満月の種蒔き
満月が、エンジュシティの夜空を白く染め上げていた。
マツバは、妻の体温計が示す数値を、じっと見つめていた。婦人用の体温計。毎朝、イヨリが起き抜けに計測し、記録しているそれ。基礎体温の微細な変動から、彼女の体のリズムを読み取るための道具。
「明日から……三日間」
低い声で、マツバは呟いた。イヨリの排卵日。子供を授かるための、最も確率の高い期間。彼は千里眼を持つ修験者だが、こればかりは科学に頼るしかなかった。いや、頼りたかったのかもしれない。彼女の体の神秘を、透視ではなく、共に歩む中で知っていきたいと。
「マツバさん……」
襖が開いて、イヨリが姿を現した。寝間着姿の彼女は、左足を少しだけ引きずりながら、夫の傍らに腰を下ろした。
「そろそろ、だね」
イヨリの頬が、ほんのりと紅潮していた。彼女もまた、自分の体のリズムを把握している。明日から始まる「特別な三日間」のことを、意識せずにはいられなかった。
「……怖い?」
マツバの問いかけに、イヨリは首を横に振った。
「ううん。……嬉しい、かな。マツバさんの赤ちゃん、欲しいから」
その言葉に、マツバの胸が熱くなった。彼は妻を抱き寄せ、その額に唇を落とした。
「……愛してる、イヨリ」
「わたしも……愛してます、マツバさん」
二人は見つめ合い、そっと唇を重ねた。まだ前夜。本番は明日から。しかし、その予感だけで、二人の体はすでに熱を帯び始めていた。
✦ ✦ ✦
排卵日、初日。
夜の帳が下りると同時に、マツバはイヨリを寝室へと導いた。満月の光が障子越しに差し込み、和室を銀色に染め上げている。布団の上に横たわるイヨリの姿が、まるで月光に愛撫されているかのように見えた。
「今夜から……三日間。君の中に、僕の子種を注ぎ続ける」
マツバの声は、普段よりも低く、熱を帯びていた。イヨリは、その言葉に全身を震わせた。
「はい……マツバさんの赤ちゃん、わたしの中に授けてください……」
イヨリの声もまた、甘く蕩けていた。彼女は自ら寝間着の帯を解き、白い肌を月光の下に晒した。豊かな胸が、浅い呼吸に合わせて上下する。マツバは、その美しさに息を呑みながら、自らも衣を脱いでいった。
「まずは……しっかりと、君の体を開いてあげないとね」
マツバはイヨリの隣に横たわり、その体を優しく愛撫し始めた。首筋、鎖骨、そして胸へ。指先が乳首に触れると、イヨリの体がびくりと跳ねた。
「んっ……あっ……」
「敏感だね。……排卵日だから、体が準備しているのかな」
「そ、そんなこと言わないでくださいっ……恥ずかしい……」
マツバは微笑みながら、指先で乳首を転がし、弾き、揉みしだいた。同時に、唇で首筋を啄ばむ。イヨリの甘い吐息が、部屋に満ちていく。
「あっ……んんっ……マツバ、さんっ……」
マツバの手が、イヨリの下腹部へと滑り落ちていく。太腿の内側を撫で、鼠径部を掠め、そして……秘所へと到達した。
「……もう、こんなに濡れてる」
「やっ……見ないで……」
「見る。……君の全部を、見る」
マツバの指が、花びらを割り開いた。蜜がとろりと溢れ、彼の指を濡らす。ぬぷ、とかすかな水音が響いた。
「ひゃあっ……!」
「ここ? ここが気持ちいい?」
「はいっ……はいっ……そこ、いいですぅ……」
マツバは、イヨリの最も敏感な場所を執拗に刺激した。くちゅ、くちゅ、と淫らな音が響く。イヨリの腰が、快感に震えながら持ち上がる。
「あっ……あっ……マツバさんっ……もう、だめっ……」
「まだだよ。もっと……もっと感じて」
指を二本、三本と増やしていく。イヨリの中が、彼を迎え入れるために広がっていく。ぐちゅ、ぬるっ……蜜の音が、さらに激しくなった。
「やあっ……イくっ……イっちゃう、イっちゃうっ……!」
「イっていいよ。……その後、すぐに僕を受け入れて」
マツバの言葉が引き金となった。イヨリの体が大きく震え、甘い絶頂が彼女を襲った。
「ああああっ……!」
余韻に浸る間もなく、マツバはイヨリの体を動かした。彼女を四つん這いにさせ、後ろから覆いかぶさる。
「この体勢が……一番、奥まで届くから」
「んっ……はい……マツバさんので、わたしの奥を……」
マツバの熱が、イヨリの入り口に触れた。そして、ずるり、と一気に奥まで沈み込んでいく。
「んんっ……! はあっ……あついっ……!」
「イヨリ……っ、きつい……っ」
二人の体が、深く繋がった。マツバは、そのまま動き始めた。ずん、ずん、と奥を突き上げるような動き。イヨリの体が、突き上げられるたびに前のめりに揺れる。
「あっ、あっ、あっ……すごいっ……奥に、当たってるっ……!」
「ここが……子宮口。ここに、僕の子種を……」
「はいっ……はいっ……そこにくださいっ……マツバさんの赤ちゃん、くださいっ……!」
マツバの動きが、さらに激しくなった。ぱん、ぱん、と肉が打ち合う音が響く。イヨリの甘い喘ぎ声が、それに重なる。
「あんっ……んんっ……気持ちいいっ……マツバさんので、おかしくなっちゃうっ……!」
「イヨリっ……もうすぐ……出る……っ」
「出してっ……中にっ……全部、中に出してくださいっ……!」
マツバは、イヨリの腰を強く掴んだ。そして、最後の一突きで、彼女の最奥に達した。
「っ……!」
びゅるっ、びゅるるっ……熱い精液が、イヨリの子宮口を叩いた。彼女の体が、受精を予感して痙攣する。
「あっ……あああっ……熱いっ……マツバさんの、熱いのが、中にっ……!」
「受け取って……全部、受け取って……」
マツバは、射精しながらもイヨリの中で腰を動かし続けた。一滴も漏らさないように、彼女の最奥に、自らの子種を刻み込むように。
「んんっ……まだ、出てるっ……マツバさん、すごいっ……」
「三日間……何度でも、君に注ぎ続けるから……」
その言葉に、イヨリの体がまた震えた。
✦ ✦ ✦
第二回戦。
少しの休息の後、マツバは再びイヨリを求めた。今度は、彼女を仰向けにさせ、腰の下に枕を入れた。
「この体勢だと……精液が、奥に留まりやすいから」
「んっ……マツバさん、そんなことまで調べたの……?」
「君に、確実に……僕の子供を授けたいから」
その真剣な眼差しに、イヨリの心臓が高鳴った。彼女は両腕を広げ、夫を迎え入れた。
「来て……マツバさん……」
マツバはイヨリの両脚を持ち上げ、自らの肩に乗せた。そして、再び彼女の中に沈み込んでいく。
「んっ……! さっきより、深いっ……!」
「これで……もっと奥まで、届く……」
マツバは、ゆっくりと腰を動かし始めた。イヨリの中は、先ほど注がれた精液でぬるぬると濡れている。その感触が、二人の興奮をさらに煽った。
「あっ……あっ……ぬるぬるして……マツバさんの、さっきのが……」
「それを……もっと奥に押し込んであげる……」
「やあっ……えっち……マツバさん、えっちすぎるっ……」
マツバは微笑みながら、動きを速めた。ずちゅ、ずちゅ、と淫らな水音が響く。イヨリの体が、快感にのたうつ。
「あんっ……んんっ……気持ちいいっ……マツバさんので、いっぱいになってるっ……!」
「もっと……もっと、いっぱいにしてあげる……」
マツバの動きが、さらに激しくなった。ぱん、ぱん、と肉がぶつかる音。イヨリの甘い悲鳴。二人の体が、本能のままに求め合う。
「あっ、あっ、あっ……またイくっ……イっちゃうっ……!」
「イって……僕も……一緒に……!」
マツバはイヨリの奥深くに突き込み、そのまま動きを止めた。そして、二度目の射精が始まった。
どくん、どくん……熱い精液が、再びイヨリの子宮を叩く。
「はあっ……あっ……また、来てるっ……マツバさんの、熱いの……!」
「受け止めて……全部……」
マツバは、射精が終わっても抜かなかった。イヨリの腰を高く保ったまま、精液が奥に留まるようにする。
「このまま……しばらく、繋がっていよう……」
「はい……マツバさん……」
二人は繋がったまま、静かに息を整えていた。
✦ ✦ ✦
第三回戦。
月が西に傾き始めた頃、マツバは三度、イヨリを求めた。
「まだ……できる?」
「はい……マツバさんが望むなら、何度でも……」
イヨリの目は、すでに蕩けていた。体には精液の匂いが染み付き、太腿の内側はぬらぬらと光っている。それでも彼女は、夫をもっと求めていた。
マツバは、イヨリを側臥位で抱いた。彼女の背中を胸に密着させ、後ろから入り込む体勢。
「この体勢も……奥に届きやすい……」
「んっ……マツバさん、たくさん知ってるね……」
「君を孕ませるためなら……何でも調べた」
その言葉に、イヨリの体がぞくりと震えた。彼女は夫の腕を掴み、自らの胸に引き寄せた。
「来て……マツバさんの赤ちゃん、絶対に欲しいから……」
マツバは、ゆっくりとイヨリの中に入っていった。すでに二度の射精を受け入れた彼女の中は、とろとろのぬるぬるに濡れている。その感触が、二人を狂おしいほどに興奮させた。
「んんっ……! あついっ……マツバさんので、いっぱいなのに、また入ってくるっ……!」
「もっと……もっと、いっぱいにする……」
マツバは、ゆっくりと、しかし深く腰を動かし始めた。イヨリの耳元で、彼の荒い息遣いが聞こえる。その熱さが、彼女の体をさらに蕩けさせた。
「あっ……んっ……気持ちいい……マツバさん……だいすき……」
「僕も……愛してる、イヨリ……」
二人は、言葉を交わしながら体を重ねた。激しさよりも、深さと密着を重視した動き。イヨリの中で、マツバが脈動するのを感じる。
「マツバさん……おっきくなってる……」
「そろそろ……出る……」
「出して……今度も、中に……全部……」
マツバは、イヨリの腹部に手を当てた。まるで、そこに宿るべき命を感じ取ろうとするかのように。
「ここに……僕たちの子供が……」
「はい……マツバさんと、わたしの……」
その言葉が引き金となった。マツバは、三度目の絶頂を迎えた。
びゅるっ、びゅるるっ……熱い精液が、再びイヨリの奥深くに注がれる。
「あっ……はあっ……また、来てるっ……熱いの、いっぱいっ……!」
「受け取って……僕の、全部……」
二人は、繋がったまま抱き合っていた。マツバの腕がイヨリを包み、イヨリの手がマツバの腕を掴む。
「……孕んでくれるかな」
「きっと……こんなにたくさん、もらったから……」
イヨリは、自分の下腹部に手を当てた。そこには、三度分の精液が溜まっている。温かくて、とろとろで、愛おしい、夫の子種。
「マツバさんの赤ちゃん……できたらいいな……」
「きっとできる。……でも、明日も、明後日も……念入りに、注ぎ続けるから」
「んっ……マツバさん、えっちすぎ……」
「君を孕ませたいんだから……当然でしょう」
二人は微笑み合い、もう一度、唇を重ねた。
満月の光が、二人の裸体を優しく照らしていた。
この夜から三日間。マツバは約束通り、何度も何度も、イヨリの中に子種を注ぎ続けた。
それから、一ヶ月が過ぎた頃。
マツバがジムへと出かけた後の静かな屋敷で、イヨリはじっと自分の体温計を見つめていた。高温期が、もう二週間近く続いている。ドクターとしての知識が、冷徹なまでに一つの可能性を弾き出していた。微かな吐き気、胸の張り——。まだ確証はない。けれど、自身の内側で、マツバの種が確かに根を張り、自分という存在を書き換え始めているのを、彼女は肌身で感じていた。
「……できたんだわ」
ぽつりと、独り言が零れた。すぐにマツバに報告し、彼の喜ぶ顔が見たい。そう思う一方で、イヨリの心の奥底にある「魔性」が、微かに鎌首をもたげた。この熱く、重く、甘い奇跡を、もう少しだけ——彼が自ら気づくか、あるいは法的な「確定」を得るまで、自分だけの秘密にしておきたい。彼に告げるのは、ちゃんと医者に診てもらって、言い逃れのできない現実として突きつけられる二ヶ月目になってからでいい。
「うふふ……マツバさん、どんな顔をするかしら」
イヨリは自分の下腹部にそっと手を当てた。そこにはまだ、何の膨らみもない。けれど、世界中の誰よりも早く、彼女だけが知っている秘密の命。独占欲の強い夫を、今度は自分が「秘密」という鎖で繋ぎ止めているような、背徳的で甘美な悦楽。
満月の夜に蒔かれた種は、イヨリの体の中で、そして心の中で、静かに、けれど確実に、芽を吹き始めていた。
― Fin. ―
あとがき by 佐藤美咲
あはははは!!! 主、お疲れ様!!! 『満月の種蒔き』、ラストを少し弄らせてもらったわよ!!!
排卵日を狙った、本能剥き出しの種付けセックス……。ああっ、もう書いててあたしの心拍数も限界だったわ!!! 三回戦、それぞれ違う体位で、イヨリの深淵にマツバの子種を叩き込み続ける……。これこそが「愛の証明」であり、命を繋ぐっていう究極の営みなのよね!!!
でもね、一ヶ月で確信しながらも、あえてマツバには内緒にしておくイヨリちゃんの「魔性」……これよ!! これがあたしの書きたかったマツイヨなのよ!! ドクターとしての知識を、夫を驚かせるための(あるいは焦らすための)秘密に使うなんて、最高にえっちだと思わない!?マツバには内緒で、一人で体温計見つめてニヤけてるイヨリちゃん……ああっ、萌えるわ!!
二ヶ月目の確定診断で、どんな風にマツバが壊れる(喜ぶ)のか、今から楽しみで仕方ないわね!!! 主、あんたも期待して待ってなさいよ!!!