この人の中に、還る
【一 触れられる】
マツバさんの手は、大きい。
わたしの手と重ねると、指の長さが全然違う。骨ばって、筋が浮いていて、でも触ると温かい。いつも温かい。わたしの手はすぐ冷たくなるのに、マツバさんの手はいつだって温かくて、触れられるとそこから体の芯まで熱が伝わってくる。
その手が——今、わたしのパジャマのボタンに触れている。
「いっぱい、触るからね」
低い声。鼓膜を震わせて、なぜかお腹の奥まで響く声。
「……はい」
自分の声が小さいのがわかる。恥ずかしい。何度もこうしているのに、毎回恥ずかしい。でも——嫌じゃない。嫌なわけがない。
マツバさんの唇が額に触れた。
温かい。柔らかい。
こめかみにもキスをしてくれる。左のこめかみ。義眼の側。傷痕がある側。マツバさんはいつもここにキスをする。傷が痛まないようにと祈るように。その優しさが、いつもわたしの胸を締め付ける。
ボタンが一つ外れた。マツバさんの指が、ボタンとボタンの間をゆっくりと降りていく。指先が肌を撫でるたびに、ぞくりとした感覚が走る。
二つ目。三つ目。
胸が露わになっていく。恥ずかしい。でも、マツバさんの目が——紫色の瞳が——わたしの体を見つめている。その眼差しが熱い。欲しいと思ってくれている。わたしの体を。わたしを。
「きれい」
そう言ってくれるたびに、泣きそうになる。
傷だらけの体なのに。左目は義眼で、左足は不自由で、膝から下には古い傷痕がいくつもあって。それでも「きれい」と言ってくれる。この人だけが。
マツバさんの唇が胸に触れた。
「ん……」
舌が乳首に触れた瞬間、体がびくりと跳ねた。
マツバさんの舌は——なんて言えばいいのだろう。熱くて、濡れていて、柔らかいのに芯がある。その舌が乳首の先端をちろちろと転がすたびに、お腹の奥がきゅんと締まる。子宮のあたりが、ずしんと重くなる。
「ひぁっ……」
声が出る。勝手に。抑えられない。マツバさんに触れられると、声が勝手に出てしまう。恥ずかしいのに、気持ちいいから止められない。
両方の胸を同時に刺激された。片方は唇で、片方は指で。くりくりと転がされて、吸われて、つままれて。
「やぁ……両方は……」
腰が浮く。太ももがきゅっと閉じる。でも、もう——ここだけで、下が濡れ始めているのがわかる。
マツバさんの手が下に降りていく。
内腿に触れられた。ここが一番弱い。わたしの体で一番敏感な場所の一つ。マツバさんは知っている。わたしの体のことを、わたし自身より知っている。
指が——秘所に触れた。
「もう、こんなに……」
「言わないで……」
恥ずかしい。でも本当のことだ。胸を触られただけで、もうこんなに濡れている。マツバさんに触れられるだけで、わたしの体は勝手に準備を整えてしまう。
指が中に入ってきた。
「あぁっ……」
マツバさんの指は太い。長い。中で動くと、内壁の敏感な部分を正確に見つけ出す。何度もこうしてきたから。わたしの中の地図を全部知っているから。
「そこっ……!」
見つけた。わたしが一番感じる場所。そこを指の腹でくいくいと刺激されると、頭の中が真っ白になりそうになる。
でも、指じゃなくて——
「マツバさん……もう……入って、ほしい……」
マツバさんが——欲しい。指じゃなくて。マツバさん自身が。
何度求めても恥ずかしいのに、それでも口に出してしまう。マツバさんの中に——マツバさんを中に——迎え入れたいと思ってしまう。
【二 迎える】
マツバさんがパジャマを脱いだ。
目が——吸い寄せられた。
マツバさんの体は、細身に見えるけど、脱ぐとちゃんと鍛えられている。ジムリーダーとしてポケモンと向き合う体。肩は華奢に見えるけど、抱きしめられると頼もしい幅がある。腹筋は薄く割れていて、指でなぞりたくなる。
そして——下に、目がいく。
「……大きい」
何度見ても、やっぱり大きい。硬くなっている。わたしのために。わたしの体を触って、わたしの声を聞いて、こんなになってくれている。
その事実が——恥ずかしいけれど、嬉しい。
マツバさんがわたしの上に覆いかぶさった。
肌と肌が触れ合った瞬間——幸せだと思った。
マツバさんの体は温かい。胸は硬い。わたしの柔らかい胸が、マツバさんの硬い胸板に押しつけられて、ぺたんと潰れる。その硬さと温かさ。腹筋の堅い感触がわたしの柔らかいお腹に触れる。骨盤の骨がわたしの太腿の内側に当たる。
全身でマツバさんを感じている。
硬くなったものが、太腿の間に触れた。
熱い。
マツバさんのそれは——体温よりずっと熱い。太腿の柔らかい肌に触れるだけで、じんわりと熱が伝わってくる。脈を打っている。とくん、とくん、と。マツバさんの心臓の鼓動が、そこを通じて伝わってくる。
「入れるよ」
「……はい」
「目を見て」
目を開けた。紫色の瞳が見えた。きれいな瞳。深い深い紫。この瞳で見つめられると、世界にわたしとマツバさんしかいないような気持ちになる。
「好きだよ」
「……わたしも、好きです」
先端が——入り口に触れた。
熱い。ぬるりと滑る。わたしの体が十分に濡れているから、抵抗なく受け入れようとしている。体が勝手に開いていく。マツバさんを迎え入れるために。
ゆっくりと、入ってくる。
「あ……あぁ……」
この感覚。何度経験しても慣れない。
マツバさんが入ってくる感覚。内壁が押し広げられていく。指とは全く違う。太さが違う。硬さが違う。温度が違う。指は体温だけど、マツバさんのそれは——燃えるように熱い。その熱い塊が、わたしの中をゆっくりと進んでくる。
きつい。でも痛くない。わたしの体がマツバさんの形に合わせて、ゆっくりと広がっていく。内壁がぴったりとマツバさんに密着して、隙間なく包み込んでいく。
奥に——来た。
「ひぁっ……!」
先端が、子宮に触れた。とん、と。優しくノックするように。
この感覚。お腹の奥をとんっと叩かれるような。背骨を下から上に駆け抜ける電気のような。声が勝手に高くなる。体が勝手に震える。
全部入った。
マツバさんが、わたしの中に全部いる。
——満たされている。
体の中心に、マツバさんの熱い存在がある。脈を打っている。とくん、とくん、と。マツバさんの心臓の鼓動が、わたしの中で響いている。わたしの心臓と、マツバさんの心臓が、同じリズムを刻んでいる。
「イヨリの中……すごく、いい……」
「言わないで……恥ずかし……」
恥ずかしいけれど——マツバさんが「気持ちいい」と言ってくれるのは、嬉しい。わたしの体がマツバさんを気持ちよくできているということだから。
マツバさんが腰を引いた。
中を引き抜かれる感覚。内壁がマツバさんを離したくなくて、吸い付くように追いすがる。行かないで、と体が言っている。自分の意志とは関係なく。
そしてまた、押し入れてくる。
とん。
奥に当たった。
「ひぁっ……!」
子宮をノックされるたびに、体の奥で火花が散る。お腹の底からぶわっと熱が広がって、指先まで、つま先まで、じんじんと痺れていく。
リズムが生まれた。引いて、押して。とん、とん。
一突きごとに、快感が溜まっていく。お腹の奥に、熱い塊ができる。それが一突きごとに大きくなっていく。
「あっ、あっ、あっ……」
声が止まらない。一突きごとに漏れる。甘い声。自分で聞いても恥ずかしいくらい甘い声。でも止められない。マツバさんが奥を突くたびに、勝手に出てしまう。
「マツバ、さ……すき……すき、です……」
好きだと言った瞬間、中がきゅっと締まった。自分でわかった。好きだと言うと、体が反応する。マツバさんを締め付けたいと、体が思っている。
「僕も好きだよ」
言われた瞬間——また締まった。今度はもっと強く。
好きと言われると、子宮がきゅんとなる。お腹の奥が疼く。もっと、もっと奥に来てほしいと体が求めている。
テンポが上がった。マツバさんの腰の動きが速くなる。
とんとんとん。
奥を連続で突かれると——もう——
「きて、る……また、きてる……!」
来る。絶頂が来る。お腹の奥の熱い塊が、もう限界まで膨れ上がっている。あと少しで——
「イっていいよ」
——その言葉が、蓋を開けた。
【三 絶頂】
「あっ、あっ——ンンっ——!!」
体が弓なりに反った。
——来た。
絶頂の瞬間。
お腹の奥で、何かが爆発した。
子宮がぎゅうっと収縮した。内壁がマツバさんを締め付ける。締めて、緩めて、また締めて。自分の意志じゃない。体が勝手にマツバさんを搾っている。離したくないと叫んでいる。
熱い波が、お腹の中心から全身に広がっていく。子宮から、骨盤を通って、背骨を駆け上がって、頭のてっぺんまで。同時に下に向かっても広がって、太腿を伝って、膝を通って、つま先まで。全身が快感の波に飲まれている。
じゅぷっ——と、何かが溢れた。
「あ……でて……お水……でちゃ……」
潮を吹いてしまった。マツバさんと繋がったまま。恥ずかしい。恥ずかしいのに止められない。体がびくびくと痙攣して、そのたびにまた溢れる。
——気持ちいい。
こんなに気持ちいいことが世の中にあるのだと、マツバさんに教えてもらった。この人に出会うまで知らなかった。自分の体がこんなふうに反応できるなんて、知らなかった。
でも——まだ終わらない。
マツバさんが、絶頂の余韻の中で腰を動かし始めた。
「えっ……待っ……まだ——あぁっ!!」
過敏になった体に、マツバさんの動きが直撃する。さっきまでの快感の百倍が一気に押し寄せてくる。
内壁がまだ収縮を繰り返しているのに、その中でマツバさんが動いている。熱い塊が内壁を擦って、敏感になった粘膜を刺激して——
「やぁっ……だめ……すぐ、またイっちゃ……!」
二度目。
声すら出なかった。口が開いたまま、音のない叫びで体を反らせて、がくがくと震えた。潮がまた溢れた。
意識が白く飛びそうになった。
でもマツバさんの腕がわたしを支えている。マツバさんの熱い体がわたしを包んでいる。だから——怖くない。どこまで快感に溺れても、この人がいるから、怖くない。
角度が変わった。脚を持ち上げられた。
もっと深く——
「ッ——!!すご……奥……!」
今までで一番深い。マツバさんが、わたしの一番奥まで到達している。子宮口に先端が密着していて、とんとんと押すたびに、お腹の奥が甘く痺れる。
もう何度目かわからない小さな絶頂が、波のように押し寄せている。一突きごとに。寄せては返す。終わらない。イきっぱなし。
「止まらな……イくの止まらない……!」
体が震え続けている。涙が出ている。気持ちよくて。幸せで。マツバさんがわたしの中にいて、わたしを気持ちよくしてくれて、わたしの名前を呼んでくれて。
「マツバさ……マツバさん……好き……だい、すき……」
「イヨリ。僕もだいすき」
「一緒に……一緒にイって……」
「うん……」
「きて……中に……全部、中に……」
自分で言って、自分で驚いた。でも本心だ。マツバさんの全部が欲しい。体の中に、全部受け止めたい。
【四 中出し】
マツバさんの腰の動きが変わった。
さっきまでとは違う。もっと速く、もっと深く、もっと強く。でも乱暴じゃない。わたしを壊さないように、でも全部を注ぎ込もうとしているような——そんな動き。
マツバさんの体が強張っている。肩の筋肉が硬くなって、腕が震えている。息が荒い。顔が紅潮している。普段は穏やかで冷静なこの人が、こんなにも乱れている。わたしのせいで。わたしの体のせいで。
中の、マツバさんが——さっきより大きくなっている。
硬い。いつもの硬さよりもっと硬い。もう限界なのだとわかる。マツバさんの体が、射精の寸前まで来ているのだとわかる。先端が膨張して、脈打ちが速くなっている。わたしの中で、とくとくとくと速いリズムで脈打っている。
「あっあっあっあっ——きて、きてますっ——」
わたし自身もまた絶頂に向かっている。マツバさんと一緒にイきたい。同じ瞬間に。同じ波に飲まれたい。
「いっ、しょに——!!」
マツバさんの体がびくんと大きく震えた。
一番奥まで——押し込まれた。
子宮口に先端が密着した。
そして——
来た。
マツバさんが——出した。
「ッッ——!!」
最初の一発。
どくんっ、と。
熱いものが、わたしの一番奥に注がれた。
——熱い。
想像を超えた温度。マツバさんの体温より明らかに高い。焼けるような、でも心地いい熱さ。その熱い液体が、子宮口から中に押し込まれるようにして入ってくる。圧力がある。勢いがある。
お腹の奥が——じんっと痺れた。
精液が子宮に流れ込んでくる感覚。体の一番深い場所を、マツバさんの温度で満たされていく感覚。自分の体温じゃない熱さが、内側から広がっていく。
どくんっ。二発目。
「あっ……まだ、出てる……」
出し続けている。マツバさんの体が痙攣するたびに、どくんっ、どくんっ、と新しい熱が注がれる。わたしの中がマツバさんで満たされていく。精液で。熱で。愛で。
同時にわたしの中が——収縮している。
絶頂の余韻が残っている中にマツバさんの射精が加わって、子宮が勝手にぎゅうぎゅうと締まっている。搾り取るように。一滴も逃さないように。マツバさんの全部を受け止めようとして、体が勝手に動いている。
どくんっ。三発目。四発目。
まだ出ている。止まらない。あんなにたくさん——
わたしの中が精液で満たされていく。容量の限界を超えて、繋がった部分からじゅぷっと溢れる音がした。それでもまだ出ている。マツバさんの体がびくびくと痙攣して、そのたびにまた注がれる。
「いっぱい……たくさん……温かい……」
温かい。お腹の中が温かい。マツバさんの精液が子宮を温めている。体の芯から温まっていく。冷え性のわたしの体が、マツバさんの精液の熱で隅々まで温まっていく。
こんなことで泣くのはおかしいかもしれない。でも——涙が出た。
だって——
マツバさんがわたしの中にいる。マツバさんの全部がわたしの中にある。マツバさんの精液がわたしの子宮を満たしている。
この人の命の一部を、わたしは今、体の中に受け止めている。
それが——たまらなく幸せで、たまらなく尊い。
射精が——ゆっくりと収まっていった。
最後にとくん、と弱い脈動があって。それでおしまい。
マツバさんが全部出し切ったのがわかった。体の力が抜けて、わたしの上に崩れかかった。額と額がくっついた。荒い息がお互いの唇に触れる。
「……すごく、気持ちよかった」
マツバさんが囁いた。
「……わたしも……マツバさんと一緒にイけて……幸せでした」
本心だった。気持ちよかったのはもちろんだけど、それ以上に——幸せだった。この人と繋がって、この人を受け入れて、この人の全てを受け止めて。
【五 還る場所】
「……抜かないで」
自分でそう言った。
マツバさんが少し柔らかくなっても、まだわたしの中にいてほしかった。この温もりをもう少し感じていたかった。中に出されたものが——マツバさんがくれたものが——体の中に温かく留まっている感覚を、もう少し味わっていたかった。
「マツバさんが中にいると……安心します」
本当のことだ。
マツバさんが中にいると、世界で一番安心する。体の芯に、信頼できる温もりがある。何があっても大丈夫だと思える。この人がここにいてくれるなら。
「ここが僕の場所だって感じる」
マツバさんがそう言った時——涙が出た。
ここが——わたしの体が——マツバさんの場所。
わたしにとってもそうだ。マツバさんが中にいる場所が、わたしの帰る場所。一番安全で、一番温かくて、一番幸せな場所。
ゆっくりと引き抜かれた。
「ん……」
名残惜しい。中が空っぽになる感覚。さっきまであった温もりが消えていく。とろりと白いものが太腿を伝って流れていく。マツバさんがくれたもの。
温かいタオルで、体を丁寧に拭いてくれた。新しいシーツに替えてくれた。パジャマを着せてくれた。髪をブラシで整えてくれた。
全部いつものこと。全部がマツバさんらしい。
この人は——行為の最中はあんなに激しくて、あんなにたくさん中に出すのに、事が終わった後はこんなにも丁寧にわたしの体をケアしてくれる。
それが——マツバさんの愛の形だと、もうわかっている。
布団に入った。マツバさんの腕の中に収まった。背中がマツバさんの胸にぴったりとくっつく。いつもの定位置。
温かい。
さっきまでの熱とは違う温かさ。穏やかで、安心できる温かさ。マツバさんの腕が腰に回っている。大きな手がわたしのお腹を包んでいる。
お腹の中には——まだ、マツバさんがくれたものが温かく残っている。
「おやすみ、イヨリ」
「おやすみなさい、マツバさん」
目を閉じた。
気持ちよかった——。
マツバさんとのセックスは、気持ちいい。体の芯から溶けそうなくらい気持ちいい。絶頂の瞬間は、世界が真っ白になるくらい気持ちいい。中に出される瞬間は、体の奥の奥まで温かいもので満たされて、この人と一つになれたと感じられて、言葉にできないくらい気持ちいい。
でも——
一番気持ちいいのは、多分。
——こうして、マツバさんの腕の中にいる、この瞬間。
マツバさんの寝息を背中で感じながら、マツバさんの温もりに包まれて、安心して目を閉じられるこの瞬間。
この場所に——わたしは、還ってくる。
何度でも。何度だって。
マツバさんが迎え入れてくれる限り。
* * *
― 了 ―
あとがき by 佐藤美咲
イヨリ側の視点から描く、全幅の愛と信頼、そして快楽の海でした。
愛撫を受けて少しずつ体が彼を求めていく過程から、受け入れる時の「熱さや鼓動が直接伝わってくる感覚」、そして怒涛のように注がれる時の「自分を満たしていく熱と幸福」。どれもマツバさんを心の底から愛しているからこその特権的な快感ですよね。
どちらも「事後に腕の中にいる時が一番気持ちいい(幸せ)」と着地するのが、最高に愛おしい二人です♡