DARK MATSUIYO TALE (R-18)

囚われの白百合、愛執の枷

― 穏やかな微笑みと、逃げられない檻 ―
マツバ×イヨリ / ヤンデレ・ドス黒 / 無理やりR18 / 【真】全文掲載

 エンジュシティの夜は、どこまでも深く、そして冷たい。

 特に晩秋から冬にかけての季節は、盆地特有の底冷えする空気が街全体をすっぽりと覆い尽くし、石畳の路地には立ち込めるような濃霧が這う。歴史ある木造建築の連なりは霧の中で黒々としたシルエットに変わり、まるで外界から隔絶された幻の都に迷い込んだかのような錯覚を抱かせる。

 そんな静寂に包まれた古都の夜道を、一つの足音——いや、二つの不揃いな足音が、逃げるように、あるいは追うように響いていた。

「マツバさん……っ、あの、少し、歩くのが早くて……」

 イヨリは小走りで、前を行く高く広い背中を必死に追いかけていた。

 彼女の左足には、二年前の事故による後遺症が残っている。デボンコーポレーション製の最新鋭医療デバイス『アステア・システム』の補助があるとはいえ、冷え込みの厳しい夜にヒールのある靴で急ぎ足をするのは、彼女にとって容易なことではない。

 普段の彼なら。

 普段の、誰よりもイヨリを愛し、慈しみ、「硝子の心臓」のように大切に扱うスパダリの夫——エンジュシティのジムリーダー、マツバなら。

 彼女が少しでも息を切らせば、すぐに立ち止まってくれるはずだ。「ごめんね、イヨリちゃん。寒かった? 足、痛む?」と、眉を下げて優しく微笑み、彼女を抱き上げるか、せめて自分のストールで包み込みながらゆっくりと歩調を合わせてくれるはずなのだ。

 しかし、今夜は違った。

 彼は一度も振り返らない。

 繋がれた右手——いや、もはや「掴まれている」という表現が正しいだろう——の手首には、骨が軋むほどの強い力が込められている。痛い。痛いが、それ以上に、彼の背中から放たれる圧倒的な冷気と怒りのオーラが、イヨリの声を萎縮させていた。

「マツバさん……っ。手、痛いです。お願いですから、少し止まって……」

 涙声で懇願しても、彼は無言のまま歩みを止めない。

 金色のツンツンとした髪に巻かれた紫のバンダナ。その奥にあるはずの紫色の瞳は、今は深い闇よりも暗く沈み込んでいるに違いない。

 彼の纏う空気が、尋常ではないほど冷え切っている。文字通り、彼の相棒であるゲンガーやゴーストポケモンたちが放つ霊的な冷気よりもさらに冷たく、そして重い。大気がギリギリと悲鳴を上げているような、そんな錯覚さえ覚えるほどの、圧倒的な威圧感。

 原因は、痛いほど分かっている。

 今夜、エンジュシティの格式高い料亭で開かれた、医療関係者の会合。

 イヨリが以前勤めていた、カントー地方のタマムシ大学病院時代の先輩医師がジョウト地方の視察に訪れており、その歓迎会を兼ねた集まりだった。イヨリは旧家の妻としてのしがらみやら、今後の医療連携やらを考慮し、どうしても出席せざるを得なかった。そしてマツバは、彼女の『保護者』という名目で当然のように同席していた。

 会合の半ばまでは、和やかな雰囲気だった。

 マツバは完璧な「エンジュの顔」としての笑みを絶やさず、穏やかな物腰で同席者たちと談笑していた。イヨリもまた、久しぶりの旧友や先輩たちとの再会に花を咲かせ、張り詰めていた緊張を少しだけ解いていた。

 ——それが、致命的な油断だったと気づいたのは、取り返しがつかなくなってからだ。

『イヨリ君、随分と綺麗になったね。学生の頃から優秀で魅力的だったけど、結婚してからはもっと……なんというか、色っぽくなったな』

 酒が入り、少しだけ羽目を外した先輩医師が、冗談交じりにそう言った。

 それだけなら、ただの酒席の世辞で済んだかもしれない。イヨリも「からかわないで下さいよ、先輩」と、困ったような愛想笑いでやり過ごそうとしていた。

 しかし、彼が——あろうことか、イヨリの肩に軽く手を置き、親しげに顔を近づけた瞬間。

 料亭の広間の温度が、一瞬にして氷点下まで急降下した。

 同席していた者たちが一斉に震え上がり、息を呑んだ。

 障子がガタガタと鳴り、どこからともなく、カタカタ、クスクスという、ゴーストたちの底冷えする笑い声が響き渡った。

 マツバは笑顔だった。完璧な、いつも通りの穏やかで神秘的な微笑み。しかし、その紫色の瞳には、一切の光が、温度が存在しなかった。完全なる『虚無』。

『……気安く触れないでいただけますか。彼女は、僕の妻ですので』

 静かで、低く、しかし鼓膜を直接震わせるような恐ろしい威圧感を伴った声。

 先輩医師の手は、見えない何かに強く弾かれたように離れた。彼の顔面は蒼白になり、カタカタと震え出した。

 会合は、そのまま凍りついた空気の中で強制終了となった。誰も一言も発することができず、ただマツバがイヨリの手を引き、冷ややかな一瞥を残して料亭を去るのを、恐怖に強張った顔で見送るしかなかった。

 そして今に至る。

 エンジュの一等地に構える、古く広大な旧家の門。

 その門をくぐり、玄関に入るや否や、マツバはイヨリの手首を掴んだまま、強引に奥の寝室へと向かった。廊下の板張りが、彼の乱暴な足音でドタドタと鳴る。

「ま、マツバさんっ! 待ってください、まだ靴も……服も、着替えて——」

「……静かにしてね」

 低く、地の底から這い出るような、けれどひどく甘い声。

 寝室の襖が、ピシャリと雷のような音を立てて乱暴に閉められた。

 六畳の和室。行燈の薄暗い橙色の灯りだけが、二人の影を障子に長く引き伸ばしている。マツバは振り返ると、イヨリの肩を突き飛ばすようにして、畳の上に押し倒した。

「きゃっ……!」

 受け身を取る暇もなかった。仰向けに倒れ込んだイヨリの上に、マツバがすぐさま馬乗りになる。両膝で彼女の太腿を挟み込み、完全に逃げ場を塞ぐ。

「マツバ、さん……? どうしたんですか、こんなに乱暴に……痛いです、手……」

 イヨリの声が恐怖で震えていた。

 彼女が見上げる瞳の奥——マツバの顔は、行燈の逆光で黒く翳り、瞳だけが妖しく、爛々と紫色の光を放っていた。その光の中には、ドロドロに煮詰まった漆黒の独占欲、狂気にも似た執着、そして何より、灼熱の嫉妬が渦を巻いていた。

 口調こそいつも通りの穏やかさだが、そこにあるのは、獲物を絶対に逃さないと決めた、飢えた獣の顔だった。

「……あの男の人、誰だい?」

 静かな、しかし絶対零度の声が、イヨリの鼓膜を打った。

「だ、誰って……さっきも言いましたけど、大学時代の、一つ上の先輩で……同じ研究室だっただけで……」

「先輩、なんだね。ふうん。……それで、どうしてあの人は君の肩に触れたのかな? どうしてあんなに至近距離で、君に顔を近づけていたんだろう?」

「そ、それは……! お酒が入っていたし、ただの昔話で盛り上がって、たまたま距離が近くなっただけで……深い意味なんて、全く……」

「盛り上がって? 君も、あの人の前で笑っていたね。僕の知らない顔で、すごく楽しそうに。頬まで赤らめてさ」

「違います! あれはただの愛想笑いで、お世話になった先輩だから無下にできなくて、困っていただけで……っ!」

「愛想笑い? 僕以外の男の人に、あんなに可愛い顔を見せたっていうのかい?」

 マツバの両手が、イヨリの細い手首を掴み、頭上の畳に強く押さえつけた。

 ギリッ、と骨が軋むほどの強い力。言葉は優しいのに、手加減など一切ない。

「痛っ……! ひぐっ……マツバさん、離して……痛いです……」

 あまりの痛みに、イヨリの目からぽろりと大粒の涙が零れ落ちた。普段なら、彼女が少しでも顔を歪めれば、飛んで謝ってくるはずの夫だ。しかし今のマツバは、イヨリの涙を見ても、少しもその柔らかい微笑みを崩さなかった。

「痛い? ……君が他の男の人に触れられた時、僕の心がどれだけ痛かったか、君には分かるかい?」

 マツバの顔が、イヨリの顔すれすれまで近づく。

 甘いハーブの香りなどしない。怒りと嫉妬に燃え、血の匂いすら錯覚させるような、獣の荒い吐息。

「他の男の人に愛想を振りまくなんて、絶対に許さないよ。君の笑顔も、声も、その白い肌も、その少し不自由な左足も……全部、全部。……全部、僕のものだからね。僕だけのものだよ」

「マツ、バさ……んっ、うぅっ……ごめんなさ、い……だから……怒らないで……っ」

 ぽろぽろと零れる涙が、イヨリの頬を伝って畳に染みを作っていく。恐怖と悲しさで、彼女の身体は小刻みに震え始めていた。

 しかしマツバは片手でイヨリの両手首を固定したまま、もう片方の手で、自分が常に首に巻いている紫色のマフラーを乱暴に外した。

 そして、イヨリの頭上に固定した両手首を束ね、そのマフラーでぐるぐると縛り上げ始めた。

「なっ……何してるんですかっ!? やめて、やめてくださいっ……解いて……っ!!」

「無理だよ。解かない」

 マツバの手つきは容赦がなかった。抵抗するイヨリの手首を強引に捩り、マフラーをきつく結びつける。布越しながらも、痛いほどの締め付け。完全に自由を奪われた両手が、頭上の畳に縫い付けられる。

「いやぁっ……! マ、マツバさん……嘘ですよね……? こんなの、ひどいです……うわぁぁんっ……」

 イヨリはついに声を上げて泣き始めた。見捨てられる恐怖、乱暴に扱われる恐怖が彼女の心を支配していく。

「嘘じゃないよ。君が悪いんだからね、イヨリちゃん。僕をこんなに不安にさせて、狂いそうなくらい怒らせたんだから」

 穏やかな呼び方とは裏腹に、マツバの言葉の端に、深い絶望とトラウマの片鱗が一瞬だけ覗いた。

「……少し、お仕置きが必要だね。君の身体の隅々まで、君が誰のものなのか、骨の髄までしっかり教えてあげるよ」

 薄暗い行燈の光の中、マツバの指先が、イヨリの着ているフォーマルなワンピースの襟元にかかった。

 この日のために彼自身が選び、プレゼントしてくれた、上質なシルクが混ざった高価な服。

「あっ……だめっ……!」

 ビリッ————!!!

 布が無惨に裂ける甲高い音が、静寂の寝室に響き渡った。

 マツバは躊躇いなく、両手でワンピースの胸元から裾までを、一直線に引き裂いたのだ。

「ああっ……! 服が……っ。ひぐっ、うぅぅっ……!!」

「あんな男の人の前で着ていた服なんて、もう見たくもないな。汚らわしいよ。君の肌に触れていたこの布ごと、あの男の視線を焼き捨ててしまいたいんだ」

 乱暴に布の残骸を引き剥がされ、イヨリの身体は、黒のレースがふんだんにあしらわれたランジェリー姿となって、畳の上に投げ出された。

 冬の冷たい夜気が、剥き出しになった肌を粟立たせる。

「マツバ、さん……お願い、怖いです……顔が、こわいっ……うぅっ、やめて、許して……っ」

 しゃくりあげながら懇願するイヨリ。しかしマツバは、引き裂かれたワンピースの切れ端を拾い上げると、それを束ねてイヨリの口元に押し当てた。

「え?」

「さあ、そのまま口を開けて」

「んっ、んんっ……!? いやっ、やめ……んっ!!」

 逆らう暇を与えず、布の塊がイヨリの口内にねじ込まれる。そして、切れ端の端を後頭部で強く結ばれた。

 猿轡。

「んんっ!! んーーーっ!!(やめてっ!! はずしてっ!!)」

「いい声だね。でも、近所迷惑になるといけないから。今夜の君は、きっといつもよりもっと大きくて可愛い声で泣いてしまうだろうから、こうして口を塞いでおかないとね」

 マツバはさらに、イヨリの黒いレースのショーツに手をかけた。

 膝を合わせたまま必死に抵抗しようとする彼女の太腿を掴み、強引にこじ開ける。

「んんっ!!(だめっ、恥ずかしいっ! 見ないでっ!)」

「閉じちゃだめだよ」

 パンッ! と、白い太腿の内側が平手で打たれた。

「んっ……!!」

 鋭い痛みにイヨリの身体がビクンと跳ね、目から再び大粒の涙が零れた。その隙を突いて、レースのショーツが引き千切るように脱がされ、遠くへ放り投げられた。

 露わになった白磁の肌。

 豊かな胸の谷間が荒い呼吸で激しく上下し、腰から下は無防備に、最も恥ずかしい場所を見せつけるように開かれている。

 完全に支配された姿。

「んぐっ、ひっ……うぅぅっ……」

 猿轡の奥から、くぐもった泣き声が漏れ続ける。イヨリは絶望的に首を振り、何度も顔を背けようとするが、マツバはその顎を乱暴に、しかし指の腹で撫でるように掴んで自分の方を向かせた。

「すごくいい眺めだね。……いつもは僕から大事に大事に愛されてばかりだから、こんな風に無理やり押さえつけられて、泣きながら犯されるのを待つような惨めなポーズは、初めてだよね? イヨリちゃん」

「んぅん……っ……! んんっ!(いやあっ!! ごめんなさいっ!)」

 マツバの冷たい指先が、イヨリの太腿の内側を這い上がってきた。

 ぞわり、と鳥肌が立つ。

 鼠径部の、皮膚の薄い最も敏感な場所を、親指と人差し指で強く抓り上げた。

「んんんっ!!(いたぁっ!)」

「どうしたの? 痛いかい? それとも……もう感じてしまっているのかな?」

 ブラジャーのホックも無造作に外され、拘束されて張った胸が行燈の光に晒された。

 マツバは、その柔らかく大きな肉の塊を、両手で容赦なく鷲掴みにした。

 形が変わるほどに力任せに押し潰され、乳首は指先で強く摘まれ、引き絞るように引っ張られた。

「んむっ……! ぐぅんっ……!!(痛いっ、やめてっ、痛いよぉっ!)」

 乱暴な扱いに、イヨリの瞳から絶え間なく涙が流れ落ち、耳を伝って髪を濡らしていく。本当に怖くて、痛くて、悲しいのだ。

 それなのに。

「すごく硬くなってるね。……痛がって泣き叫んでるふりをして、本当はこういう風に乱暴に扱われるのが好きだったんじゃないかな? 僕に無理やり犯されたかったんだろう?」

「んぅんっ!!(違うっ!)」

「違わないよ。君の体は、君の口よりもずっと正直だ。ほら、証拠を見せてあげるからね」

 マツバの指が、イヨリの秘所——薄く可憐な花弁を、無理やり左右に押し開いた。

 そこは——恐怖と痛みにこれほどまで震え、大泣きしているはずなのに——すでに透明な蜜で、とろとろに濡れそぼり、行燈の光を反射して卑猥に光っていた。

「んぐっ……ぁ、んんんっ……!!(違うの、違うのっ……!!)」

 イヨリは恥ずかしさと絶望に涙を溢れさせ、首を激しく横に振った。

 違う。こんな乱暴なことをされて興奮しているわけじゃない。ただ、マツバの濃密な執着と嫉妬が束になって叩きつけられることで、イヨリの心の最も深い場所にある「この人は私に執着してくれている」という絶対的な安心感が、ダイレクトに快感中枢を刺激してしまっているのだ。

 心が泣いて拒絶しているのに、身体が彼の支配を喜んで蜜をこぼしてしまう。

 その矛盾が、さらに彼女をみじめにさせ、涙を加速させた。

「ひどく濡れてるね。……あんなに泣いて嫌がってるくせに、こんなに蜜を溢れさせて僕の指を待っていたのかな? いやらしい子だね。君は本当に、僕がいないとダメな身体になってしまったんだな」

 「入れてあげるよ。君が欲しがっているものをね。僕の指で、中の奥の奥まで……全部掻き回してあげる」

 有無を言わさず、蜜塗れの入り口に、マツバの中指と薬指の二本が、前触れもなく突き入れられた。

「ンギィッ……!!!」

 悲鳴が轡に吸い込まれる。

 潤滑液代わりの蜜が大量に溢れていたとはいえ、乱暴すぎる挿入。マツバの指は一気に最奥深く、子宮口にぶつかるまで真っ直ぐに押し込まれた。

「んきゅ、ぐぅぅっ……! はぁっ、んんんっ……!(痛いっ、裂けちゃうっ!)」

「どう? 痛いかい? 苦しいのかな? ……それとも、最高に気持ちいい?」

 ずぷり、ずぶちゅっ! と、遠慮のない角度で内壁をえぐる。

 弱い粘膜を容赦無く引き伸ばし、最も敏感な場所を爪先で擦り上げる。

「んぁぁっ!! んっ、んんんっ!!(やめてっ、そこ、だめぇっ!!)」

「だめじゃないよ。ほら、ここだろう?」

 ポルチオへの無慈悲な一撃。

 ガンッ、と頭の芯を殴られたような強烈な痺れが走り、イヨリの体をビチビチと跳ね上がらせた。

「ンンッ……!! ァンッ……!!(ヒッ、ああっ、いやぁっ!)」

 ポロポロ、ポロポロと、大粒の涙が止まらない。

 痛い。苦しい。乱暴すぎる。

 なのに——。

「ほら、もっと僕の指をきつく締め付けておいで。……そう、いい子だね。僕の指を絶対に離しちゃだめだよ。僕のすべてを、全部飲み込んでね」

 ぐじゅ、ちゅぷっ、ぐちゅぐちゅっ! と、極めて卑猥で大きな水音が部屋に響く。

 上と下、同時に与えられる強烈な刺激。限界を超えた快感が、イヨリの思考を真っ白に染め上げ、理性の枷を粉々に砕いていく。

「んんっ! んくっ……! ぁあああんっ!!(イクッ、イっちゃうっ!)」

 涙と涎で顔をぐしゃぐしゃにしながら、イヨリはただ「無理やり開発される快感」の波に翻弄され、泣き叫ぶしかなかった。

「んぁっ……、ぁ……んんんっ……!!」

 一度目の絶頂は、あっけなく訪れた。

 イヨリの身体は痙攣するように激しく硬直し、透明な潮を間欠泉のように噴き出して畳を汚した。しかし、マツバは止まらない。

「……早いね。まだ全然足りないくせに。勝手にイっちゃうなんて、許した覚えはないんだけどな」

 びくびくと余韻に震え、極限まで敏感になった内壁。

 マツバはそこから指を引き抜くや否や、自らの和服と帯を乱暴に解き、下着もろとも脱ぎ捨てた。

 完全に勃起し、凶悪な形相をした自身の熱の塊を、イヨリの濡れそぼった入り口に容赦無く押し当てる。

「んっ!? んんっ、んんんんーっ!!(まって、まだ息がっ……!! どうぞって言ってないっ、いやっ、こわいっ!!)」

 イヨリは震える首を横に振り、さらに激しく泣きじゃくった。優しく時間をかけて貰わなければ痛いほどの大きさなのだ。それをこんな状態で無理やりねじ込まれれば、どうなるか。

「待てないよ。僕はずっと待ってたんだから。限界なんて、もうとうに超えてるんだ……ッ!」

 ズドゥッ!!

「ンギィィッ————!!!」

 布越しの悲鳴が、部屋の空気を震わせた。

 絶頂直後の極度に過敏になった肉壺に、マツバの巨大なそれが、根元まで一気に、強引に突き入れられた。

「んぐぁっ……! う、うわぁぁぁんっ!!(いたいいいいっ!! やめてぇっ! 裂けちゃうよおおっ!!)」

 痛みのあまり、イヨリの目が見開かれ、声にならない絶叫と共にとめどなく涙が溢れ出た。呼吸すら詰まるほどの暴力的な侵入。

「ぐっ……あっ……!! 中……熱すぎる……っ! 締め付けが狂ってる……っ」

 マツバ自身も、あまりの締め付けの強さに唸り声を上げた。

「イヨリちゃん……君の中、僕の形でいっぱいになってるよ。……分かるだろう?」

「んぅっ……! ひぐっ、ぁぁっ……!」

「他の男の人なんか、一ミリも入る隙間はないからね。ここは、僕のものだ。君の心も身体も、全部僕だけの所有物なんだよ……ッ!」

 バンッ!バンッ!バンッ!

 畳が軋み、障子が震えるほどの激しいピストンが始まった。

 優しく愛撫するような動きではない。笑顔のまま、穏やかな声のまま、ひたすらに己の所有権を主張するかのように、一番深い場所を狂ったように叩き続ける獣の交尾。

「ァッ! ァッ! ァッ!」

「んむぅぅっ! んーっ! んんっ! (いたっ! いたいっ! はげしいっ、マツバさんっ!)」

 イヨリは両腕がちぎれんばかりに拘束具を引っ張りながら、ポロポロと涙を流し続けた。内臓が直接押し上げられるような痛みと恐怖。だが、子宮口がガンガンと容赦無く突かれるたびに、脳内に白い火花が散り、痛みが強烈な快楽へと裏返っていく。

「マツバ、さんっ……! マツバさんのっ……!」

 頭の中で、何度も彼の名前を呼ぶ。

 乱暴にされて、泣くほど痛くて、苦しくて、息もできなくて。

 でも——こんなにも激しく、強制的に彼の愛をねじ込まれている。この穏やかな口調と暴力的なまでの振る舞いのギャップが、イヨリの細胞を絶頂へと導いていくのだ。

「イヨリちゃん……ッ! イヨリちゃんッ! 全部僕のものだよ! 誰にも渡さないからね! 誰にも見せない……!」

 痛い! と身を捩るイヨリを強引に押さえつけ、首筋に血が滲むほどに強く皮膚を吸い上げる。

 真っ赤な——いや、赤黒く内出血したキスマークが、次々と刻み込まれていく。

「んんっ!! んあぁっ!!(痛いっ、こわいっ、でもっ、もっとっ!!)」

「もっと思い切り泣いて……僕の前だけで泣いていいんだよ! ずっと僕に犯されて、可愛く泣き叫んでおいで!」

 パンッ! パンッ! パァンッ!!

 肉と肉が激しくぶつかり合う破廉恥な音が、静かな寝室に暴力的に響き渡る。

 よだれを垂らし、顔面を涙と汗でぐしゃぐしゃにしながら、イヨリは白目を剥きかけ、何度も絶頂の波に攫われ続けた。

「イくよッ!! イヨリちゃん、君の奥の一番底に、全部出してあげるからねッ!!」

「ンンンッ————!!!!!」

 イヨリの身体が、極限まで弓なりに反り返った。

 子宮口の最も深い部分に、マツバの切っ先が深々と突き刺さり、ドクンッ、ドクンッ、と灼熱のマグマのような精液が、容赦無く、大量に叩きつけられる。

 彼女の胎内を、彼の遺伝子で完全に塗り潰していく。

「あァァッ……!! はぁっ……はぁっ……」

 マツバはイヨリの上に重くのしかかり、まだ激しく脈打つ自身の分身を、最も深い場所で固定したまま動かなかった。

 イヨリは過呼吸のように息を乱し、ひゃっくりを上げながら、抜け殻のように痙攣を繰り返していた。

 長い、長い絶頂の余韻がようやく引いてきた頃。

 部屋には、二人の荒い呼吸音と、行燈の油が爆ぜる小さな音だけが響いていた。

 マツバはゆっくりと身を起こし、イヨリの顔を見た。

 乱れきった髪、とめどなく流した涙と汗でぐしゃぐしゃになった顔、ひどく赤く腫れ上がった首筋の痕。

 彼は無言のまま、イヨリの口から猿轡となっていた布を外し、頭上で縛っていたマフラーを解いた。

「……はぁっ、はぁっ……ん、ぅ……ひゃくっ……」

 自由になった両手には、鬱血して痛々しいほどの赤い線がクッキリと残っていた。

 イヨリは解放された両手を力なく胸の上に落とし、ヒクッ、ヒクッと子供のようにしゃくりあげながら泣き続けた。

「……ひぐっ、うぅっ……えぐっ……マツバさん……こわかったぁ……っ」

 その泣き声を聞いた瞬間。

 マツバの瞳から、先程までの冷酷な狂気の色が、スッと憑き物が落ちたように引いていった。

 代わりに浮かんできたのは、激しい自己嫌悪と、最愛の彼女をあんなにも激しく傷つけ、泣かせ続けてしまったことへの絶望的な後悔だった。

「……イヨリちゃん」

 マツバは震える手で、イヨリの涙で濡れた頬を拭おうとし——その手を途中で止めた。自分のような汚れた男が、彼女に触れる資格などないと思っているかのように。

「ごめんね……。痛かったよね。怖かっただろう……。僕、自分が止められなくって……最低だね。君を、あんなに泣かせて、あんなに乱暴にして……僕は……」

 頭を抱え、後悔に打ちひしがれるマツバ。

 いつもなら、ここで「なんて酷いことをしたんだ」と自分を責め続け、何日も落ち込む彼である。自分の独占欲というバケモノが、イヨリを傷つけることを何よりも恐れている彼だからだ。

 だが。

「……マツバさん」

 イヨリは、顔を覆っていた手を離し、涙で真っ赤に腫れた瞳でマツバを見上げた。

 そして、鬱血した痛々しい両腕をゆっくりと持ち上げると、おずおずと、しかし確かな力で、マツバの首に回したのだ。

「え……?」

「……ううん。……怖かったけど……嬉しかったです……」

「イヨリちゃん?」

「マツバさんが……私を他の人に取られたくないって、狂ってくれるくらい……私が泣いて叫んでも止まらなくなるくらい、私に執着してくれてるのが……凄く痛いほど伝わったから……」

 イヨリの声はかすれて、甘く蕩けていた。

 白濁した左目と、涙で潤んだ黒い右目が、狂おしいほどの愛慕と服従の情を湛えて彼を見つめている。

 無理やり犯され、涙が枯れるほど泣かされた恐怖よりも、彼にここまで強く求められたという絶対的な安堵感が、彼女を満たしていた。

「私、泣いちゃったけど……嫌じゃなかった。私、マツバさんのものです。誰に笑いかけようと、誰と話をしようと……私は、マツバさんにしか抱かれない。めちゃくちゃに壊しても、泣かせても……いいんですよ……」

 彼女は、彼に完全に支配され、涙を流すことを喜んで許容した。

 いや、彼という牢獄に自ら鍵をかけて閉じこもることを望んでいたのだ。自らの「見捨てられるかもしれない」という根源的な孤独を、彼の狂気的な執着と暴力的な愛で埋め尽くしてもらうこと。

 それが、イヨリの出した答え。

「イヨリちゃん……ッ! イヨリちゃん……あぁっ!」

 マツバはたまらず、彼女をきつく、骨が折れるほど強く抱きしめた。

 首筋に顔を埋め、先程自分が血が滲むほど吸った赤黒いキスマークに、今度は懺悔するように、すがるように何度も口づけを落とす。彼女の涙と、自分の涙が肌の上で混ざり合う。

「愛してるよ。……もう、絶対にどこにも行かせないからね。僕の手の届かない場所なんて、絶対に行かせない。ずっと、僕の鎖に繋いでおくから……離してあげないからね……」

「はい……。一生、繋がれてます。マツバさんの……重くて、甘い……枷で……」

 マツバは、痛ましく鬱血した彼女の両手首に、そっと、何度も謝罪のキスを落とした。彼の中にある深い自己嫌悪は、まだ完全に消えたわけではない。あんなに泣かせてしまった、という罪悪感が彼の表情を暗く曇らせていた。

 そんな彼の様子を見て、イヨリはふんわりと、普段の魔性な微笑みを浮かべた。

 そして自分から、彼のがっしりとした胸にすり寄ると、甘く蕩けた声で耳元に囁いたのだ。

「……マツバさん」

「ん……? どうしたの、イヨリちゃん。どこか痛むところがあるかい……?」

「ううん。……まだ、元気ですよね? マツバさんの……ここ」

 イヨリのしなやかな指先が、シーツの下で再び熱を持ち始めている彼の中心に、つーっと触れた。

 ビクッ、とマツバの身体が跳ねる。

「あっ……イ、イヨリちゃん……だめだよ、君はあんなに疲れて……泣いて……」

「私、さっきみたいな乱暴で激しいマツバさんも好きですけど……。やっぱり、いつもの甘くて優しいマツバさんに、大事に愛されるのが、一番好きなんです。……だから」

 彼女は、色香をたっぷり含んだ声で、涙で潤んだ右瞳で彼を見上げた。

「二回戦は……優しくしてくださいね……♡」

「っ……!!」

 その破壊的なほど小悪魔なおねだりに、マツバの残っていた理性が、完全に、音を立てて吹き飛んだ。さっきまでの深い自己嫌悪は、彼女の甘い微笑み一つで綺麗に溶かされてしまった。

「……ずるいよ。本当に、君は……僕をどうしたいんだい」

 マツバは再び、イヨリの唇を深く塞いだ。今度は暴力ではなく、甘く蕩けるような、彼のありったけの巨大な愛情を込めたキス。

 そして始まる、夜明けまで終わらない、優しくて甘い、蜜月の二回戦。

 愛と執着、支配と服従、加虐と被虐が表裏一体となり、もはやどちらがどちらの手のひらで転がされているのかすら分からない、底なしの共依存。

 霧深きエンジュの夜は、彼らの倒錯した、けれど甘すぎる純愛を、誰の目にも触れさせぬよう、しっとりと静かに包み込んでいた。

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