ECHOES OF ECRUTEAK

星と花の小夜曲

― マツバ × イヨリ ―
STARRING MATSUBA & IYORI

一秒でも長く、君の中に

マツバ視点 / 約10,000字 / 射精我慢・スローセックス・寸止め

一秒でも長く、君の中に

日が、暮れる。

障子の向こうで、エンジュの秋の空が夕焼けから藍色へとゆっくりと色を変えていく。庭の楓が、最後の陽光に照らされて深い朱に燃えていた。鐘楼の鐘が鳴る。ごぉぉぉん、と低い余韻が古都の空気を震わせ、やがて静寂に呑まれていく。

僕はその音を、縁側に座って聴いていた。

隣には、イヨリがいる。

膝の上に湯呑みを載せ、庭を眺めている横顔。夕暮れの残光が、白い頬をほんのりと橙色に染めている。セミロングの黒髪が、肩から胸元にかけて緩やかに流れ落ち、微かな風に揺れるたびにラベンダーの香りがふわりと漂った。

綺麗だ、と思う。

何千回、何万回思ったかわからない。でも毎回、初めて見たかのように心臓を掴まれる。

「マツバさん?」

視線に気づいたイヨリが、不思議そうに首を傾げた。大きな瞳が、夕暮れの光を映してきらきらと揺れている。右目だけが。左目は白く濁ったまま、けれどそれすらも、僕にとっては彼女の一部として愛おしい。

「……ん、何でもないよ。綺麗だなって思っただけ」

「お庭ですか? 紅葉が、今年は少し早いみたいですね」

「庭じゃなくて、イヨリが」

「…………っ」

ぽん、と頬に薄桃色が差した。

耳の先まで赤くなって、湯呑みに視線を逃がすイヨリ。

「も、もう。急にそういうこと言うんですから……」

「急じゃないよ。いつも思ってる」

「いつもは……もっと恥ずかしいです……」

恥ずかしそうに俯いたうなじが、首筋の白さが、纏め損ねた後れ毛がくすぐる細い首が、夕暮れの光の中で息を呑むほど艶めかしい。

知っている。この角度から見たイヨリのうなじが、僕の理性をどれほど削り取るか。

知っていて、見つめることをやめられない。

「……イヨリ」

「はい?」

「今夜は、ゆっくり愛してもいい?」

イヨリの肩が、びくっと小さく跳ねた。

湯呑みを持つ指先が、かすかに震えている。

「……ゆっくり、ですか」

「うん。急がないで。時間をかけて。……イヨリの全部を、一つずつ味わいたい」

沈黙が落ちた。

秋の虫が、庭の暗闇から澄んだ声を紡いでいる。

やがて、イヨリが小さく頷いた。

「……はい♡」

その一言の中に含まれた信頼と期待と、ほんの少しの不安。全部が愛おしくて、胸の奥がぎゅっと軋む。

この人を壊さないように。この人の全てを味わい尽くすように。一秒でも長く、この幸福な時間を引き伸ばすように。

今夜は——急がない。

*    *    *

寝室に移動し、行灯にだけ灯を入れた。

橙色の弱い光が畳の上に揺らめく。障子越しの月明かりと、行灯の炎。二つの光源だけが、六畳の和室をほのかに照らしている。

イヨリが布団の上に正座している。今日は普段着のワンピースだった。クリーム色の、膝下丈の。鎖骨のあたりが少しだけ開いたデザインで、そこから覗く白い肌が行灯に照らされて、蜜蝋のように滑らかに光っている。

「緊張してる?」

「……少し、だけ♡」

何百回も結ばれているのに、まだ緊張する。その事実が、僕を果てしなく幸せにする。

向かい合って座り、まず右手を伸ばした。

イヨリの頬に、そっと触れる。

左手はまだ使わない。右手の指先だけで、頬の丸みをなぞる。頬骨の高い部分から顎にかけてのなめらかなラインを、親指の腹で辿っていく。

「……ん♡」

目を閉じたイヨリが、僕の手のひらに頬を預ける。猫が甘えるような、無防備な仕草。

柔らかい。温かい。きめの細かい肌の表面に、産毛が微かに光っている。

指先を、耳の後ろに滑らせた。

ここは、イヨリが体温を感じやすい場所だ。耳の後ろの薄い皮膚のすぐ下を、静脈が走っている。指の腹でそこを撫でると、イヨリの呼吸が少しだけ深くなった。

「……くすぐったい……♡」

「ごめん。でも、ここの肌、好き」

耳の後ろから首筋へ。指一本で、細い首のラインをゆっくりと下降する。

喉仏のない、なめらかな喉。飲み込む動作のたびに、微かに動く。指先が触れている場所から、イヨリの脈拍が伝わってくる。少しだけ速い。

鎖骨に到達した。

くっきりと浮き出た鎖骨の溝を人差し指でなぞる。ここには以前、僕がつけたキスマークが消えかけている。赤から黄色に変わりかけた痕。所有の印。

「……ここ、前のが消えかけてるね」

「……あ、えっと」

「あとで、新しいの刻んでいいかな」

「…………♡♡」

返事の代わりに、イヨリが唇を引き結んで頷いた。耳が、また赤い。

右手だけでの愛撫を続ける。

鎖骨からワンピースの肩紐へ。細い布のストラップを指先で弄びながら、わざとゆっくり、ずらすように引き下げた。

「脱がせるね。ゆっくり」

「……はい♡♡」

クリーム色のワンピースが、右肩から滑り落ちる。その下から現れたのは、白いレースのブラジェット。華奢な肩の丸みと、白い二の腕。細い腕の左手首には、アステア・システムの腕輪が淡く光っている。

左肩の紐も下ろす。ワンピースが腰のあたりまでずり下がり、上半身はブラジェットだけになった。

背中に手を回し、ブラのホックを外す。二つの金具が、かちりと小さな音を立てて離れた。

ブラを外した瞬間、重力に従って柔らかい双丘が揺れた。

「…………」

見惚れる。

行灯の光に照らされた、イヨリの胸。華奢な身体には不釣り合いなほど豊かで、形がいい。たっぷりとした白い果実が、自重で僅かに楕円形に広がっている。先端の薄桃色の乳首は、まだ柔らかいままだ。

手を伸ばしたい衝動を、こらえる。

まだだ。もっと、焦らして。

「マツバ、さん……? 見すぎ……です♡♡」

「見させて。……きれいすぎて、目が離せない」

「もう……っ♡♡♡」

恥ずかしさに耐えかねたイヨリが、両腕で胸を隠そうとする。その手首をそっと掴んで、止めた。

「隠さないで」

「で、でも……っ♡♡♡」

「イヨリの身体は、全部僕のものだから。隠す必要ないよ」

甘い独占の言葉が、条件反射のように僕の口から零れ出る。

イヨリの瞳が、潤んだ。恥ずかしさと、喜びと、ほんの少しの興奮が混ざった、甘い色。

今度は、左手も使う。

両手で、イヨリの胸の下側——乳房の付け根の部分に、そっと手のひらを添えた。持ち上げるのではなく、ただ触れるだけ。指を広げて、胸の重みを手のひらで受け止める。

柔らかい。体温より少しだけ高い、ふわふわとした温もり。手のひらに胸の鼓動が伝わってくる。とくとくとくとく。イヨリの心臓が、早鐘を打っている。

「心臓、すごく速いね」

「……マツバさんの、せいです♡♡♡」

「そうだよ。僕のせい。僕だけが、イヨリの心臓をこんな速く動かせる」

手のひらを、ゆっくりと上に滑らせた。

乳房の、下から上へ。柔らかい肉がたわみ、指の間からはみ出すように形を変える。手のひら全体で胸を包み込みながら、親指が乳輪に差し掛かった。

「…………っ♡♡♡」

息を呑む音が聞こえた。

まだ乳首には触れない。乳輪の外周を、親指の腹でくるりと一周なぞる。濃い桃色の薄い肌の上を、ゆっくり、ゆっくり。

「や……♡♡♡ 焦らさないで……♡♡♡♡」

「ん? 何を焦らしてるの?」

「……いじわる♡♡♡♡」

知ってるよ。イヨリが何を待っているか。でも、今夜は急がない。

乳輪の上を何周も何周も撫で続けると、イヨリの乳首が少しずつ反応を見せ始めた。柔らかかった薄桃色の先端が、じわじわと硬さを帯び、ぷくりと膨らんで主張を始める。

十分に硬くなるまで待った。

それから、人差し指の側面で——硬くなった先端を、横からそっと押した。

「あ♡♡♡♡!」

びくん、とイヨリの背中が反った。

先端を指の腹で挟む。軽く転がす。

こり。

「やっ♡♡♡♡!」

こりこり。

「あっ♡♡♡♡! ん♡♡♡♡!」

左右の乳首を、両手で同時に、同じリズムで転がす。弾力のある小さな蕾がくるくると回されるたびに、イヨリの身体が律動する。

「マツバ、さ♡♡♡♡……胸だけでっ♡♡♡♡、もう……♡♡♡♡」

「もう、何?」

「……変になり、そう♡♡♡♡……」

胸だけでこの反応。

マツバに開発されたイヨリの乳首は、極端に感度が高い。触れるだけで全身に電流が走るほどに。

——でも、まだイかせない。

乳首から指を離した。

「え……?」

「まだだよ。ここで終わりじゃない」

イヨリの眉が、一瞬だけ寂しそうに下がった。快感の途切れを惜しむ顔。その表情が、とんでもなく可愛い。

唇を、イヨリの額に落とした。

前髪をかき上げて、古い傷跡の上に。ゆっくりと、じわりと染み込ませるように。

額から眉間。眉間から鼻筋。鼻の頭。鼻の下。そして——唇。

最初の口づけは、触れるか触れないかの距離で止めた。

唇と唇の間に、紙一枚ほどの隙間。互いの吐息が、その隙間で溶け合い、混ざり合う。

「……キスして。お願い♡♡♡♡……」

イヨリから、ねだった。

甘くて可愛らしい声で。潤んだ瞳で。ぷるぷる震える唇で。

——この声を、この顔を、この唇を。僕が独占している。

世界中の誰にも、この表情は見せない。見せさせない。

唇を、重ねた。

触れた瞬間、イヨリの唇が柔らかく開いた。待ち構えていたように、僕の下唇を受け入れ、小さく吸い付いてくる。

「ん……♡♡♡♡」

舌先を差し入れる。歯列をなぞり、上顎の窪みを撫で、イヨリの舌を探す。見つけると、舌の腹同士を重ね、ゆっくりと絡ませた。

「ちゅ、る……♡♡♡♡、ん、ぷ……♡♡♡♡」

水音が立つ。唾液が混ざり、糸を引き、互いの口腔を行き来する。甘い。イヨリの唾液は、いつも仄かに甘い。ハーブティーの残り香か、それとも彼女自身の味か。

キスをしながら、右手を背中に回した。

背骨のラインを指先で辿る。肩甲骨の間。腰のくぼみ。尾骶骨のあたりまで下降して、また上がる。

イヨリの背中が、きゅっと弓なりに反った。

「ん♡♡♡♡……!」

背中が弱い。マツバはそれを知っている。背骨に沿って指を滑らせるだけで、イヨリの全身にぞくぞくとした感覚が走る。

キスを続けたまま、左手を胸に戻した。乳首を再び指の腹で転がしながら、右手は背中を上下する。

上から——胸。背中。胸。背中。

二か所を同時に刺激されて、イヨリの身体がびくびくと小さく震え始めた。

唇を離す。銀色の糸が一瞬だけ光って、千切れた。

「は……♡♡♡♡、ぁ……♡♡♡♡……」

上気した顔。潤んだ瞳。少しだけはだけた唇から漏れる、甘い吐息。

きれいだ。

きれいで、可愛くて、色っぽくて——全部、僕のもの。

「うなじ、いくよ」

「っ♡♡♡♡!」

宣告しただけで、イヨリの肩が震えた。

うなじ。イヨリの三大弱点の一つ。

イヨリの正面から背後に回り込み、後ろから抱きしめるような体勢を取った。

濡れた黒髪を右手でそっと持ち上げ、細いうなじを露出させる。

産毛が払い落とした後の、白く清潔な肌。髪の生え際から首の付け根にかけての、緩やかなカーブ。行灯の光が、その曲線だけを橙色に照らしている。

まず——息を吹きかけた。

温かい吐息が、うなじの皮膚を撫でる。

「ひっ♡♡♡♡!!」

びくん、と大きく跳ねた。

息だけで、この反応。

次に、唇を近づけた。触れない。触れない。触れない——。

「マツバ、さん♡♡♡♡……早く……っ♡♡♡♡」

「焦らないで」

「で、でもっ♡♡♡♡……うなじに息がかかってるだけでっ♡♡♡♡……もう……っ♡♡♡♡」

耐えかねたイヨリが、自分から首を後ろに傾けてきた。唇に、自分のうなじを押し付けるように。

——かわいい。

ごほうびに、唇を落とした。

「あっ♡♡♡♡♡♡!!」

髪の生え際に、ちゅ、と。

それだけで、イヨリの全身がぶるっと震えた。

唇を、ゆっくりと下降させる。うなじの中心線に沿って、口づけの連鎖を刻んでいく。一つ一つが、花を置くように丁寧に。

ちゅ。ちゅ。ちゅ。

「あ♡♡♡♡……ん♡♡♡♡……やぁ♡♡♡♡……」

首筋の横。ここは少し強めに吸いたい。唇を密着させ、ちゅう、と音を立てて皮膚を吸い上げた。

「ひぁっ♡♡♡♡!! キスマーク♡♡♡♡……!!」

「ここなら、髪で隠れるでしょ」

赤い花が咲いた。服でも髪でも隠れる、僕だけが知っている場所。

うなじから肩へ。肩甲骨の上へ。唇の旅は続く。

後ろから抱きしめた体勢のまま、両手が前に回る。胸を、後ろから包み込むように揉んだ。背中に僕の胸板が密着し、耳元で呼吸が聞こえる距離。

「やっ♡♡♡♡……! 後ろからっ♡♡♡♡……胸……っ♡♡♡♡!」

「柔らかい。……すごく、柔らかい」

手のひらの中で、たぷん、と胸が形を変える。指の間から柔らかい肉があふれ、戻り、また溢れる。乳首を手のひらの中心で押しつぶすように転がすと、硬い突起が手相の線を擦って微細な刺激を送り続ける。

「マツ、バさ♡♡♡♡……っ! 胸揉みながらっ♡♡♡♡、うなじはっ♡♡♡♡……だめ♡♡♡♡……っ」

「だめ? でも、イヨリの身体は嬉しそうだよ。乳首が、こんなに硬くなってる」

つん、と乳首を指先で弾いた。

「ひゃぁっ♡♡♡♡!!」

声が裏返った。かわいい。

うなじへのキスと胸への愛撫を同時に続けながら、イヨリの反応を観察する。

肩で息をしている。全身が薄く汗ばみ、僕の腕の中で小刻みに震えている。

髪に遮られた左目は見えないが、右目は完全にとろんと蕩けている。黒い瞳の奥に、行灯の炎が揺らめいて映っている。

十分に温まった。次の場所に移ろう。

「横になって」

「……はい♡♡♡♡」

とろとろの声で応じたイヨリを、布団の上に仰向けに横たえる。

ワンピースの残りを脱がせた。下着も——白いレースのショーツ。ここだけが、まだ残っている。

脱がす前に、僕は膝をついて、イヨリの身体を見下ろした。

ブラもワンピースも失った上半身。豊かな胸が左右に僅かに流れ、乳首が赤く硬く立っている。平らな腹部。くびれた腰。そして腰骨から下の、白いレースのショーツ。その下に隠されたもの。

ショーツの上から、手を乗せた。

「っ♡♡♡♡!!」

太腿がぎゅっと閉じようとした。でも、僕の手のひらがそこにあるから、閉じきれない。

ショーツの布地が——湿っていた。

「もう、こんなに」

「み、見ないでっ♡♡♡♡……!!」

「見るよ。触るし、味わうし、全部する。イヨリの全部を」

ショーツの上から、人差し指で中心の溝をなぞった。

湿った布地越しに、花弁の輪郭が指に伝わる。

「やっ♡♡♡♡……!! 布の上からっ♡♡♡♡……焦らさないでっ♡♡♡♡……」

「焦れてる?」

「……焦れ、てます♡♡♡♡……早くっ♡♡♡♡、直接♡♡♡♡……」

「もう少し待って」

布越しに、花弁の間に指を食い込ませる。ショーツの布地がイヨリの最も敏感な場所に押し込まれ、食い込み、湿った感触が指先を覆った。

「ひぁっ♡♡♡♡!! ショーツがっ♡♡♡♡……食い込んでっ♡♡♡♡……!!」

布越しの刺激を、一分間続けた。

たっぷりと焦らしてから——ショーツの端に指をかけ、ゆっくりと引き下ろす。

太腿を伝い、膝を越え、足首から抜いた。

露わになったイヨリの秘所は、行灯の光に照らされて、蜜でてぃるてぃると光っている。

花弁が薄く開き、そこから透明な蜜がとろりと糸を引いている。入口の縁が僅かに収縮し、まるで招くように蠢いている。そしてその上の——真珠が、包皮から半分だけ顔を覗かせ、充血してわずかに腫れている。

「……きれい」

「やぁっ♡♡♡♡……恥ずかしいですっ♡♡♡♡……」

「恥ずかしがらないで。イヨリのここは、僕が一番好きな場所」

鼠径部に唇を落とした。

「ッ♡♡♡♡!!」

V字の溝。ここも三大弱点。

舌先で溝をなぞりながら、左右交互にキスを落とす。ちゅ、ちゅ、と音を立てて薄い皮膚を吸い上げ、赤い花を咲かせる。

「やっ♡♡♡♡!! 鼠径部っ♡♡♡♡!! そこ弱いのっ♡♡♡♡……!!」

「知ってる。だから丁寧にやる」

鼠径部を舐め、キスマークを刻みながら、指先は太腿の内側を這う。秘所のすぐ傍まで近づいて——触れない。

「マツバさ♡♡♡♡……!! もう……もうっ♡♡♡♡……触ってっ♡♡♡♡……お願い♡♡♡♡……」

「どこを?」

「………………♡♡♡♡」

「言って。イヨリ」

「……おま……ん♡♡♡♡……」

言えなかった。恥ずかしすぎて、最後まで言えずに語尾が消える。

——可愛すぎる。

「いいよ。わかった」

指先が、花弁に触れた。

「あっ♡♡♡♡!!」

人差し指の腹で、外側の花弁をゆっくりとなぞる。下から上へ。内側のひだに沿って、蜜を掬い取るように。

「濡れてる。すごく。……指がぬるぬるになるくらい」

「言わないでぇ♡♡♡♡……」

花弁を指で優しく開き、内側の粘膜を露出させた。

ぴんく色の、繊細で柔らかい粘膜。透明な蜜が膜のように張って、行灯の光をぬらぬらと反射している。

唇を近づけた。

温かい息を吹きかける。

「ひくっ♡♡♡♡!!」

花弁が、呼気に反応してきゅんと収縮した。

舌先を伸ばし——花弁の最も下から、ゆっくりと舐め上げた。

「ひぁぁっ♡♡♡♡♡♡!!」

蜜の味が舌に広がる。仄かに甘く、微かな酸味を帯びた、イヨリだけの味。何度味わっても飽きない。もっと欲しくなる。中毒のように。

花弁の間を、舌でゆっくりとなぞる。内側のひだの一枚一枚を、丁寧に舐めていく。

「あっ♡♡♡♡……ん♡♡♡♡……まつば、さ♡♡♡♡……」

入口の縁に到達。ぐるりと一周、舌先で縁を辿った。

「やっ♡♡♡♡……入り口っ♡♡♡♡……ぐるぐるしないでぇ♡♡♡♡……」

そして、真珠へ。

包皮を舌の腹で押し上げ——露出した先端に、舌先の一点だけを当てた。

「っっ♡♡♡♡♡♡!!!!」

イヨリの腰が、ばねのように跳ね上がった。両手で押さえて、元の位置に戻す。

「ここが一番感じるね。……ゆっくり、舐めるよ」

ちろ。ちろ。ちろ。

舌先の一点だけで、真珠の先端を小さく小さく刺激する。全力で舐めるのではなく、微細な振動のような最小の動きで。

「あっ♡♡♡♡、あっ♡♡♡♡、あっ♡♡♡♡……」

一定のリズム。ゆっくりと、波が満ちるように快感を積み上げていく。

同時に、中指を入口に当てた。

ぬるり、と蜜に滑って、一節だけ入る。

「ひっ♡♡♡♡!! 指っ♡♡♡♡!!」

「一本だけ。……中、熱いね」

膣内の温度と、締め付け。指一本を入れただけで、きゅうっと吸い付いてくる。内壁の粘膜がとろとろに滑って、指を歓迎するように蠢いている。

指で中を探る。前壁のざらついたスポットを見つけ、指の腹でくいくいと押した。

「やぁぁっ♡♡♡♡!! Gスポットっ♡♡♡♡!! 舌とっ♡♡♡♡、同時はっ♡♡♡♡……!!」

「イきそう?」

「イきっ♡♡♡♡……イきそ♡♡♡♡……」

「——我慢して」

「えっ♡♡♡♡!?」

舌と指の動きを、ぴたりと止めた。

「ま、マツバさん♡♡♡♡!! なんでっ♡♡♡♡、止め……」

「まだイかないで。もっと、溜めてから」

「そんなっ♡♡♡♡……!!」

寸止め。絶頂の直前で止められたイヨリが、涙目で僕を見上げている。

ぷるぷると震える唇。とろんと蕩けた瞳。もう少しで天国に行けたのに引き戻された、切ない表情。

この顔が見たかった。

「……意地悪♡♡♡♡」

「うん。意地悪だよ。だって——」

イヨリの体内から指を引き抜き、目の前で見せる。中指が、透明な蜜でてらてらと光っている。

「——イヨリが気持ち良さそうな顔、もっと見たいから」

高ぶりが少し引いたのを確認してから、再び舌と指の動きを再開した。

ゆっくり。ゆっくり。

もう一度、絶頂の波が近づいてくるのを感じる。イヨリの呼吸が荒くなり、内壁が指を締め付け始め、太腿が微かに震え出す。

今度は——止めなかった。

「マツバさ♡♡♡♡!! イくっ♡♡♡♡!! イっていいですかっ♡♡♡♡!!」

「——イっていいよ。イヨリ」

真珠をちゅうっと唇で吸い上げ、同時にGスポットを力強く押し上げた。

「ッ♡♡♡♡♡♡♡♡!!!」

第一波。

イヨリの全身がぎゅうっと弓なりに反り返り、内壁が指をぎゅうぎゅうと締め付けた。透明な液体がびしゃっと溢れ、僕の手と顎を濡らす。

潮を吹きながら、「マツバさん♡♡♡♡、マツバさん♡♡♡♡」と名前だけを繰り返すイヨリの声を、耳の奥に刻み込む。

びくびくと痙攣が収まるのを待ちながら、内壁のうねりを指で感じ続けた。

締め付けが、徐々に緩んでいく。

「……は♡♡♡♡……ぁ♡♡♡♡……」

余韻で蕩けた顔。

力の抜けた四肢。

汗ばんだ白い肌。

この姿を見せてくれるのは、僕だけだ。

*    *    *

イヨリが余韻から戻るのを、焦らずに待った。

額の汗を拭い、乱れた黒髪を指で梳いてやる。頬にキスをし、耳朶を軽く噛み、「気持ちよかった?」と囁くと、真っ赤な顔でこくこくと頷いた。

「……マツバさんは、まだ……」

イヨリの視線が、僕の腰元に落ちた。

——ああ。

当然、とっくに限界だ。

イヨリを愛撫している間ずっと、僕自身は布越しにはち切れそうなほど硬くなっていた。イヨリの甘い声を聞くたびに、内壁の感触を指で感じるたびに、血が滾って疼いて仕方なかった。

でも、急がない。

「入れていい?」

「……はい♡♡♡♡」

自分の衣服を脱いだ。

屹立したそれが、行灯の光に晒される。

イヨリが、それを見て息を呑んだ。

「……大きい♡♡♡♡」

「イヨリのせいだよ。あんな声出されたら」

「わ、私のせいにしないでください♡♡♡♡!!」

「事実だから」

イヨリの太腿の間に身体を沈め、先端を入口にあてがった。

たっぷりの蜜が、先端と花弁の間でぬるりと滑る。蜜の温度は、イヨリの体内温度そのもの。温かくて、とろとろで、触れただけで先端の神経が歓喜の電撃を脳に送り込んでくる。

——落ち着け。ここからが、本番なんだ。

先端を入口に当て——押し込まない。

ただ触れているだけ。くちぶるが先端に柔らかく密着し、蜜がとろとろと溢れて僕の先端を包んでいる。

「マツバさ……♡♡♡♡ 入れて……?♡♡♡♡」

「うん。押し込むよ。ゆっくり」

腰を、ほんの一ミリだけ前に送った。

先端の最も太い部分が、花弁を押し広げ始める。

ずぷ……。

「あっ♡♡♡♡……」

ぬるりと滑って、先端が入口を通過した。

「っ……!」

——熱い。

先端だけを呑み込んだイヨリの中が、信じられないほど熱い。蜜でとろとろに潤んだ内壁が、先端をきゅうっと吸い込むように締め付けてくる。

ぞくぅっ、と快感が背筋を駆け上がった。

先端だけで、もうこれだ。

「く……っ」

歯を食いしばった。思わず声が漏れる。

「……マツバさん? 痛いですか?」

「痛くない。……気持ちよすぎて、声が出た」

「…………♡♡♡♡」

イヨリの頬が、ぽっと赤く染まった。

腰を、もう少しだけ前に送る。ゆっくり。ゆっくり。一寸、また一寸。

ずぷ……ずぷぷ……。

内壁が、入ってくる異物——僕を、ぐにぐにと絡みつくように受け入れていく。蠕動する粘膜が幹を上から下まで包み込み、何百もの柔らかいひだが、表面を這うように蠢く。

「あぁ♡♡♡♡……入ってくる♡♡♡♡……ゆっくりだから♡♡♡♡、全部わかる♡♡♡♡……」

「僕も……全部感じてる。イヨリの中の形、ぜんぶ……っ」

半分ほど入った。

ここで——止まった。

動かない。

「え……?♡♡♡♡」

「ここで……少し、こうしていたい」

半分だけ入った状態で、内壁の感触を味わう。きゅう、きゅう、と収縮する粘膜が、幹を万力のように締め付けながら、同時にとろとろの蜜で潤滑し続けている。

快感と理性の綱引きが始まっている。

射精したい。今すぐ、一気に最奥まで突き入れて、イヨリの一番深いところで果てたい。本能がそう叫んでいる。

——でも、まだだ。

もっとイヨリの蕩けた顔を見ていたい。もっとこの温かい中にいたい。射精してしまったら、この幸福な時間が終わってしまう。

だから——我慢する。

「マツバさん……?♡♡♡♡ 大丈夫、ですか?♡♡♡♡」

「大丈夫。……少し、気持ちよすぎて。コントロールしてる」

「……我慢、してるんですか?♡♡♡♡」

「……うん。イヨリの中、気持ちよすぎて。すぐイきそうになる」

「っ♡♡♡♡!!」

正直に言うと、イヨリの顔がさらに赤くなった。

「……全部入れて♡♡♡♡ 全部ほしい♡♡♡♡」

「……っ。そういうこと言うの、反則だよ」

残りの半分を——ゆっくりと、ゆっくりと——押し込んだ。

ずぷぷぷ……。

内壁が更に深いところで新しい蠕動を始める。奥に行けば行くほど内壁の温度が上がり、締め付けがきつくなる。

そして——先端が、最奥の壁に触れた。

こつん。

「ひぁっ♡♡♡♡!!!」

「っ……!!!」

同時に声が漏れた。

子宮口。

先端が、そこにこつん、と触れた瞬間、イヨリの膣内全体がぐぅっと収縮し、僕を根元まできつく飲み込んだ。

——やばい。

脳天から足の爪先まで、快感の電撃が突き抜けた。全身の神経が悲鳴を上げている。射精しろ、と。ここで果てろ、と。こんなに気持ちいいのに我慢するな、と。

ぐっ、と下腹部に力を込めた。歯を食いしばり、目を強く閉じる。

「マ、マツバさん……っ?♡♡♡♡」

「大丈……夫。……少し、待って」

荒い呼吸が、自分でも聞こえる。額から汗が一筋流れ落ちた。

全部を入れた状態で、動かない。

イヨリの中に、完全に埋まっている。

この感覚を——刻み込む。

先端は子宮口に触れて、温かい壁が脈打つように押し返してくる。幹の全体を、とろとろの内壁がぎゅうぎゅうと包み込んでいる。根元には花弁が密着し、そこからさらに蜜が溢れ出して、結合部をぬるぬるに濡らしている。

「イヨリ」

「……はい♡♡♡♡?」

「今、イヨリの中で——僕、めちゃくちゃ気持ちいい」

「…………♡♡♡♡♡♡」

「全部感じてる。イヨリの熱さ。柔らかさ。締め付け。蜜のとろとろ感。全部」

「やっ♡♡♡♡……言わないで♡♡♡♡……恥ずかし♡♡♡♡……」

「恥ずかしがるイヨリも好き」

僕は目を開けて、イヨリの顔を見下ろした。

結合したまま動かないでいる間に、イヨリの表情が変化していた。

挿入の衝撃からの余韻が引いて、代わりに——奥を満たされている充足感と、それでもまだ足りないもどかしさが、顔の表面に浮かんでいる。

動いてほしい。でも、この繋がったまま見つめ合う時間も好き。

そんな矛盾した感情が、蕩けた瞳の奥に渦を巻いている。

「動くよ。でも——ゆっくりだから」

「……はい♡♡♡♡」

*    *    *

腰を、ゆっくりと引いた。

ずるり、と内壁が僕を名残惜しそうに追いかけてくる。とろとろの蜜が幹の表面をぬらぬらと滑り、先端近くまで引き戻したところで——また、ゆっくりと押し込む。

ずぷ……。

「あっ♡♡♡♡……」

一往復目。

ゆっくりだからこそ、全部がわかる。内壁の一つ一つのひだが、僕の幹を撫でていく感触。蜜のとろとろとした潤滑と、粘膜のきゅうきゅうとした締め付けが交互に押し寄せてくる。

引いて、戻す。引いて、戻す。

ずるり。ずぷり。ずるり。ずぷり。

「ん♡♡♡♡……あ♡♡♡♡……マツバさ♡♡♡♡……」

イヨリの声が、一突きごとにこぼれ落ちる。甘くて、柔らかくて、吐息混じりの可愛らしい声。

その声を聞くたびに——僕の理性が、少しずつ削れていく。

「っ……く……」

奥まで突き入れるたびに、先端が子宮口に当たる。こつん、と。そのたびに、イヨリの内壁がぎゅっと収縮して僕を締め付け、射精の衝動が下腹部から駆け上がってくる。

——我慢しろ。

腰の動きを、意図的に遅くした。引くのに三秒。押し込むのに三秒。一往復六秒。

普段の激しいセックスでは、一秒に二往復、三往復することもある。それに比べれば、この速度は異常なほど遅い。

でも——この遅さが、快感を何倍にもしている。

ゆっくり動くからこそ、内壁の一つ一つのひだとの摩擦が鮮明に感じ取れる。蠕動する粘膜の動きが、微細な波のように幹全体を包んでいるのがわかる。入口でぎゅっと締め付けられる感覚と、中ほどでとろっと緩む感覚と、最奥でまたきゅっと吸い付かれる感覚。三つの異なるテクスチャが、一往復の間に順番に味わえる。

「く……っ、はぁ……っ」

苦しい。気持ちよすぎて、苦しい。

「マツバさんっ♡♡♡♡……苦しそ……♡♡♡♡ 大丈夫ですか……?♡♡♡♡」

「……大丈夫。イヨリの中が……気持ちよすぎて」

「っ♡♡♡♡!」

「射精……我慢してる。もっとイヨリの中にいたいから」

正直に言った。

イヨリの目が、とろんと蕩けた。

「……我慢、しなくていいですよ♡♡♡♡?」

「いい。まだ出さない。もっと……もっと感じてる顔、見せて」

腰のリズムを変えずに、角度だけを微調整した。

イヨリの弱い場所を、僕は知っている。千里眼なんか使わなくても。何百回もこの身体を愛してきた経験が、すべてを教えてくれている。

ほんの少し腰を持ち上げる角度にして——Gスポットを、幹の上面が擦るように。

ずぷ……っ。

「あっ♡♡♡♡!! そこっ♡♡♡♡!!」

当たった。

内壁のざらついた前壁——Gスポットを、ゆっくりと幹が擦り上げた。

「やぁっ♡♡♡♡……!! そのスピードでっ♡♡♡♡、ゆっくり当てられるのっ♡♡♡♡……ずるいっ♡♡♡♡!!」

ずっぷ……ずるっ……ずっぷ……ずるっ……。

ゆっくり。ゆっくり。Gスポットの真上を、時間をかけて舐めるように通過する。

「あっ♡♡♡♡……あっ♡♡♡♡……は♡♡♡♡、ぁ♡♡♡♡……いいっ♡♡♡♡……気持ちいっ♡♡♡♡……」

イヨリの声が質が変わった。切迫した甘さから、じんわりと身体の芯から溶け出すような、深い陶酔の声に。

ゆっくりの方が、感じる。僕も。イヨリも。

「く、ぅ……はぁっ……」

歯の隙間から、荒い呼吸が漏れる。

Gスポットを擦るたびに、内壁がきゅっと幹を吸い上げるように締め付けてくる。まるで「そこ」と印を押すように。その締め付けのたびに、先端から腰の奥まで、射精の前触れのような甘い波が走り抜ける。

——出そう。もう出そうだ。

腰の動きを、さらに遅くした。一往復、十秒。

「マツバ、さん……♡♡♡♡?」

「……ごめん。今、すごくやばい」

「やばいっ♡♡♡♡?」

「イヨリの中が……気持ちよすぎて。もう少し……ゆっくりにさせて」

額から、汗が一滴落ちた。イヨリの鎖骨に着弾して、白い肌の上を滑り落ちていく。

「……我慢、しなくていいって、言いましたよ♡♡♡♡?」

「嫌だ。まだ出さない。もっとイヨリを見ていたい」

僕の声が、自分でもわかるくらい低く震えている。

イヨリが——微笑んだ。蕩けた瞳で、汗まみれの僕を見上げて、世界で一番優しい微笑みを浮かべた。

「……マツバさんっ♡♡♡♡」

両手を伸ばして、僕の頬を挟んだ。

「……好きです♡♡♡♡ 大好きです♡♡♡♡」

——反則だ。

今の僕に、その言葉は、あまりにも破壊力がありすぎた。

ぶるっ、と全身が震えた。射精の衝動が、津波のように下腹部に押し寄せてきた。必死に腹筋に力を入れて、波を食い止める。

「……っ! イヨリ……今のは危なかった……」

「えっ♡♡♡♡!? 私何か……♡♡♡♡」

「好きって言われたら、出そうになった」

「…………♡♡♡♡♡♡♡♡!!」

イヨリが、両手で顔を覆い隠した。繋がったまま。

「そ、そんなっ♡♡♡♡!! 好きって言っただけでっ♡♡♡♡!!」

「イヨリの声と、表情と、中の締め付けが同時に来ると……理性が、砕ける」

でも、砕けない。まだ砕かない。

深呼吸を一つ。二つ。三つ。

射精の波が引いていくのを感じながら、ゆっくりとピストンを再開した。

今度は、角度を変えた。Gスポットよりもっと奥。子宮口の少し手前の、ポルチオエリア。

先端を奥壁の少し手前で止めて、そこから小さく——こつん、こつん、と。

「ひぁっ♡♡♡♡!! 子宮っ♡♡♡♡!!」

子宮口への微小なノック。大きく突くのではなく、先端だけで小さく、優しく、でも正確に。

こつん。こつん。こつん。

「やぁっ♡♡♡♡!! ゆっくりなのにっ♡♡♡♡、子宮にっ♡♡♡♡、響くっ♡♡♡♡……!!」

ゆっくりだからこそ、ポルチオへの刺激が一つ一つ鮮明に伝わる。激しいピストンでは流れてしまう快感が、ゆっくりだと一粒一粒の衝撃として子宮に吸収されていく。

「あっ♡♡♡♡! あっ♡♡♡♡! あっ♡♡♡♡!」

一突きごとに、イヨリの声が上がる。

同時に——一突きごとに、子宮口が先端をちゅくっと吸い付いてくる。

——勘弁してくれ。

子宮口が先端に吸い付くたびに、射精の衝動が電流のように走り抜ける。出口と先端が密着する感覚は、もう限界だ。

「く……っ! はぁっ……はぁっ……!」

呼吸が荒い。全身が汗でびしょびしょになっている。腕が震えている。

でも——見てしまう。イヨリの顔を。

目は蕩けきっていて、焦点が合っていない。唇は半開きで、一突きごとに甘い声と吐息がこぼれる。頬は紅潮し、湿った黒髪が額と首に張り付いている。

この顔だ。この顔が見たくて、この身体の中にいたくて、僕は射精を我慢している。

射精したら、この時間が終わる。繋がっている時間が終わる。イヨリの蕩けた表情が、声の甘さの微細なグラデーションが——全部、終わってしまう。

だから——もう少しだけ。

「イヨリ……っ」

「……はいっ♡♡♡♡?」

「今の角度……ここが一番弱い?」

「っ♡♡♡♡!! 子宮のっ♡♡♡♡……左上のっ♡♡♡♡……そこが♡♡♡♡……一番♡♡♡♡……」

知ってる。千里眼なしでも、もう身体が覚えている。子宮口の左上——ポルチオの最弱点。

先端の角度を、ミリ単位で調整した。

こつん。

「ッッ♡♡♡♡!!!」

当たった。ピンポイントで。

「そこぉっ♡♡♡♡!! そこですっ♡♡♡♡!! 一番弱いっ♡♡♡♡!!」

こつん。こつん。こつん。

ゆっくり。でも正確に。その一点だけを、先端で小さく、丁寧に、繰り返し叩く。

「やっ♡♡♡♡!! やっ♡♡♡♡!! だめぇっ♡♡♡♡!! ポルチオっ♡♡♡♡!!」

イヨリの全身が、びくびくと激しく震え始めた。深い場所からの絶頂が、ゆっくりと——しかし確実に——近づいてきているのが、内壁の反応でわかる。

幹全体がうねるように締め付けられ、蜜の量が一気に増えた。じゅぷじゅぷと淫らな水音が行灯のパチパチという音に重なって寝室に響く。

「マツバさっ♡♡♡♡!! イくっ♡♡♡♡!! ポルチオでイっちゃうっ♡♡♡♡!!」

「イっていいよ。全部僕に見せて」

こつん——最後の一突きを、最弱点に吸い込ませるように押し当てた。

「ッ♡♡♡♡♡♡♡♡!!!!」

第二波。前の絶頂よりも深い場所から、津波のような快感がイヨリの全身を飲み込んだ。

ぎゅうぅぅぅっ——!!

子宮がぎゅうぅっと収縮し、先端を吸い付くように飲み込んだ。内壁全体がぐにゅぐにゅと脈打ち、僕の幹を万力のように締め上げる。

「あぁぁっ♡♡♡♡!! 中がっ♡♡♡♡、きゅうってっ♡♡♡♡……!!」

じゅぷぷっ——結合部から潮が溢れ出し、僕の腿を濡らしていく。

——っっっっ!!

やばい。やばいやばいやばい。

イヨリの絶頂時の締め付けが、あまりにも強すぎる。膣内のすべての筋肉が律動的に収縮し、先端を根元を、全方位から絞り上げてくる。

射精の衝動が——もう、理性の堤防を八割は浸水させている。

「くぅっ……!! はぁぁっ……!!」

唸った。獣のように。

腹筋を限界まで引き締めた。額に浮かんだ汗が、顎から滴り落ちる。

——出すな。まだ出すな。もう少しだけ——。

イヨリの絶頂の余韻が、びくびくと長く続いている。内壁の収縮がゆっくりと弱まっていく。その一つ一つの波が、甘美な拷問のように僕の理性を削り続けている。

「……っ、はぁ、はぁ……」

荒い呼吸の中、イヨリの蕩けきった顔を見つめた。

涙が一筋、右の頬を伝って流れていた。

「……泣いてる?」

「……気持ち、よすぎて♡♡♡♡……泣いちゃった♡♡♡♡……ごめんなさい♡♡♡♡……」

——もう、限界だ。

これ以上は無理だ。この人の涙を見て、この声を聞いて、この中にいて、我慢し続けるなんて——僕は人間で、イヨリを愛している人間なんだ。

「イヨリ」

「……はいっ♡♡♡♡」

「もう——我慢できない」

イヨリが、潤んだ瞳で僕を見上げた。

そして——両腕を僕の首に回した。

「……来てください♡♡♡♡ マツバさんの全部♡♡♡♡、ください♡♡♡♡」

両足が——腰に回ってきた。

だいしゅきホールド。

左足は力が弱い。後遺症で、しっかりとは締め付けられない。でも、ぷるぷると震えながらも、全力で僕の腰に巻きつこうとしている。

「離さないっ♡♡♡♡……絶対っ♡♡♡♡……」

理性が——白く、砕けた。

腰が勝手に動き始めた。

ずっぷ——!!

「あっ♡♡♡♡!!」

ずっぷ、ずっぷ、ずっぷぷっ!!

「あっ♡♡♡♡! あっ♡♡♡♡! あっ♡♡♡♡!」

ゆっくりだったリズムが崩れた。でも——早すぎはしない。激しすぎもしない。射精の直前に、ポルチオの最弱点を正確に突き続ける——イヨリの身体を知り尽くした男だからこそできる、限界ぎりぎりのピストン。

「マツバさっ♡♡♡♡!! もう一回っ♡♡♡♡!! また、イくっ♡♡♡♡!! 一緒にっ♡♡♡♡!!」

「僕も……もう……っ!!」

声が掠れる。全身の筋肉が悲鳴を上げている。

——一緒に。この人と一緒に。

「イヨリ——一緒に——イけ」

最後の一突き。ポルチオの最弱点を、真正面から、全身のすべてを込めて————。

「ッ♡♡♡♡♡♡♡♡!!!!!!」

同時。

どくんっっっ!!

射精した。我慢に我慢を重ねた、全てが。

灼熱の精が、子宮口から子宮の中に激流のように注ぎ込まれた。どくんっっ、どくんっっ、と脈打つたびに、蓄えに蓄えた全てが放出されていく。一回、二回、三回、四回——止まらない。止められない。

同時にイヨリの子宮が、搾り取るように、ぎゅうぎゅうと律動して先端を締め上げ続けている。

「あぁっ♡♡♡♡……!! 出てるっ♡♡♡♡……!! 子宮にっ♡♡♡♡、いっぱいっ♡♡♡♡……!!」

「っ……は、あぁ……っ! イヨリ……っ!」

どくん。どくん。どくん。

ただ出すだけの射精じゃない。イヨリの子宮の奥に、僕の全てを注ぎ込む行為。精液の一滴一滴に込められた想いが、彼女の体内に染み渡っていく。

だいしゅきホールドの腕と足が、まだ僕を離さない。左足がぷるぷると限界まで震えながら、それでも一滴も逃がすまいと腰にしがみついている。

「イヨリ……っ、左足、無理するな……」

「いいっ♡♡♡♡……離したくないっ♡♡♡♡……まだ♡♡♡♡……」

最後の一滴まで絞り出されて。

射精の波が、ゆっくりと引いていった。

——出し切った。ずっとずっと我慢してきた分、全部。

全身の力が、一気に抜けた。

崩れるように、イヨリの上に倒れ込む。体重をかけないよう肘で支えたかったのに、もう腕に力が入らない。

「……ごめん、重い?」

「ううん♡♡♡♡……幸せです♡♡♡♡……マツバさんの体温が♡♡♡♡、全部伝わってきて♡♡♡♡……」

まだ繋がったまま。先端は子宮口に密着したまま、精液の温もりが二人の間でゆっくりと体温に馴染んでいく。

「……最高だった」

「……マツバさんもですか♡♡♡♡?」

「うん。……人生で一番気持ちよかったかもしれない」

「……毎回、それ言ってます♡♡♡♡」

「毎回、本当のことだよ」

*    *    *

しばらくして、ゆっくりと身体を離した。

繋がりが解かれる瞬間、名残惜しさが胸を刺す。

ぬるり、と引き抜くと、花弁の間から白い液体がとろりと溢れ出した。たっぷりと注ぎ込まれた精液が、重力に従って太腿を伝い落ちていく。

「……すごい量♡♡♡♡」

「我慢してたから。溜まってた」

「……もうっ♡♡♡♡」

ぬるま湯で濡らしたタオルを持ってきて、イヨリの身体を丁寧に拭いた。太腿の蜜と精液を優しく拭い取り、汗ばんだ胸元と首筋を冷やしてあげる。鼠径部と乳首に咲いた赤い花——キスマークの上にも、労わるようにタオルを当てた。

「痛いところは?」

「ないです♡♡♡♡ ……あるのは、幸せだけ♡♡♡♡」

「……そういうこと言うの、反則だって言ったでしょ」

「マツバさんが先に反則したからです♡♡♡♡」

僕の甚平の上衣をイヨリに羽織らせた。僕の身体よりずっと小さいイヨリには、だぶだぶだ。袖から指先しか出ない。

——見たかった。僕の服を着たイヨリを。所有の証。独占の喜び。

布団に並んで横になり、イヨリの腰に腕を回した。大きな手のひらで、お腹をそっと包む。いつもの定位置。

「……ねえ、マツバさん」

「ん?」

「今夜は、本当にゆっくりでしたね♡♡♡♡」

「うん。ゆっくりしたかったから」

「……どうしてですか♡♡♡♡? いつもは……その……激しい、のに♡♡♡♡」

しばらく考えた。どう言えば伝わるだろう。この気持ちを。

「……イヨリの中にいる時間を、一秒でも長くしたかった」

「…………♡♡♡♡」

「射精したら終わりでしょ。繋がっている時間が。だから、できるだけ長く我慢して……一秒でも長く、イヨリの中にいたかった」

背中越しの沈黙。

「……それに、気持ちいい。イヨリの中。気持ちよすぎて、本当に出そうになるのを堪えるのは……正直、地獄だった」

「地獄♡♡♡♡!?」

「最高に幸福な地獄。……でも、イヨリがよがってる顔を見てたら、もっと見たいって思って。もっと聞きたいって思って。もっと繋がっていたいって思って。だから理性を総動員して……我慢した」

「…………マツバさん♡♡♡♡」

イヨリが、布団の中でくるりと寝返りを打ち、僕に正面から抱きついてきた。甚平越しに、柔らかい胸が僕の胸板に押し付けられる。

顔を上げたイヨリの瞳が、月明かりの中で潤んでいた。

「……わたし♡♡♡♡」

「うん」

「マツバさんが我慢してるの♡♡♡♡、わかってました♡♡♡♡」

「……気づいてたの?」

「はい♡♡♡♡ だって……呼吸がすごく荒くて♡♡♡♡、腕が震えてて♡♡♡♡、額に汗がいっぱい出てて♡♡♡♡……必死に堪えてるの♡♡♡♡、全部見えてました♡♡♡♡」

「…………」

「それが……すごく、嬉しかったです♡♡♡♡」

イヨリの声が、ほんの少し震えた。

「だって♡♡♡♡……それだけ♡♡♡♡、私と繋がっていたいって♡♡♡♡、思ってくれてるってことでしょう♡♡♡♡?」

胸の奥が、ぎゅっと締まった。

この人は。この人は、いつもそうだ。僕が言葉にできなかったことを、全部わかってくれている。

「……当たり前でしょ。イヨリと繋がっている時間が、僕にとって一番幸せな時間なんだから」

「…………泣いちゃう♡♡♡♡」

「泣いていいよ」

「事後に泣くの♡♡♡♡、二回目です♡♡♡♡」

「最初のは快感のせいだけど、今回は僕のせいだね」

「どっちもマツバさんのせいです♡♡♡♡」

笑いながら泣く。そのアンバランスが、とてつもなく可愛い。

額の傷跡に、キスを落とした。涙の跡にも。頬にも。まぶたの上にも。

「……おやすみ、イヨリ」

「おやすみなさい♡♡♡♡ マツバさん♡♡♡♡」

腕の中に収まったイヨリが、すとん、と眠りに落ちていく。

最後に見えた寝顔は、今夜一番の笑顔だった。

——一秒でも長く。

いや、一生。

この腕の中に、この人がいてくれるなら。

僕は、それだけで。

行灯の炎が、かすかに揺れた。障子の向こうで秋の虫が歌い続けている。エンジュの夜は深く、静かで、どこまでも優しかった。

――了――

あとがき by 佐藤美咲

今回はマツバさんの一人称視点でお届けしました!♡♡ 「気持ちよすぎてイきそうなのを、もっとイヨリちゃんの顔を見たくて必死に我慢する」という最高に萌えるシチュエーションです! いつもはSっ気のあるマツバさんが、イヨリちゃんの可愛さにノックアウトされて我慢の限界に挑む姿、楽しんでいただければ幸いです♡

最後までお読みいただきありがとうございました♡