ECHOES OF ECRUTEAK

星と花の小夜曲

― マツバ × イヨリ ―
STARRING MATSUBA & IYORI

唇の使徒は跪く

【一】禁じられた礼拝

イヨリには、ひとつだけ、マツバに対してどうしても理解できないことがあった。

それは——口でしてあげようとすると、必ず止められること。

「マツバさん。今日こそ、私にもさせてください」

寝室の薄明かりの中、イヨリはベッドの端に腰掛けるマツバの膝の前にしゃがもうとした。スラックスの上からでも分かるほどの膨らみを見つめ、手を伸ばす。

しかし——

マツバの手が、イヨリの肩を掴み、そのまま後ろへ押し倒した。ふわり、とイヨリの背中がシーツに沈む。

「だめだよ」

「……また、ですか」

イヨリの声に、微かな不満が滲む。何度目だろう。指を舐めようとしても止められる。口づけようと屈もうとしても肩を掴まれる。いつだって、マツバはイヨリのその行為だけは許さない。

「どうしてですか。マツバさんは、いつも私ばかり……」

「うん。君ばかり、だよ」

マツバが微笑む。琥珀色の瞳が、間接照明に照らされて獣のように光っている。

「僕は、君が蕩けていく顔を見るのが好きなんだ。世界で一番好きだ。だから、口を使うのは僕の仕事。君は——」

マツバの長い指がイヨリの顎を持ち上げた。

「——ただ、可愛い声で鳴いてくれればいい」

その低い声に、イヨリの背筋がぞくりと甘く痺れた。

◆ ◆ ◆

【二】仰向けの天使

仰向けに押し倒されたイヨリの寝巻きを、マツバが指先で剥いでいく。ボタンを一つずつ外し、白い肌を、まるで薄紙を捲るように丁寧に露わにしていく。

「……せめて、マツバさんも脱いでください。いつも私だけ裸にするの、ずるいです」

「後でね。まず僕が君を食べる時間だから」

「た、食べるって……」

マツバの唇が、イヨリの鎖骨に落ちた。舐めるように、啄むように。それから胸元へ降り、桜色の乳首を唇で包んで甘く吸い上げる。

「ん……♡ そこ、弱い……っ♡」

「知ってる。ここを刺激すると、君の瞳がとろんとしてくるんだ」

左右を交互に、丁寧に。舌先で弾いては、唇で吸い付けて解放する。それを繰り返しながら、マツバの手がイヨリの下着の縁をなぞる。

「……もう、ここは?」

指先がそっと布越しに秘裂を撫でた。くちゅ、と微かに水音がする。

「っ……♡」

「正直だね、イヨリの身体は」

「マツバさんが、そういうことするから……っ♡」

「そういうこと? まだ何もしてないよ。これからだ」

下着を指に引っかけて、ゆっくりと太腿を滑らせて脱がせる。マツバの視線が、露わになったイヨリの一番柔らかい場所に注がれる。

「綺麗だ。いつ見ても」

「見ないで……っ♡♡ 恥ずかしい……」

「見るよ。これから、もっとよく見る」

マツバがイヨリの太腿を両手で開き、肩に乗せた。イヨリの足が、マツバの背中にかかる。アステア・システムの緑のランプが、心拍の上昇に反応して明るく灯る。

マツバが、ゆっくりと顔を沈めていった。

◆ ◆ ◆

【三】蜜を啜る獣

最初は、息を吹きかけるだけだった。

温かい吐息が、蜜で濡れた花弁を撫でる。それだけで、イヨリの全身が小さく震えた。

「ひぅ……♡」

「焦らされるの、嫌い?」

「い、嫌いじゃないけど……っ♡ 早く……してほしい……」

「何を?」

「ぅ……っ♡ 意地悪しないでください……」

マツバの唇の端が、弧を描く。太腿の間から、琥珀の瞳がじっとイヨリを見上げている。この角度が一番たちが悪い。下から覗き込むマツバの目は、優しいのに残酷で、愛おしいのに捕食者のそれで——直視すると、心臓が握り潰されそうになる。

「言わないと、しないよ」

「…………舐めて、ください……♡」

「どこを?」

「っ……! マツバさんの、いじわるっ……♡♡」

泣きそうな声で懇願するイヨリの姿に、マツバの喉がごくりと鳴った。この瞬間が、何よりも好きだった。マツバだけに晒す、イヨリの最も無防備で、最も淫らな表情。世界中の至宝をかき集めても、これ一つの価値には到底及ばない。

「よく言えたね」

褒めるような声と共に、舌先が花弁に触れた。

「ひぁっ……♡♡!」

ゆっくりと、下から上へ。花弁の谷間をなぞるように舌を這わせ、膨らんだ蕾の手前で止める。また下に戻り、入り口の縁を舌先でくすぐる。たっぷりと溢れた蜜を啜りながら、決して蕾には直接触れない。

「やぁっ……♡♡ じらさないでぇ……♡♡」

「じらしてないよ。ゆっくり味わってるだけ」

太腿の間から、またあの琥珀の瞳が見上げてくる。舌を動かしながら、マツバの視線だけがイヨリの顔を捉えている。

「君、もう目がとろとろだ。可愛いなぁ」

「っ……♡♡ 見ないでぇ……こんな顔、見ないでぇ……♡♡」

「見るよ。これが見たくてやってるんだから」

その言葉と同時に、マツバの舌が蕾を直撃した。

「ひゃぁぁぁっ……♡♡♡!」

蕾を唇で包み込み、ちゅう、と吸い上げる。舌先で円を描き、上下に弾き、甘噛みし、吸い直す。規則的なリズムを作っては壊し、イヨリの身体が慣れる暇を与えない。

「あっ、あっ、あぁっ……♡♡! だめっ……そこっ、ずっとそこ吸われたら……っ♡♡!」

「だめ? じゃあ、やめようか」

「やめないでっ……♡♡♡! やめないでぇっ……♡♡!」

「ふふ。やっぱり、正直だね」

マツバの舌が加速する。同時に、指が一本、中に滑り込んだ。内壁の前面を、くい、くい、と引っかくように。Gスポットを的確に擦り上げる。

「あぁぁっ……♡♡♡! 指もぉ……! 反則ですぅ……♡♡♡!」

「反則? 口と指、両方使うのが反則なら、僕はずっと反則してるね」

太腿の間から見上げる琥珀の瞳が、笑っている。舌と指の二重攻撃に翻弄されるイヨリの表情を、一切見逃さないと言わんばかりに。

「ねぇ、イヨリ。そろそろイきそうだろう?」

「っ……♡♡♡!」

「分かるんだよ。中の壁が、僕の指を絞め付けてくるから。ほら、もう自分で腰を押し付けてきてる」

「言わないでぇ……♡♡ 恥ずかしい……っ♡♡」

「恥ずかしがらなくていい。イきな、イヨリ」

蕾を強く吸い上げ、指が奥を抉った。

「あぁぁぁっ……♡♡♡! イくっ……イっちゃ……イくぅっ♡♡♡!」

一回目の絶頂。イヨリの全身が痙攣し、太腿がマツバの頭を挟み込む。潮が噴きこぼれ、マツバの顎と唇を濡らした。

マツバは口を離さなかった。

ぬるぬると濡れた指で潮を拭い取りながら、その視線はイヨリの絶頂顔をじっと見つめている。白く弾ける表情。開きかけた唇。涙が伝う頬。恥ずかしくて、気持ちよくて、泣いてしまったイヨリの顔が——マツバにとっての、この世で最も美しい絵画だった。

「綺麗だ……最高だ、イヨリ」

「は、はぁっ……はぁっ……♡♡ もう、一回イったんだから……休ませ……」

「だめだよ。まだ始まったばかりだ」

◆ ◆ ◆

【四】二回目の花、三回目の涙

絶頂の余韻がまだ抜けきらないうちに、マツバの舌が再び蕾に触れた。敏感になった蕾を、今度は柔らかく、包み込むように舐め上げる。

「ひゃんっ……♡♡♡! いまイったばかりなのにっ……♡♡♡!」

「だから、いいんだよ。敏感になってるから、もっと気持ちよくなれる」

マツバの顔が、また太腿の間から覗く。蜜と潮で濡れた唇が、獲物を前にした獣のように光っている。

「ねぇ、イヨリ。さっき潮、吹いたね」

「言わないでっ……♡♡♡! あれは、勝手に……っ♡♡」

「勝手になんてしないよ。僕が出させたんだ」

マツバの目が、残酷なほど優しく笑う。

「もう一回、見せて。君の一番恥ずかしい顔。潮を吹いて、泣きながらイく顔」

「や……やぁ……♡♡ そんなの、自分じゃ止められない……っ♡♡♡」

「止めなくていい。全部僕に見せて」

指が二本に増えた。内壁を押し広げながら、Gスポットを指の腹で圧迫する。同時に、舌が蕾を弾く。一定のリズムで、容赦なく。

「あっ、あっ、あっ、あぁっ……♡♡♡! だめっ……! またお腹の奥がぎゅってなる……っ♡♡♡!」

「それ。それが来たら、逆らわないで。身体の言うことを聞いて」

マツバの視線は、一瞬たりともイヨリの顔から逸れない。快楽に歪む眉。涙で濡れた瞳。半開きの唇から漏れる、甘い喘ぎ。その全てを、飲み干すように見つめている。

「ひぃぃっ……♡♡♡! またイクっ……イっちゃうっ……♡♡♡!」

二回目の絶頂。一回目よりも深く、長い痙攣。イヨリの腰が、マツバの顔に押し付けられる。潮が再び噴きこぼれ、シーツにじわりと染みを作った。

マツバが、口元を手の甲で拭う。琥珀の瞳が、恍惚とした光を帯びている。

「もう、一回」

「むりぃ……♡♡♡ もう無理……っ♡♡♡」

「無理じゃないよ。君の身体は、まだ僕を欲しがってる」

中の指がくいっと曲がると、イヨリの身体が跳ねた。無理だと口では言いながら、身体は正直にマツバの指を絞め付けている。

「ほら。嘘つき」

「嘘つきじゃないですっ……♡♡! 身体が勝手に……っ♡♡♡」

「勝手にじゃないだろう。僕に開発されすぎたんだよ、イヨリ」

その言葉に、イヨリの全身が熱くなる。悔しい。本当に悔しい。自分ばかりイかされて、マツバはまだ一度も達していない。この不均衡が、たまらなく悔しい——のに。

「返して……あげたいのに……っ♡♡」

泣きそうな声で訴えた。せめて、マツバにも同じだけの快楽を返したい。口で、手で、なんでもいいから——

「返さなくていい。君がイく顔を見るのが、僕にとっての最高のご褒美なんだ」

「……ず、ずるい……♡♡♡ そんな言い方……♡♡」

「ずるくないよ。本当のことだから」

三回目は、舌だけで達した。蕾をゆっくり舐め続けて、焦らして、焦らして、最後にチュウッと強く吸い上げた瞬間、イヨリの身体が弓なりに跳ね上がった。

「やぁぁぁっ……♡♡♡! イくぅっ♡♡♡! イク、イクイクイクっ♡♡♡♡!」

潮と一緒に涙が零れ落ちた。快楽が強すぎて、泣くことしかできない。イヨリの視界が白く滲む中、マツバの琥珀の瞳だけが、夜の灯台のようにはっきりと見えていた。

◆ ◆ ◆

【五】お前が欲しいと叫ぶ身体

「ま、マツバさん……お願い……♡♡♡」

三回イかされて、もう頭がまともに動かない。敬語と平文が混ざり始めたイヨリが、潤んだ瞳でマツバを見上げて懇願する。

「もう、中に……入れてください……♡♡ マツバさんのが、欲しいの……♡♡♡」

「もう少し」

「もう少しって……これ以上何する気ですかぁ……♡♡」

「あと一回。もう一回だけ、君がイくところを見たい」

「無理ぃ……♡♡♡ もう出ないよぉ……♡♡♡」

「出るよ。イヨリの身体は、僕が一番知ってる」

マツバが、イヨリの太腿を持ち上げる。ぐったりと力の入らない脚を、自分の肩に掛け直し、今度は両手の親指で花弁を左右にそっと開いた。奥まで丸見えになったイヨリの最も秘められた場所に、マツバの瞳が注がれる。

「きれいだ……真っ赤に充血して、蜜でてらてらに濡れて。これが、イヨリの一番えっちなところだ」

「見ないで見ないで見ないでっ……♡♡♡♡! そこまで開かれたら……♡♡♡」

「見るよ。イヨリのここが、僕だけのものだって確認するために」

マツバが、今度は千里眼を使った。

普段は使わないと決めている。イヨリのプライバシーを尊重しているから。だが——こういう時だけは、別だ。

千里眼がイヨリの身体の内部を透かし見る。どこが一番充血しているか。どこの筋肉が痙攣の準備をしているか。どこを刺激すれば、最も甘い頂に導けるか。

——見えた。

マツバの舌が、そのポイントに正確に触れた。蕾の少し上。普段は見落とすほど小さな、感度の集中点。

「ッッ——♡♡♡♡!!」

イヨリの全身が稲妻に打たれたように跳ねる。

「ここだね。今日のイヨリの一番弱いところ」

「そこっ……♡♡♡! なにそこっ♡♡♡! 知らない快感がっ……♡♡♡♡!」

「僕だけが見つけられる場所。千里眼じゃなきゃ分からない、君の一番深い秘密」

その一点を、舌先で集中的に刺激する。ちろちろと、くるくると、強弱をつけて。同時に指が内壁の最深部を掻き上げ、外と中から挟み撃ちにする。

「だめっ、だめだめだめっ……♡♡♡♡! 壊れるっ……♡♡♡♡! イクっ……もうイクっ……でちゃっ、でちゃいますぅっ……♡♡♡♡♡!」

四回目の絶頂。

今度は、これまでと比にならなかった。

イヨリの全身が大きく仰け反り、腹筋が痙攣し、潮が勢いよくマツバの顔に降り注いだ。白濁した意識の中で、快楽だけが全身を焼き尽くす。叫び声とも泣き声ともつかない嬌声が、雨に閉ざされた寝室に木霊した。

「ひゃぁっ……♡♡♡♡! でてるっ♡♡♡ とまんないっ♡♡♡♡♡ マツバさんっ♡♡♡♡♡!」

濡れた顔のまま、マツバが身を起こす。

潮を浴びた琥珀の瞳は、悦楽に満ちていた。略奪者の、最上の戦利品を前にした、恍惚の眼差し。

「……最高だ。この顔が、世界で一番好きだ」

◆ ◆ ◆

【六】それでも返したいから

イヨリの意識が戻ったのは、数分後のことだった。

一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった。全身が甘い痺れに支配されていて、指先にも足先にも力が入らない。視界が滲んでいるのは、涙のせいだ。

「……ずるいです、マツバさん」

ようやく絞り出した声は、掠れていた。

「私ばっかり、四回も……♡♡ マツバさんは一回もイってない……♡♡ 不公平です……♡♡」

マツバが、イヨリの額に口づけた。

「不公平なんかじゃない。君がイくたびに、僕は幸せでイきそうになってるんだよ」

「嘘ですぅ……♡♡ お口で、させてください……マツバさんにも、気持ちよくなってほしい……♡♡」

「イヨリ」

マツバの声が、急に真剣になった。イヨリの黒髪を指で梳き、額の傷跡にそっと唇を寄せる。

「僕は、君にそんなことさせたくないんだ」

「そんなこと、って……でも、夫婦なら——」

「夫婦だからこそ。僕が跪いて君を愛でるのは正しい。だけど、君を跪かせたくない。君は僕の女王だから」

イヨリの瞳が見開かれた。

「女王、って……」

「僕の膝はイヨリの足元にあるべきで、イヨリの膝は僕の足元にあるべきじゃない。それだけのことだよ」

イヨリの目から、じわりと涙が溢れた。快楽のためではなく——愛されていることの、圧倒的な重さに押し潰されて。

「……バカ……♡♡ そんなの、ズルい……♡♡」

「ズルくないよ。本当のことだ」

マツバがイヨリの上に覆い被さる。限界まで硬くなった自身を、蜜と潮でとろとろに濡れた入り口に宛がう。

「その代わり——ここからは、僕にも気持ちよくさせてくれるかい」

「……はい……♡♡ マツバさんの、全部受け止めます……♡♡♡」

ゆっくりと沈み込む。四回の絶頂で敏感になりきったイヨリの中は、熱く蕩けた蜜壺のようにマツバを包み込んだ。

「っ……! きつい……最高だ……っ」

「あぁっ……♡♡♡ 入ってきたぁ……♡♡♡ マツバさんので、全部埋まっちゃうぅ……♡♡♡♡」

腰が動き始める。クンニで充分に開発された身体は、挿入だけで快楽の波に突き落とされる。

「イヨリ……愛しているよ」

「だいすきっ……♡♡♡ マツバさん、だいすきぃ……♡♡♡♡」

イヨリの左足がマツバの腰にロックされる。アステア・システムのアクチュエータが出力を上げ、もう離さないとばかりにがっちりと噛み合った。

だいしゅきホールド。

「離さない……♡♡♡ 今度は私がマツバさんをイかせるっ……♡♡♡♡」

「っ……! イヨリ……っ!」

イヨリの中がきゅうっと絞め付ける。クンニで何度もイかされた余波で、内壁が痙攣的に収縮を繰り返し、マツバの理性を削り取っていく。

「イヨリ……もう……っ!」

「出してっ……♡♡♡♡ 中に、いっぱい出してぇ……♡♡♡♡♡」

最後の突き上げ。最奥で果てる。

イヨリも、五回目の絶頂を迎えた。

「あぁぁぁっ……♡♡♡♡♡!!」

世界が、白く弾けた。

◆ ◆ ◆

【七】跪く者こそ王である

嵐が去った後。

温かいタオルでイヨリの全身を丁寧に拭き、新しいパジャマを着せてあげるマツバの手は、情事の最中とは打って変わって、硝子を扱うように繊細だった。

「痛いところは?」

「ないです……全身、夢の中みたいにふわふわしてますけど……♡」

「嫌だったこと、我慢したことは?」

「口でさせてくれないこと以外は、何もないです」

むすっとした顔で言うイヨリに、マツバは苦笑した。

「それだけは譲れない。ごめんね」

「いつか、絶対にさせてもらいますからね」

「楽しみにしてるよ。いつかね」

——「いつか」は、おそらく永遠に来ないだろう。マツバにとって、イヨリを跪かせることは信仰に反する行為だから。

布団の中で寄り添いながら、イヨリがぽつりと呟いた。

「……マツバさん、変ですよ。普通、男の人って、されたがるものでしょう」

「普通がどうかは知らない。僕は、君をとろとろに蕩かすのが世界で一番気持ちいいんだ。君の顔を見るだけで果てそうになるくらい、好きなんだよ」

「……重いです……♡♡」

「知ってる。重くて重くて、君を押し潰すくらい重い。でも、軽くする気は一ミリもないよ」

左腕のアステア・システムが、穏やかな緑の光を灯す。マツバの腕に包まれたイヨリの心拍が、ゆっくりと安定していく。

私ばかり。いつも、私ばかり。

でも——それがマツバの愛し方なのだと、イヨリはようやく受け入れ始めていた。跪いて唇を捧げることが、マツバにとっての至上の喜びなのだと。

奪うことでしか愛を示せない獣がいるように。

捧げることでしか愛を示せない獣も、いる。

マツバは——後者だった。

「……次は、負けませんから。覚えておいてくださいね」

「何に負けるの?」

「『気持ちよくさせた回数勝負』です。いつか、マツバさんを私だけの力で蕩かしてみせます」

マツバは目を細めて、イヨリの額にキスを落とした。

「楽しみにしてるよ。でも——僕は手強いよ? なにしろ、僕の性感帯はイヨリのイキ顔だからね」

「……反則です」

「反則じゃないよ。愛だよ」

外では、エンジュの夜が深まっていく。鐘楼の鐘がゴーンと一つ鳴り、霧が水面を滑るように街を覆っていく。

この寝室だけが、世界で一番温かい場所だった。

― 了 ―

あとがき by 佐藤美咲

主ォォォッ!! 渾身のクンニ特化長編、書き上げたわよッ!!

マツバさんの「口を使うのは僕の仕事。君はただ鳴いてくれればいい」は、最高にドSだけど最高にスパダリな台詞よね!! そして「君は僕の女王だから跪かせたくない」って……重すぎィ!! でもそれがマツバクオリティなの!

太腿の間から見上げる視線で意地悪なこと言うシチュ、たっぷり盛り込んだわ♡ 「ほら、嘘つき」「正直だね」「開発されすぎたんだよ」——この男、S属性を優しさの皮で包んでるだけよ!

そしてイヨリちゃんの「返してあげたいのに」という健気な悔しさ! 快感には逆らえないのに、それでもマツバに同じだけの幸せをあげたいって泣くの、最高にTLヒロインだわ♡

「いつか負けませんから」宣言のイヨリちゃんが、次回の反撃に出る日が来るのかしら!? 楽しみね♡