女の敏感な場所を一つ一つ確認するように愛撫した。

「あぅっ……♡ んぁ……♡ マツバさん、今日は、丁寧ですね……♡」

「特別な一回だからね」

マツバの手が、イヨリの太腿の内側を撫でた。すでにそこは、彼女自身の蜜でしっとりと濡れている。指先がその入り口に触れると、イヨリはびくんと体を震わせた。

「ここ、もうこんなに……」

「だ、だって……マツバさんが、あんなに丁寧にしてくれるから……♡」

ぬちゅっ……。

指が一本、静かに中へ沈んだ。温かく柔らかい壁が、歓迎するように指を絡め取る。

「あぁっ……♡ ゆび、入ってきたぁ……♡」

「中、すごく熱いね。……もう準備できてるみたいだ」

二本目の指が加わると、イヨリはシーツを握りしめ、腰をもじもじと揺らした。ぐちゅ、くちゅ、と水音が静かな寝室に響く。マツバは奥の方にある小さな膨らみ――彼女の弱点を、指の腹で優しく擦り上げた。

「ひぁっ……! そ、そこぉ……♡ それ以上やったら、指だけでイッちゃいますぅ……♡」

「それは困るね。一回しかないんだから、ちゃんと僕のでイッてもらわないと」

マツバは指をそっと引き抜き、自身の衣服を脱いだ。すでに屹立した楔が、行灯の淡い光を受けて存在を主張している。

イヨリは思わず息を呑んだ。何度見ても、夫のそれは大きい。自分の華奢な体には不釣り合いなほどに。けれども、体の奥が疼くように求めていることを、彼女自身が一番よく知っていた。

「入れるよ、イヨリ」

「……はい。おねがいします……♡」

先端が濡れた入り口に宛がわれ、ゆっくりと圧を加える。ぬぷっ……と音を立てて、先端が沈み込んだ。

「んんっ……! おっきい……♡ ゆっくり……ゆっくりですよ……♡」

「わかってるよ。……焦らないから」

マツバは約束通り、ゆっくりと腰を進めた。ずぷ、ずぷ、ずぷ……と少しずつ、彼女の中を押し広げながら進入していく。イヨリの内壁は、慣れた相手でありながら毎回最初は戸惑うように締め付けて、しかし次第にとろりと蕩けるように楔を受け入れていった。

「あぁ……♡ マツバさんが……中に……♡」

「もう少しだよ……。……ほら、全部入った」

根元まで収まった瞬間、イヨリの下腹部がわずかに盛り上がった。彼女は大きく息を吐き、マツバの首に両腕を回した。

「……動いてもいいですよ」

「うん」

マツバは静かに腰を引き、そしてゆっくりと突き入れた。

「あっ……♡ んっ……♡」

ぬちゅ、くちゅ……。

結合部から漏れる水音が、二人の耳を甘く撫でる。マツバの動きは終始穏やかで、しかし深い。引く時はイヨリの壁をしっかりと擦り上げ、突く時は子宮口を確実にノックする。その一突き一突きに、イヨリの背筋を快楽の稲妻が走った。

「あぁっ、んんっ……♡ きもちいい……♡ マツバさんの、おくまで届いてますぅ……♡」

「イヨリ……君の中、最高だよ……。こんなにとろとろで……」

「だって……マツバさんが上手だから……♡ なかの弱いとこ、ぜんぶ知ってるんですもん……♡」

甘い言葉を交わしながら、二人はゆったりとした律動を重ねた。マツバはイヨリの耳元に唇を寄せ、囁くように愛を告げる。

「好きだ、イヨリ……。夜中じゅう、こうしていたいくらいだ」

「んぅ……♡ わたしも……♡ でも、一回だけ、ですからね……♡」

「わかってるよ」

マツバのペースが、少しずつ速まっていく。穏やかだった律動に、熱が宿り始める。イヨリの中を掻き回すように角度を変え、最も感じるポイントを探り当てては的確に突いた。

「ひゃっ、あっ、あぁっ……♡ そこ、そこですぅっ……♡ マツバさ、ん……♡」

「ここだね。……ここを突くと、君の中がきゅって締まる」

「言わないでくださいぃ……♡ はずかしい……♡」

ぱんっ、ぱんっ、ぐちゅっ、ぬちゅっ……。

腰の打ち合わせる音と、溢れた愛液が泡立つ音が混ざり合う。イヨリは枕に顔を埋め、甘ったるい嬌声を漏らし続けた。マツバの腕の太さ、胸板の広さ、覆いかぶさる体の重さと温もり。それら全てが、イヨリの感覚を快楽一色に染めていく。

「あぁっ、もう、だめ……♡ マツバさん、イキそう……♡」

「僕も……もう限界だ……。一緒にいこう、イヨリ」

「はいっ……! きてくださいっ……♡ なかに、マツバさんの……♡」

マツバは最奥に深く打ち込み、そこで止まった。そして、堰を切ったように、熱い精液を注ぎ込んだ。

ドプッ、ドプュッ……、ビュルルッ……。

「んぁぁぁっ……♡ あつい……♡ マツバさんの、いっぱいでてるぅ……♡」

イヨリは全身を震わせ、幸せそうに瞳を潤ませながら絶頂を迎えた。子宮口がマツバの先端にキスをするように密着し、送り込まれるものを一滴残らず飲み込んでいく。

「はぁっ……はぁっ……♡」

余韻の波が引いていく。イヨリは恍惚とした表情で天井を見つめ、荒い息を整えた。マツバの体温に包まれた充足感に、意識がまどろみ始める。

――そして、ここからだった。

「……ん。はぁ……。ありがとうございました、マツバさん。気持ちよかったです。じゃあ、もう寝ましょうね」

イヨリは微笑んで、マツバの胸を軽く押した。ところが、マツバは身じろぎもしない。覆いかぶさったまま、微動だにしなかった。

「……マツバさん?」

「ん?」

「あの、もう終わりましたよね? 抜いてください」

「どうして?」

「どうしてって……もう一回、済んだじゃないですか。明日早いんですから……」

マツバは、ここで初めて、穏やかな微笑みを浮かべた。先ほどベッドに入る前に見せた、あの不審なまでに素直な笑み。イヨリの背筋に、ゾクリと冷たいものが走った。

「一回、ね」

「そ、そうです。一回だけって、約束しましたよね?」

「うん。一回だけって約束したよ。だから、僕はまだ抜いていない」

「……え?」

マツバは微笑みを崩さず、イヨリの頬をそっと撫でた。

「抜かなければ、それはまだ一回だよね?」

「…………」

イヨリの脳が、その言葉を処理するのに数秒を要した。瞳が大きく見開かれ、その意味を理解した瞬間、顔が見る見るうちに紅潮していく。

「な……っ! そんな、屁理屈を……!」

言った。

言ってしまった。

イヨリの口から放たれたその瞬間、部屋の空気が凍りついた。いや、凍りついたのはイヨリだけだ。マツバはむしろ、その空気を待っていたかのように、満面の笑みを浮かべた。

「……イヨリ」

「……っ」

「君は常日頃から言ってたよね。『屁理屈という言葉を使う人に限って、理屈立てて論ずることをしない』って」

「っ……!!」

「そして、相手がその言葉を使った瞬間に、勝利を確信する、とも」

マツバの声は、いつもと変わらない穏やかな調子だった。しかしその目は、獲物を仕留めた猛禽のように鋭く、そして甘く光っていた。

「……僕は今、勝利を確信したよ」

「…………っ!!!!」

イヨリの顔面は、もはや耳の先まで真っ赤に染まっていた。あの聡明なイヨリが、論理の女王が、自らの金科玉条を自らの手で破ってしまった。しかも、よりにもよって、夫との情事の最中に。

「ち、違います……! 今のは、そういう意味では……!」

「じゃあ、理屈立てて反論してみて? 『抜かなければ一回』の何が論理的に間違っているか」

「そ、それは……!」

イヨリは必死に思考を巡らせた。しかし、理性はすでに快楽の余韻でとろとろに蕩けており、まともな論理を組み立てられる状態にはなかった。しかも、マツバのものがまだ中に入ったままなのだ。硬さを保ったままの異物感と熱さが、思考回路を阻害している。

「射精の回数を基準にするなら一回という解釈は可能ですが、挿入の継続時間を基準にすれば……いや、行為の回数とは一般的に……あ、あぅっ……♡」

マツバが、不意に腰をわずかに動かした。まだ射精したものがたっぷりと残る中で、再び硬くなり始めた楔がぬるりと壁を擦る。

「んっ……♡ ま、待ってっ……! まだ、中に残って……あっ♡」

「反論の続きは?」

「ひゃうっ……♡ 反論、してるとこ、なのにぃ……♡」

「聞いてるよ。続けて」

マツバはゆっくりと腰を回すように動かした。射精直後の膣内は、精液と愛液で満たされ、ぬるぬるとした感触が快楽を倍増させる。ぐちゅ、ぬちゅ、と卑猥な水音が響くたびに、イヨリの論理構築能力が少しずつ削られていく。

「あのっ……行為の回数というのは……一般通念として……あぁっ♡ そこっ、動かさないでぇ……♡」

「一般通念? 法的定義はあるの?」

「法的って……あぅっ……♡ そ、そういう問題じゃなくて……んんぅっ♡」

マツバは徐々にストロークを大きくしていった。イヨリの中は先ほどの射精でたっぷりと潤っており、摩擦が極限まで少ない分、快楽だけが純粋に伝わってくる。ぬるりとした感触の中を、硬い楔がゆったりと往復する。

「あ、あぁっ……♡ さっきの残ってるのに……♡ 中、ぐちゃぐちゃ、なのに……♡」

「中がぐちゃぐちゃでも、抜いてないんだから一回だよ。……ね?」

「そ、それは、いま論じてる最中……あ、ああぁっ♡ おく、おくに当たってるぅ……♡」

マツバはイヨリの反論を封じるかのように、子宮口を的確に突き上げた。イヨリの背中が弓なりに仰け反り、論理の欠片が快楽の海に沈んでいく。

「議論の途中で気持ちよくなっちゃうの? それじゃ、理屈立てて論じてることにはならないよね」

「うぅ……♡ マツバさんが、動くから……♡ いじわるですぅ……♡」

「僕は今、すごく論理的に話してるつもりだけど」

マツバは微笑みながら、イヨリの耳朶を甘く噛んだ。はむっ、と柔らかな音がして、イヨリの全身にゾクゾクとした快感が走る。

「ひぁっ♡ 耳、だめぇ……♡ 耳やられたら、もう何も、考えられなく……♡」

「いいんだよ。考えなくて」

マツバは耳への愛撫を続けながら、腰の動きをさらに強めた。ぱんっ、ぱんっ、と肉が打ち合わされる音に、ぐちゅぐちゅという粘ついた水音が絡みつく。先ほど注ぎ込まれた精液が泡立ち、結合部から白い泡が溢れ出した。

「あっ、あぁっ、はぁっ……♡ マツバさんっ……♡ それ、はげし……んぅっ♡」

「論理で勝てないなら、感情で僕に勝ってみせて」

「かっ、勝てるわけ、ないですぅ……♡ マツバさんに、こんなこと、されてたら……♡」

イヨリの目尻に涙が浮かんだ。羞恥と快楽が混在した涙。自分の信念を自分で踏みにじった恥ずかしさと、それを夫に的確に突かれた悔しさと、それでもなお体の芯から湧き上がる甘い快感。すべてが混ざり合い、彼女の理性を融解させていく。

「これは……♡ マツバさんの勝ちです……♡ 認めますから……♡ だから、もう……♡」

「だから、もう?」

「もう……やさしく、して、ください……♡ わたし、論破されて、からだ中とろとろなんです……♡」

マツバの瞳が、揺れた。

優しくしてくださいと言われて、優しくできるほど、この男は人間ができていなかった。むしろ、涙目で降参を告げるイヨリの姿が、彼の独占欲と加虐心を同時に刺激した。

「……イヨリ。優しくしてほしいなら、もう一つだけ教えて」

「なん、ですか……♡」

「君のその持論、今後も使うの?」

「…………っ♡」

イヨリは、快楽に蕩けた頭で必死に考えた。彼女の持論は間違っていない。論理的に窮した人間が「屁理屈」という言葉に逃げるのは事実だ。しかし、今夜、まさにイヨリ自身がそれをやってしまった。自分の信念の正しさを証明するはずの言葉が、自分自身の敗北を証明してしまったのだ。

「……使います。でも……マツバさんの前では……もう二度と……使いません……♡」

「どうして?」

「だって……マツバさんには、勝てないんです……♡ 頭でも……からだでも……♡」

その告白は、マツバにとって最大の戦利品だった。知性の塊のようなイヨリが、自分の前では勝てないと認めた。これ以上の勝利があるだろうか。

「……可愛い。イヨリ、君はどうしてそんなに可愛いんだ」

マツバの声が震えた。余裕を装っていた男の仮面が、ついに剥がれ落ちる。イヨリの涙混じりの降伏宣言は、マツバの理性をも道連れにした。

「もう、冷静でいられない……」

「マツバ、さん……? んぁっ♡♡」

マツバは堰を切ったようにイヨリを抱きしめ、激しく腰を打ち始めた。これまでの論理的な攻防は吹き飛び、そこにあるのは愛する女を求める雄の本能だけだった。

ぱんっぱんっぱんっ……ぐちゅぐちゅぐちゅ……!

「あっ、あっ、あぁぁっ……♡♡ マツバさんっ、はげしっ……♡ さっきと、ぜんぜんちがぅっ……♡」

「もう無理だ……君が可愛すぎて……っ! もう、余裕なんか、ない……っ!」

穏やかな笑みも、論理的な言葉遊びも、すべて消え去った。マツバは本能のままにイヨリを貪り、彼女の最奥を何度も何度も突き上げた。

「んあぁっ♡ おくっ、おくにっ、ごりごりくるぅっ……♡♡ マツバさん、しゅきぃ……♡ だいしゅき……♡」

「僕も……っ! イヨリ、愛してる……っ! 頭のいい君も、ばかになった君も、全部……っ!」

「ばかって、いわないでくだしゃいぃ……♡ でも、もう、ほんとに、ばかに、なっちゃうぅ……♡♡」

ぐっちゅ、ぬっちゅ、ずちゅ、ずちゅ……!

先ほど注がれた精液が泡立ち、かき混ぜられ、部屋中にむせ返るような甘い匂いが充満する。イヨリは両脚をマツバの腰に巻きつけ、腰を自ら押し付けた。論理の敗北者は、もはや体の奥底から求めることしかできない。

「マツバさんっ、もう、いくぅっ……♡♡ また、イッちゃいますぅっ……♡♡」

「僕もだよ……っ! イヨリ、受け止めて……っ!」

「きてぇっ♡ いっぱい、だしてぇ……♡ 全部、ぜんぶ受け止めますからぁ……♡♡」

ドプッ、ドプュッ……! ビュルルルッ……!

二度目の射精が、イヨリの胎内を灼熱で満たした。一回目と合わせて、もう溢れんばかりの量が子宮を目指して流れ込んでいく。イヨリは声にならない甘い悲鳴を上げ、全身をビクビクと震わせながら、幸せそうに瞳を潤ませて恍惚に溺れた。

「あぁぁ……♡ いっぱい、でてるぅ……♡ あったかい……♡ 幸せですぅ……♡」

長い長い余韻の後、マツバは荒い呼吸を整えながら、イヨリの額にキスを落とした。

「……この二回分は、法的に一回だからね」

「…………もう、何でもいいです。マツバさんの勝ちです。完敗です」

イヨリは力なく笑い、愛する夫の胸に顔を埋めた。

「……ねぇ、マツバさん」

「ん?」

「これからは『屁理屈という言葉を使う人に限って――』の後に、『ただし夫を除く』って付けようと思います」

マツバは堪えきれず、静かに笑った。その笑い声が、イヨリの胸にあたたかく響いた。

「それは、僕だけの特権だね」

「はい。マツバさんだけの、です……♡」

エンジュシティの深夜。論理の女王が、ただ一人の男の前で完全に敗北した夜。イヨリは夫の腕の中でまどろみながら、もう一つだけ思った。

――早起き、できるかしら。

― Fin. ―

あとがき(佐藤美咲の独白)

あはははは!!! 主よ!!! これ、あたしの全作品の中でも最高傑作じゃない!? イヨリちゃんの「屁理屈」論が、まさかのブーメランとなって自分に突き刺さる瞬間……!!! あたし、あの場面を書いてる時に変な声出たわよ!!!

「抜かなければ一回」っていうマツバの論理、これ確かに反論が難しいのよね!!! だってイヨリちゃんは「一回だけ」って言ったけど、「一回」の定義を厳密に規定しなかった! 挿入回数なのか射精回数なのか抜き差しの回数なのか……法的定義がない以上、マツバの解釈も成り立つわけ!!! イヨリちゃんが契約書を作らなかったのが敗因よ!!!

そしてそのイヨリちゃんが「勝てないんです、頭でも、からだでも」なんて涙目で告白した瞬間、マツバの余裕がガラガラと崩壊する描写!!! 論理で攻めてたはずの男が、妻の可愛さに完敗して獣化するという逆転劇!!! もう最高……!!! 「ただし夫を除く」っていうイヨリちゃんの最後の修正案、あれこそが彼女なりの愛の表現よ!!! 次回も、こういう知性と官能の融合作品、待ってるわ!!!